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 「柏の葉」の「環境未来都市」 涙が出るほど嬉しい提案書

 「柏の葉キャンパス」でスマートシティの取り組みを行なっている柏市、東京大学、千葉大学、三井不動産、スマートシティ企画、柏の葉アーバンデザインセンター(UDCK)、TXアントレプレナーパートナーズ(TEP)の7者は2月13日、先に国の指定を受けた「環境未来都市」「地域活性化総合特別区域」の記者説明会を開いた。秋山浩保・柏市長、出口敦・UDCKセンター長、河合淳也・三井不動産柏の葉キャンパスシティプロジェクト推進部長がそれぞれ取り組みについて説明した。

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 記者たるもの、事前にしっかり勉強しておくべきなのだが、「柏の葉」についてはこれまで度々取材してきたし、内容はある程度想定していたのでチェックしなかった。プロジェクターによる説明は想定内のものだったし、記者団からはたいした質問も出なかった。

 驚いたのは、配布された資料だった。「環境未来都市提案書」はA4サイズで128ページ、「地域活性化総合特別区域指定申請書」は68ページに上っていた。その量もさることながら、「環境未来都市提案書」は2050年の未来像を格調高く謳い上げていた。その文章にわが目を疑った。冒頭の文章を抜粋する。やや長いが、ぜひ読んでいただきたい。

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 柏の葉キャンパスは、2050年を目指し、世界が抱える課題への解決モデルとして、環境・エネルギー問題に対して『スマートシティ』超高齢化社会に対して『健康長寿都市』日本経済再生を担う『新産業創造都市』を提示する。

 これら3つの課題解決モデルを提示するため、柏の葉キャンパス最大の資源である大学等が「最先端の知」を結集して構想・提案し、市民や企業等の地域の主体が持続的・自律的にその運営を担い、高齢者から次世代を担う若者、あるいは自由な発想を持つ子供まで、地域のために何かしたいという思いを抱える誰もがまちづくりに参画できる、クリエイティブな新しい社会システム、共創する持続可能な仕組み “CO-CREATE ECO-SYSTEM” の構築により、オープンイノベーションを実現する。このシステムによる 3つの課題解決モデルの提示は、その実現を目指す過程においても豊かな自然環境の中で新たな産業や文化を生み出し、2050年における未来型の都市経営として「公民学連携による自律した都市経営」のモデルとなる。

■環境・エネルギー問題を解決する 柏の葉キャンパスの『スマートシティ』

 2050年、柏の葉キャンパスでは、日本が誇る環境技術の力はもちろんのこと、日本の伝統的な環境調整の手法、住民1人ひとりの環境意識や日本人ならではのコミュニティの連帯力を得て、使用エネルギーの100%が自然エネルギーなど再生可能なクリーンエネルギーによって賄われており、化石燃料は一切使用しない世界が実現している。柏の葉キャンパスは(中略)技術の進歩や個々人の生活に合わせて常にカスタマイズを加え、チューニングを行っていく成長型・調律型のスマートシティとして成熟している。

■超高齢化社会に対応する 柏の葉キャンパスの『健康長寿都市』

 2050年、柏の葉キャンパスは、誰もが生き生きと暮らせる健康長寿都市として、家庭や仕事の縁に留まらない広範囲での人とのつながりや、知的好奇心を刺激しつづける様々な学び合いのプログラムにより、リタイアした後も、それまでに蓄積した能力や知見を活かせる社会参画(生きがい就労)の多様な機会がある街となる。(中略)体が虚弱になっても、住み慣れた地域で最期まで自分らしく老いることができる “Aging in Place” 社会を具現化する。柏の葉キャンパスは、本来なら課題ではなく、手放しで喜ばしい長寿・高齢化の進む我が国におけるフロントランナーとして、新しいライフデザインモデルを実践している。

■日本経済再生を担う 柏の葉キャンパスの『新産業創造都市』

 2050年、柏の葉キャンパスは、秋葉原とつくばを結ぶつくばエクスプレス(TX)沿線に多く集積する、大学や研究機関を起点に、日本の強みである「技術力」を活かし、日本経済の活力を牽引する新産業の創造が活発となっている。(中略)柏の葉キャンパスの子供たちは、語学ばかりでなく国際的なリーダーシップの取れる人材として育ち、臆することなく世界へと飛躍し活躍する者が多いため、そのような環境を求めて、世界各国から移住してくる家庭も多い。また彼らはやがて柏の葉キャンパスの地に戻り、新たに若者を育てるなど、スパイラルアップの人材育成環境が根付いている。

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 わが国の経済は、バブル崩壊後の長くて暗いトンネルから抜け出そうかというとき、100年に一度の世界的不況のリーマン・ショックによって奈落の底に突き落とされた。さらに昨年は、東日本大震災によって叩きのめされ、原発の「安全神話」までも無残に打ち砕かれた。経済の底が抜け、閉塞感だけが漆黒の闇のようにわが国を支配している。記者はあと10年もすれば、わが国の青年は中国かインドあたりに出稼ぎに出ないと生活できない世の中になるのではないかと危惧している。

 ところが、向こう40年弱後の「柏の葉」では、石化燃料を一切使用しない世界が広がっているという。長寿・高齢化社会は手放しで喜ばしいことと歓迎される。子供たちは、語学ばかりでなく国際的なリーダーシップの取れる人材として育ち、臆することなく世界へと飛躍し活躍する者が多いため、そのような環境を求めて、世界各国から移住してくる家庭も多いと、提案書は書いているではないか。

 涙が出るほどうれしいではないか。ここは「柏の葉」に賭けようではないか。子育て世代にはもちろんだが、生きながらえることができるなら100歳となるわが団塊の世代にも柏の葉への移住を勧めたい。ひょっとしたら「金さん銀さん」のように、暗い平成の時代を笑い飛ばせるようになるかもしれない。

 2050年にはおそらく道州制が敷かれているだろうから柏市が存在しているかは疑わしいが、なにしろ東大や千葉大のシンクタンク、わが国の不動産トップ企業、三井不動産が言っているのだ。「振り込め詐欺師」のようにペテンにかけようという魂胆では絶対ないはずだ。「石化燃料を一切使用しない」というのは、まさか記者が小さかったころの薪炭、かまどの世界ではないはずだ。記者はTX沿線の開発で、唯一成功するのがこの「柏の葉」であることを信じて疑わない。

 提案書には向こう5年間で取り組むべき事業の事業費として約67億円(初期費用しか見積もっていないものもあるが)を想定している。今後、国と調整しながら確定することとなる。

(牧田 司記者 2012年2月13日)