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建て替え阻む法の壁と市場価格との乖離拡大

旭化成不レジ 第2回高経年マンション問題 メディア懇談会


建替えられる「調布富士見町住宅」

 旭化成不動産レジデンスは4月2日、第2回高経年マンション再生問題 メディア懇談会を行い、同社が手掛ける建て替えマンションとしては16件目で、事業協力者となっている調布市の「調布富士見町住宅」の事例を基に建て替えの問題点などについて説明した。懇談会には団地建替組合の理事長・今井裕隆氏と同副理事長・多田陽子氏も出席し、建て替えにいたった経緯などについて話した。また、同社の「同潤会江戸川」「国領」「諏訪町住宅」などこれまでの代表的な団地建て替えに携わったNPO法人マンション再生ナビ事務局長・関根定利氏も団地建て替えの課題について講義した。

  
向田氏(左)と大木氏

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 「調布富士見町住宅」は京王線調布駅から徒歩10数分、東京都住宅公社が昭和41年に竣工した敷地面積約12,000u、延床面積約10,000uの5階建て全176戸。専有面積は約50u。平成20年に建替え推進決議、事業協力者の決定などを決議。一団地規制の廃止、公道の付け替えなどに手間取りながらも23年一括建替えを決議。25年4月に解体工事に着手する。

 建替え後は延床面積約35,000u(建ぺい率50%、容積率200%、高さ制限25m)の6階建て・8階建て全331戸となる。専有面積は57.31〜94.64u。還元率は1.16倍。竣工予定は27年春。

 建替えに至ったのは、建物が老朽化して漏水事故が絶えず、旧耐震であることの不安、5階建てでエレベータなし、間取り・設備の陳腐化などで、ほぼ全員が建替えに合意したという。


多田氏(左)と今井氏

 一団地規制の廃止を得ると同時に、敷地北側の駐車場と2棟の建物敷地の間にあった道路を付け替えないと建て替えが困難であることから、建物を2棟にしてその中央に道路を付け替えることで最終的な計画がまとまった。建替え後の建物は雁行させることで光と風を取り込む設計となっているのが特徴。

 懇談会で挨拶した同社マンション建替え研究所長・向田慎二氏は「今回の懇談会は、皆さんに団地建替えの実態を見ていただくのと、昭和40年代の団地型マンションはそもそも建て替えを想定していないところに問題がある」と指摘。同主任研究員・大木祐悟氏は「建て替えを想定していない昭和30年代から40年代の団地型マンションは、法改正を含めた抜本的な改革が必要」と語った。

 また、関根氏はNPOを立ち上げた7年前から年間30〜40件の建て替え相談を行っている経験をもとに、「修繕・改修を行う場合でも再生の負担が大きく、建替える場合もよほど立地に恵まれた都心部などはともかく、建築費だけでも坪100万円はかかる現状を考えると、郊外団地では容積を余していたとしても分譲価格と折り合わないケースが多い」などと厳しさを増す建て替えの現状について話した。再生を円滑に進めるためには「結論を急がず、きちんと手順を踏み、全員が参加できる環境づくりが大切。そのためには高齢者が孤立しないようなコミュニティの再構築が必須」と強調した。


関根氏

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 現段階で分譲単価を予測するのは難しいが、調布駅周辺は駅と線路の地下化で街並みが一変すること、駅からやや距離があることなどを考慮すると市場価格はアッパーで240万円とみた。230万円台に落ち着けば早期完売するのではないか。

 若い記者はびっくりしていたが、われわれの年代は下のような浴槽は別に驚くことではない。昭和30年代、40年代はこのようなものが普通だった。いかに間取り・設備が陳腐化しているかの証左だ。こうした地道な同社の懇親会が記者を育て、法を動かし、ユーザーに建替えの旭化成≠浸透させる。


従前の浴槽(またぎ部分は50cmぐらいあった)

23区の旧耐震の5割が既存不適格か 旭化成不レジ(2012/3/27)

(牧田 司記者 2013年4月2日)