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傾斜地を得意とする末長組の「ロイヤルシーズン溝の口CASA」


「ロイヤルシーズン溝の口CASA」完成予想図

 田園都市線梶ヶ谷に拠点を置く末長組の傾斜地マンション「ロイヤルシーズン溝の口CASA」を見学した。同社のマンションを見るのは初めてだが、以前から一度見学したいとずっと考えていた。大手志向が強まる中、どうして50年近くもコンスタントにマンション事業を展開することができたのかが分かったような気がした。なかなかいい物件だ。

 物件は、東急田園都市線溝ノ口駅から徒歩3分、川崎市高津区久本1丁目に位置する7階建て(建基法では地上5階・地下2階)全91戸の規模。専有面積は54.47〜105.60u、2期(戸数未定)の価格は2,600万円台〜7,000万円台(54.47〜90.76u)。竣工予定は平成25年8月下旬。販売代理はライフコーディネーター。 設計・監理はディーシービー。施工は末長組。7月から分譲を開始しており、 3分の1強が販売済み。

 現地は標高約40mの北傾斜の山の上。傾斜地マンションであるため建物の形状はかなり複雑で、採光を確保するため中庭・吹抜けを多く採用しており、プランもA〜Zまで26プランもある。エレベータは2戸1、または3戸1で合計7基。

 モデルルームの主な設備仕様は、天井高(2400ミリ)までのコーナーハイサッシ、ソフトクローズ機能付き収納、幅広フローリング、サイル(シーザー、クォーツ)ストーンのキッチン・洗面カウンター、食洗機、天然石玄関など。屋上には庭園と菜園を設置する。

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 現地は以前、他のマンションを見学するときに見ており、坂はかなりきついが溝の口駅から徒歩3分でこのような山があるのに驚いたことがある。記者の相場観からすれば、坪単価は最低でも220万円、高値を追求するなら240万円はするはずだ。ところが、予定価格でも分かるように平均の単価は200万円前後だろう。土地は安く仕入れたのかもしれないが、建築費が高い傾斜地のマンションとしてはきわめて安いはずだ。

 設備仕様も水準以上だし、白を基調としてデザインもなかなかいい。外壁にはロートアイアンの手すりや装飾が随所に施されている。

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 同社のホームページによると創業は昭和 41 年というから社歴は48年だ。これまで賃貸・分譲マンションだけでも150棟近くの供給実績があり、商業・業務ビル、一般住宅・特殊建築物もほぼ同じぐらいの実績がある。そのほとんどは本社を構える梶ヶ谷を中心に田園都市線に集中している。地域に密着し、地域に信頼されているからこそできる事業だろう。いまどき91戸のマンションにエレベータを7基も設置するデベロッパーがいるのに驚いた。単純計算しても13戸に1基の割合だ。

 今回のマンションもそうだが、同社が営業展開する田園都市線は坂が多いことで知られるが、同社はその傾斜地の建築を得意としているようだ。ホームページにも堂々とそのことを謳っている。特長は3つあるようで、紹介する。

 一つは「T2システム」で、「建築家・上原秀晃氏考案のオリジナル建設工法。2つの住戸を水まわり同士で隣接させることにより、各戸3面開口を確保。採光・通風に優れた開放感あふれる住空間とともに、独立性の高いプライベート空間を実現します」とある。

 もう一つは「H2システム」だ。「傾斜地立地の特性を最大限に活かす、オリジナル階層建築工法です。背面の通気性、造成工事費の増大など、従来の傾斜地建設の課題をクリア。各階に広いテラスを配した開放的な住まいを、低コストで建てられます」としている。

 3つ目は「C型様式」だ。「敷地中央に緑豊かなコートヤード ( 中庭 ) を設け、それを囲むかたちで東西南北に4棟を配す建築様式です」とあった。

 今回のマンションで、北海道札幌市のディーシービーがどうして設計・監理を担当するのか不思議に思ったが、ディーシービーは上原秀晃氏の会社だった。

 モデルルームを見学して、同社がどうしてコンスタントにマンションを供給してきたかの疑問が氷解した。地域に密着し、地域特性の傾斜地を生かす建築技術を磨いてきたからだろう。


中庭(完成予想図)

(牧田 司記者 2012年8月24日)