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 マンション市場の潮目は変わった 回復基調より鮮明に

反響倍増(住友不販)/高額も好調(東急不・東建)

 

 なぜかこれまで、不動産・マンション市場の好不況のターニングポイントは年明けとか夏休み明けなどの変わり目だった。

 狂乱地価と呼ばれたバブルの発生はどうだったか。記者は、もちろん前兆はあったのだが、一挙に表面化したのは昭和 61 年年明けのNTT株の放出にあると見ている。売り出し価格は約120万円だったが、買いが殺到して値が付かず、売り出しの翌日やっとつけた初値は160万円だった。その後、ほとんど下落することなく300万円ぐらいまで一気に上昇した。当時、NTT株とともに3種の神器≠フ一つと呼ばれた民活マンション「西戸山タワーホウムズ」(576戸)が火に油≠注いだ。分譲されたのは同年の夏だった。来場者は空前の約6万人に達し、申込者も約25,000人を記録した。これから土地・マンション転がし≠ェ始まった。バブルの象徴「広尾ガーデンヒルズ」は坪400〜500万円だったのがバブル崩壊直前には坪3,000を突破した。

 一方、バブル崩壊も一挙にやってきた。平成2年9月に突如株価が暴落。ほとんどすべての株は売り気配で値が付かなかった。土地神話は崩壊し、それから現在までぼ一貫して地価は下がり続けている。

 市況がようやく回復し、「不動産流動化事業」つまり転がし≠ナ沸いていた市場に冷水を浴びせかけたのも平成19年夏のサブプライムローン問題だった。このとき、業界関係者は「影響は軽微」などと高を括っていたが、その翌年9月、リーマン・ショックが全世界を襲った。

 もっとさかのぼって、昭和57〜58年のマンション不況も、昭和57年9月に首都圏を襲った台風によって多くのマンション販売現場が水浸しになったのがきっかけだった。抽選日が日曜日だったため販売できず、その後、売り(値下げ)が市場を支配した。

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 問題は今年だ。果たして過去の経験通り潮目は変わったのか。ムードは最高だ。安倍新内閣の「3本の矢」効果は覿面。円安・株高が一挙に始まった。

 マンション市場も政権交代に敏感に反応している。先日、NTT都市開発他「ウェリス稲毛」の記者内覧会で販売を担当する住友不動産販売受託営業本部受託第一営業部第三販売センター上席部長代理兼所長・古田誠氏は次のように語った。

 「年初より弊社の各デベロッパーからの首都圏販売受託約40物件の資料請求数は昨年12月比で倍増の勢いにある。また、自民党景気対策等の報道の影響のためか、金利に敏感な金融関係のお客様の反応が高まっている。これは、過去の経験からマンションの買い時の大きな先行指標の一つと捉えている」

 同社だけではない。マンション供給上位の各社に聞いた。

 コスモスイニシアは、「昨年1月と比較すると、販売中物件1戸当たりの来訪者数は前年同期比64%増となっており、資料請求も含め増えている」「販売現場では、お客さまから明確に『経企対策』『消費税率が上がる前に』といったワードが出てきているわけではないが、年明けは資料請求数・集客ともに増えてきている」(広報)と来場者が増加しているという。

 タカラレーベンも同様だ。「マンションモデルルーム来場者数は、昨年の同時期と比較して約10%増。弊社がターゲットとしている年収400万円〜600万円台の方に加え、更に年収の高いお客さまの来場が増加傾向にある」(広報)という。

 野村不動産はどうか。「1月の来場数は、昨年と比べてほぼ同数程度。しかし、接客時のお客さまからの質問内容が購入に向けて前向きなご質問が増えてきていると聞いている。『プラウド船橋』では全1,497戸のうちすでに943戸の契約が終了しているが、次の販売街区(五街区)のモデルルーム案内会に予約が500件以上入っている」(広報)と、こちらも手ごたえを感じている。

 大京はどうか。同社は「1プロジェクトあたりのモデルルーム来場数でみれば昨年1月対比で微増。3連休も1日が雪であったが、昨年3連休を上回った。政権交代による景気回復に対する期待感も現れた感がある。ただし、消費税に関わる消費者の動向については、住宅ローン減税等の導入は不透明であり、来場数、契約動向として顕在化している状況ではない」(広報)としている。個別物件では「グランアルト越谷レイクタウン」「大阪ひびきの街 ザ・サンクタスタワー」などが好調だという。

 東急不動産は次の通り。「1月になってから資料請求数及び来場者数ともに増えている。消費増税による影響というよりは、円安の推移、株価の回復といった経済的要素や税制改正の見通しといった政治的背景が重なり、お客さまのマインドも回復していることが要因かと思われる。来場者数は単純比較はできないが、対前年比で約3割の増加。12月比では大型物件で200〜300%程度。『ブランズ四番町』などは特に好調。『ブランズ京都河原町レジデンス』は関東から来場されるお客さまも多く、12月比で倍増近い来場」(広報)

 東京建物は次のように回答した。「1月の集客、資料請求については、おおむね目標来場数を上回り好調。特に高額住戸が活発に動いた。お客さまのマインドとしては、景気上向き感が後押し要因となり購入に前向き」(広報)

(以下は2/8追加)

 三井不動産レジデンシャルのコメントは次の通り。「年明け以降、来場数は増加しており全体として昨年比1.1倍〜1.2倍程度の来場数が得られている。『パークコート千代田富士見ザタワー』をはじめとした都心高額物件については『アベノミクス』による『株高・円安・金利先高感、景気持ち直しへの期待』の影響で景気動向に敏感な顧客層を中心に動きが出てきている。『パークタワー東雲』や『パークシティ武蔵小杉ザグランドウイングタワー』などの防災設備に力を入れた物件や『千代田富士見』のような都心希少立地の物件については、昨年同様大量集客に成功していることが要因であると考えている」 (広報)

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 まだ回答が届いていないところもあるが、各社のコメント通り全体的に上げ潮にあるのは間違いない。仮に消費税が5%から8%に引き上げられたら、郊外部のマンションは消費税額が100万円だったのが160万円に上昇する。この上昇分がどのような形で還付されるか不明だし、建築費の上昇が還付額を上回る可能性も否定できない。円安が進行すれば建築資材の上昇が避けられない。また、消費費税だけ上がってサラリーマンの給与が上がらなければ奈落の底に突き落とされかねない。

 総理が2度目の安倍首相はそのような事態に陥る愚を犯さないだろうし、太田国交相は「皆さん(不動産業界=消費者)が困るようなことはやらない」と言明した。記者は個人的には2020年のオリンピック招致が決まれば市場は一挙に舞い上がると見ている。

 この日(7日)は春一番が吹くと言われる。これから取材に出かけるが、すでに心は春爛漫だ。記事も舞い上がっている。

(牧田 司記者 2013年2月7日)