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ポラスグループのポラテック

国内最大 木質ハイブリッド構造の本社ビル完成


「ウッドスクェア」

 ポラスグループの基幹企業であり、日本最大のプレカット事業を手がけるポラテック(中内晃次郎社長)は2月22日、これまで建設を進めてきた国内最大規模の木質ハイブリッド構造の本社ビル「ウッドスクェア」の竣工式典を行った。関係者ら約250人が竣工を祝った。

 「ウッドスクェア」は、木と鉄のハイブリット躯体という最新技術を採用した国内3例目のビルで、6,000uを超える規模としては日本初。内部の柱や梁に長野県産カラマツの集成材を「あらわし」として採用し、ガラスカーテンウォールの外壁で覆うことにより、ガラスケースのショールーム≠ノ入った木造建築物のような印象を与えるのが特徴。

 1〜2階には、カフェや同社の注文住宅ブランド「ポウハウス」と「北辰工務店」のショールーム、銘木展示室を設置し、自社のオフィスだけでなく、地域に開かれたスペースを提供する。小学生を対象とした課外授業の学習プログラムも用意している。

 記者発表会・竣工式典で挨拶にたった、中内社長は、「木を愛し、木を生業としてきたわれわれが、鉄骨の弱点を補い、かつ木のよさを生かすこのような工法にめぐり合えたのは運命的ですらある。地域の方々にも木の魅力を伝えるため、丸太換算で約2,055uの集成材のほか、床材、腰壁、机など木を豪快に使用した」と語った。

 建物は、敷地面積約 2,788u、地上4階、地下1階建て延べ床面積約6,592u。構造は地上はS造(木質ハイブリッド構造)、地下は RCとSRCの混構造。設計・監理はジェイアール東日本建築設計事務所、施工は川田工業。施工期間は平成22年9月〜同24年2月。総工費は25億円。

  
中内社長

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 式典で祝辞を述べるのだからほめるのは当然だが、来賓は最大限の賛辞を送った。

 最初に挨拶したベターリビング理事長・那珂正氏の「すばらしい木造建築物。中内社長が『豪快』という言葉を使った意味がわかる。これから木造建築物が普及するよう心底から期待している」という挨拶に始まり、「建築確認をさせていただいたが、建築の知恵を結集され、建基法(をクリアした)だけでなく、アメニティも実現した。木の文化を地域に発信することは誉れになる」(日本建築センター理事長・松野仁氏)「中内さんの国産材に込めた思いがひしひしと伝わってくる。大変うれしい。当社もクローン技術で成功した秀吉が愛でた『太閤千代しだれ』を寄贈させていただいた。中内さんは木住協の期待の星だ」(住友林業会長・矢野龍氏)「ひとつの新しい時代を刻んだもの。大変うれしい。非住宅の木造化が求められている時代に、民間がその範を示した」(木を活かす建築推進協議会代表理事・大橋好光氏)などと続いた。

 さらに、設計・監理を担当したジェイアール東日本建築設計事務所社長・杉村貞夫氏は、「まるで森の中を歩いているような、類まれな空間を実現した。当社の社史にも残る、誇りにもなる作品」と語った。


1階の通路部分

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 記者も、すばらしいと思った。建築コストは木造よりもRCよりも高いのは間違いない。しかし、環境コスト、エネルギーコスト、さらには、木による癒しとか美しいと感じる意識や、地域に貢献する価値を考えれば、コストアップ増に余りある価値がこの建物にはあると思う。

 しかし、それでもなお一層のコスト削減を目指してほしい。ハイブリッドだから高くていいという論理は通用しない時代に入った。

 もう一つ、欲を言うなら見た目≠ナ素人でもはっきり木造建築物と認識できる建物にしてほしかった。通行人に「これって、木造のようですよ」と声をかけたが、「いえ、木造じゃありませんよ」という答えが返ってきた。ガラスカーテンウォールは光を反射するから、中が木造とはとても思えない。この点について同社は、「ガラスカーテンウォールの採用に当たっては、2種類を検討した。もう1種類は透明性の高いものだったが、断熱性が劣るため熱効率が悪くなるので、今回のものを採用した」と話している。

 この点について、設計を担当したジェイアール東日本建築設計事務所設計本部第一群第一設計部主幹・稲川清士氏は、「今回のフレームは木ごとやること。外観デザインを見せるフレームも考えられないわけではない」と話した。現行の耐火、準防火などの建基法ではハードルが高いということのようだ。同社は、一般建築物よりはるかに設計が難しい駅舎などを多く手がけているという。今回の「ウッドスクェア」を設計を担当したのは、そうした背景があるのかもしれない。

 「北辰工務店」とカフェの「カフェ・バナーノ」のデザインを担当したポラス暮し科学研究所顧問・伊藤博明氏は「ここは喫煙者だって排除しないのだよ」とパイプをくわえカフェで座っていた。式典の案内役を務めていた若い女性社員は「この腰壁はカラマツ、床はクリ、カウンターはヒノキやイチョウ、トチノキなど。1階の大きなテーブルはヒノキ」と瞬時に答えた。


1階から2階への階段

   
「カフェ・バナーノ」と伊藤氏


住友林業が寄贈した「太閤千代しだれ」

(牧田 司記者 2012年2月22日)