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究極のエコ照明 「スカイライトチューブ」

 
「スカイライトチューブ」の使用前、使用後

 半月前、森ビルグループのラフォーレエンジニアリングが開発した「太陽光採光システム」の「ひまわり」を紹介した。今回は「スカイライトチューブ」が開発した「太陽光照明システム」の「スカイライトチューブ」を紹介する。

 前者は太陽光を追尾し、光ファイバーで光を送るというハイテクを駆使した商品だ。長い距離でも対応が可能というメリットがある半面、曇天などでは太陽光を追尾できず、やや高価という難点がある。後者は、太陽光を効果的に集光して、特殊なチューブの中を乱反射させながら暗い場所まで光を運び、光を拡散させるものだ。長い距離には対応できないが、曇天でも自然光が採光でき、価格が前者の半値以下というメリットがある。

 今回、話を聞いたのは「太陽光照明システム」を採用しているメーカー3社のうちの1社「スカイライトチューブ関東」の牛久光次代表取締役(53)と担当の中山大地氏(27)。

 「スカイライトチューブ」の仕組みは、@太陽光の高低角度の変化に効率よく対応する特殊加工を施したドーム構造とシェル型反射鏡によって集光A集光した光は、反射率が99.7%という高い反射率のアルミ製の筒を通じて光を最大約 9メートル先まで送るB取り込んだ光は2つのレンズによって拡散させて、電灯などと異なるやわらかくて影が出にくい光を隅々まで照らす−というものだ。夏の強すぎる光を反射させ、紫外線も遮ることができる

 集光の管径は家庭用の250ミリから業務用の530ミリまであり、家庭用では20万円前後から40万円前後で収まるという。後付けも可能で、戸建ての屋根材に関係なく設置できる。夜間用の電灯とセットにもできる。

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 同社が開発したのは1994年。「ビックサイトでお披露目したのが最初でした。その後、何度も改良を加えて現在のシステムをつくりあげました」(牛久社長)。

 「自然光をそのまま取り込んでロスなく光を運べ、しかもメンテフリー。設置場所が限定され、夏は暑すぎる天窓とは全く異なります。CO2削減にももちろん大きな効果を発揮しますが、資生堂さんの工場では、影ができないから作業がしやすい、優しい光だから目が疲れないなどの声が多く寄せられています。働く人のストレスがなくなるという効果も期待できます。福祉施設などでは認知症にもいいといわれています。パソコン画面の反射がなく、家具も日焼け、色褪せがありません」という。

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 課題も少なくない。大量販売をするには資本も人も足りないからだ。「15年間もやっているのに、なかなか認知度が上がらないのが問題。『スカイライトチューブ』そのものの本部は滋賀県にあるベンチャーで、元はといえば電気屋さん。私どもは社員8人の工務店。ようやく2年前にホームページを立ち上げたばかり。お客さまの中には、このシステムの存在を苦労しながら探り当てたという方が多い」と、牛久社長は語る。

 ヒットを阻んでいるのは、牛久社長のこだわりもある。「ラフォーレさんなどが組織している協議会から『一緒にやろう』というラブコールもありますが、私は建築家。ラフォーレさんのような大企業で、ハイテクを駆使したものではないローテクでも負けないという自負があります。なかなか一緒になれない」という。

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 しかし、地球環境問題の高まりの中で、飛躍的に伸びる兆しはある。今年度の環境省の「太陽光採用照明システム」という補助金の対象にも選ばれた。

 大企業への納入もある。「エコ・ファースト企業」選ばれている資生堂は昨年5月、久喜工場倉庫棟に同システムを82台設置した。これにより日中の電気使用量はほとんどゼロになった。年間35トンのCO2排出削減が見込まれている。 

 「近くニュースリリースされるはず」(牛久社長)とのことで具体的な企業名は明かさなかったが、和歌山県のあるゼネコンの施設に148台を納品したという。「最初は『そんなもの知らない。嫌だ』と撥ね付けられたんですが、中山が粘り強く説得して実現しました。中山は全国を飛び回り、大きな戦力になっている。どこが設置したかも全部記録していますからトラブルも起こりません。お客さまは屋根に穴をあけたり床に穴をあけたりすることに不安を持っていらっしゃるようですが、構造そのものには何の影響も与えません。設置したお客さまからはみんな喜んでもらっています」と、牛久社長は顔をほころばせた。

 中山氏は「就職難といわれるが、みんな大企業志向だから。中小企業でもやりがいのある仕事がしたい。僕が頑張れば会社もよくなる。」と語った。

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 同社の社屋は、東武伊勢崎線の東向島駅から徒歩5分の線路の、住工混在エリアにある木造2階建てだ。狭い道路を挟んだ南側には14階建てのマンションが建つ。取材見学の予約は取っていたが、1階の「ショールーム」は閉じられていた。玄関らしい玄関もなく、場所を間違えたかと思った。最先端のシステムを売る会社には全然見えなかった。

 玄関らしいところには「スカイライトチューブ」の看板もあったので、インタフォンを鳴らした。狭い急な階段を通って事務所に案内された。電灯は消されていた。曇りだったので、電灯がないと取材メモが取れない暗さだった。牛久社長から旧式も含め数台のシステムを作動(フタを開けるだけ)してもらったら、ほとんど外の明るさと同じになった。「究極のエコ照明」に接した時、記者は感動した。

 エコカーも太陽光発電も蓄電池もLEDも結構なことだ。しかし、いずれもランニングコストはともかく、イニシャルコストは半端ではない。「太陽光照明システム」はきっかけさえつかめれば加速度的に普及するはずだ。牛久社長の名前は「光次」、中山氏は「大地」。素晴らしいではないか。そして、「スカイライトチューブ」の存在を知らしめてくれた業界紙ナンバー1記者にも感謝したい。


牛久社長(左)と中山氏

太陽光採光システムの普及に期待 ラフォーレエンジニアリング(2/16)

(牧田 司 記者 2011年3月3日)