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街路樹が泣いている 〜街と街路樹を考える〜  A

少ない街路樹に関する公表データ


船堀駅近くのグリーンロード

街路樹は街の品格・品性を映す鏡のはずなのに…

 国土交通省は道路や公園については詳細なデータを公表しているが、街路樹についてはほとんど把握していない。「各都道府県に聞いてほしい」とのことだったので、東京都に聞いた。しかし、都のホームページも、平成19年に「10年後の東京で、都内の街路樹を約48万本から100万本に倍増する」倍増計画を示した街路樹に関する歴史や方針、今年4月1日現在、704,980本に増えていること、イチョウ、ハナミズキ、サクラ、トウカエデ、プラタナスなどが種類としては多いことなどしか公表していない。しかも、街路樹は国道、都道府県道、区道、市町村道に管轄が分かれており、全体像を把握するのは難しい。

 このことからも、街路樹の現状がうかがわれる。街路樹は大切だという認識はみんな持っているにもかかわらず、どこにどのような街路樹が植えられており、その維持管理にどれくらいの費用がかかっているのか、住民のニーズはどこにあるのかなどはあまり知らされていない。各自治体のホームページで丹念に調べるほかない。

 そこで、23区内でもっとも街路樹に力を入れているといわれる江戸川区について調べた。同区は平成21年4月、「新しい街路樹デザイン」と題する報告書を発表し、詳細に街路樹について報告している。高木の剪定については「自然形仕立てを原則とし、その立地場所により、よく見極めて作業すること」「不定芽の原因となる『ぶつ切り』等は原則として行わないこと」樹形の乱れを最小限にとどめる剪定を行うこと。必要以上に切断することは、一層の支障枝を生むだけでなく、美観も損うので行ってはならない」などと指針を定めている。ホームページには、四季折々の街路樹を管理を受託している業者の名前を含め公開している。また、第三者評価ではないが、役所内に「評定委員会」を設けて、樹木剪定を評価しているという。

 写真は、街路樹が美しい都営新宿線船堀駅近くの「グリーンロード」の街路樹だ。ケヤキやクスノキの高木が街に潤いを与えている。ところが、隣駅の一之江駅やその隣の瑞江駅周辺は狭い道路事情もあるのだろうが、全体的に貧しい。


電線があるからといって強剪定を行っていない(グリーンロードで)

 イチョウ並木が美しい東大はどうか。今はイチョウの季節ではないが、赤門付近のケヤキ、クスなどの高木は見事だ。しかし、ここも構内に入ると、立派なケヤキがかなり強剪定されていた。

  
赤門付近の高木                          東大構内のケヤキ

 イチョウでいえば、次の写真は多摩センターの学校跡地にある図書館のイチョウだ。撮ったのは4月末だ。本来は若葉が芽吹いていい時期だが、剪定が強すぎるため全然若葉が出ていない。どうしてここまで剪定する必要があるのか。どこでもそうだ。全体的にイチョウは強剪定されている。

 次は、六町で撮ったヤマモモだ。ここはまったく剪定がされていない。見苦しい姿をさらけ出していた。千葉ニュータウン印西牧の原の街路樹もそうだ。かなり傾いていたものもあったが、このまま放置するのだろうか。街路樹は街の品格、品性を映す鏡だろうが、ここには品性が全くない。都心のススカケも剪定の後はかなり見苦しい。ここまで剪定する必要が果たしてあるのか。

 一般の方は街路樹の維持管理にどれぐらいのコストがかかっているか分からないだろうが、各自治体の予算などから推測すると、高木は1本に付き約1万円と見て間違いない。予算を半分に減らしたら街路樹はもっと生き生きした姿になるのではないか。

     
左から多摩市の図書館のイチョウ、渋谷区の高速道路沿いのイチョウ、港区の外堀通りのスズカケ

     
左は足立区六町のヤマモモ、右2つは印西牧の原のシラカシ


本来の美しい姿を見せる新宿区のケヤキ

街路樹が泣いている 〜街と街路樹を考える〜 @(5/1)

(牧田 司記者 2012年5月10日)