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 多摩ニュータウン学会 「みどり」について意見交換会

愛でるみどりから関わるみどりへ


「次世代にみどりをつなぐ行政と市民の連携、その仕組みづくり検討会」

 多摩ニュータウン学会(会長:吉川徹・首都大学東京教授)は5月11日、「次世代にみどりをつなぐ行政と市民の連携、その仕組みづくり検討会」をテーマに例会を開催。学会員や多摩市みどりのあり方懇談会委員、NPO、ボランティア団体、市民など約30人が参加して意見交換を行った。

 例会では、多摩市みどりのあり方懇談会委員を務めた大石武朗氏が多摩市のみどりの現状や課題などについて報告。「人の目線で見ると市のみどりは豊かとはいえない。財政難の現状を考えると後継者を育てられない。愛でるみどりから関わるみどりへ政策転換し、市民のネットワークづくりが必要」などと語った。 

 また、NPOあしたや共働企画・滝口直行氏と市民団体「きりんの会」・松原友子氏がそれぞれ事例紹介を行った。滝口氏は「地域住民・自治会・老人会などによる公園の清掃などを行っている公園愛護会には71団体が参加して活動しているが、横のつながりがない。交流できる場が欲しい」と団体間の連携を訴えた。松原氏は「市と協力して永山南公園の再生に取り組んでいる。公園内の樹林地でボランティアとして樹木の手入れなども行っており、端材で樹名板や案内板、ベンチなどもつくった。今年はキンラン、シュンランなど絶滅危惧種の草花もたくさん咲いた」などと報告した。

  参加者からは、「多摩市のみどり率は54%もある。これはすごいこと。貴重な資源」「(みどりの将来を考えると)絶望的だが、孤独な活動を続けている」「重装備で活動している人の姿を見ると、素人は参加しづらい」「活動するにはワクワク感が必要」「ネットワークづくりが重要」「公園のたけのこ掘りがしたい」「遠くから眺めたり高い所から見下ろしたりすみどりは美しいが、隣のみどりは鬱陶しく感じる人が多い」などの意見が出された。

  多摩市は先に「みどりの基本計画」を策定し、街路樹などの「みどり」を含めたみどりの質的向上(量から質へ)や愛でるみどりから関わるみどりへ方向を転換し、計画の推進には市民や事業者、市民団体などとの協働の取組みが前提とする考えを打ち出した。

                
                                     左から大石氏、滝口氏、松原氏

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 記者は田舎育ちだから多少は樹木のことを知ってはいるが、まったくの素人だ。それでも、涌井史郎氏から教わった名言「木の名前と虫の名前と鳥の名前を覚えると、一歩、歩くごとに人生3倍楽しくなる」を少しでも実践すべく、20年も前から外に出ると街路樹の剪定具合を眺め草花を摘み、自らが住む団地では仲間と一緒に高木にも登り樹木剪定を行っている。涌井氏の名言は、自然を大切にすることと虫の視点(現場主義)と鳥の視点(鳥瞰)を併せ持つことが大事だという意味だ。ここ数年は森林・林業の再生こそ喫緊の課題だと考え、取材もするようになった。
 
  今回の例会も楽しみにしていた。時間が1時間半しかなく趣旨が「それぞれが意見を出し合うサロン」であったため議論があまり深まらなかったのは残念だったが、今回の例会をきっかけに市と市民団体などの連携が深まり、どこにも負けないみどりのネットワークが構築されることに期待したい。
 
  一つだけ行政に注文をつけるとすれば、立派な「みどりの基本計画」を確実に実行するために情報をどんどん公開して欲しいということだ。
 
  市も打ち出しているように、@大学や市民団体等と連携したみどりのホームページ立ち上げ及び運営支援A市民団体などや事業者、行政などの連携による情報ネットワーク体制の構築Bホームページや広報の活用によるみどりの活動の普及啓発Cコンテストや表彰制度の実施−などが望まれる。この点については、これまで市が運営していたグリーンライブセンターを恵泉女学園やNPOなどと協働して運営するように再編したのはいいことで、他にない大きな武器になるはずだ。
 
  もう一つ付け加えれば、多摩市に限ったことではないが、道路法の「道路の付属物」という街路樹の規定を改めて欲しい。多摩市は平成20年に策定した「街路樹よくなるプラン」で「街路樹は単に『道路の付属物』ではなく街路を構成する素材の中で、唯 一の生き物である特徴を生かした『うるおいとゆとり』のある快適な道路空間の創出」とうたっていることを実践して欲しい。
 
  情報公開・共有とも関連するが、多摩市のように緑があふれている地域はともかく、一般市民が緑をいちばん身近に感じるのは街路樹だ。その街路樹の維持管理 に1本当たり年間1〜2万円(多摩市は街路樹1万本に対して年間予算は約1億円。調布市は半分以下の3,860本に対して約8,500万円=平成18年度)の経費を掛け、電信柱のようにぶった切られている実態をみんなで知るべきだ。もちろん、街路樹だけでなく公園の維持管理費を含めると、多摩市の場合は年間で5億円ぐらいの経費がかかっている。街路樹を含めた「みどり」全体では4人家族で年間約16,000円の市税が投入されている勘定だ。それだけ税金を払っているのなら「みどり」に関わろうと考える人も出てくるのではないか。

(牧田 司記者 2013年5月16日)