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 横浜市の「脱温暖化モデル住宅」見学会に22組


「脱温暖化モデル住宅」施工現場見学会(後方が先行モデルハウス)

 横浜市と横浜市住宅供給公社は9月23日、JR横浜線十日市場駅に近い市有地に建設中の「脱温暖化モデル住宅」施工現場見学会を行った。同住宅は、市が低炭素社会の実現に向けて推進している産・学・官連携の「脱温暖化モデル住宅推進事業」による定借戸建て。購入希望者ら22組44人が参加した。

 現地は、十日市場駅から徒歩5分の横浜市緑区十日市場町に位置する敷地面積約2,400u、全11区画の市有地。北傾斜の不整形の敷地形状を巧みに利用し、無理に整形せず擁壁も設置せず、自然の法面を緑地帯とする。全体をA、B、Cの3つのエリアに分け、各住戸は中央に配した「コモングリーン」に向きあうように設計されている。各住戸には通り土間などを設けてコモングリーンへ通り抜けられるようにもする。

 コモングリーンは約550uあり、11戸で共有し、基本的な管理は市が行い、各住戸が会費を出し合い具体的な管理・利用方法などのルールを決める。1区画当たりの土地面積は約160uだが、「コモングリーン」の部分を含めると1戸当たり約220uとなる。

 同事業のマスタープランとモデルハウス、Aエリアは公募の結果、ナイスを代表とする飯田善彦建築工房、首都大学東京大学院教授・小林克弘氏、横浜国立大学大学院教授・飯田善彦氏、岡山建設の5者グループの提案が最優秀に選ばれ、Bエリアは横河設計工房(施工:奈良建設)、Cエリアはユー・アール・ユー総合研究所(施工:白井組)が選ばれている。

 4区画からなるAエリアは電気のみによるエネルギー供給で、公募で選ばれたグループを代表して 飯田善彦建築工房・山下 ● (示す偏に右に、)平氏はマスタープランの特徴について説明したあと、「住戸プランは単純なプランとし、土間の提案や太陽光など自然の力も採用した」などと話した。

 電気とガスによるエネルギー供給をするBエリアは4区画で、横河設計工房・永尾達也氏が「建物はシンプルな正方形とし、日差しをさえぎる庇を設置し、室内空間をセットバックさせるなどの工夫を施している」と説明した。

 電気とガスによりエネルギー供給を行なう3区画からなるCエリアニついては、ユー・アール・ユー総合研究所・小澤勝美社長が「光と風を室内空間に取り込む工夫をし、可動間仕切りを多用してフレキシブルな空間を提案した」と語った。

 モデルハウスは、期間50年の定期借地権付きで、土地面積約161u、建物面積約106uの軸組工法2階建て。長期優良住宅認定を受け、CO2削減率は50%以上、「CASBEE すまい(戸建)Sランク」を取得している。太陽光発電、HEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)を採用してエネルギーの見える化も進める。

 販売は10月上旬で、残りの住戸については売り建て方式を採用し、今年度内に全棟竣工する予定。価格、地代などは市も公社も現段階では公表していない。


マスタープランなどについて説明する山下氏

     
左から谷垣氏、永尾氏、小澤氏

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 公的機関ならではのプロジェクトだ。民間なら1戸当たり敷地面積を30坪に割り、20戸ぐらいの団地にして売るはずだ。駅に近いから早期完売も約束されている。

 今回のプロジェクトは、定借とすることで土地面積は広いが一般でも手が届く価格とし、共用の「コモングリーン」を設けることで緑を確保すると同時に入居者同士のコミュニティを向上させる工夫が行なわれているのが特徴だ。「コモングリーン」の発想はこれまでも官民の建売住宅で採用されているが、これほど多くの世帯が共用する空間提案は少ないと思われる。コーポラティブハウスの戸建て版ともいえるものだ。

 横浜市建築局住宅計画課長・谷垣弘行氏は「現在のところ具体的な第2弾、3弾は決まっていないが、このような方式が普及することを願っている」と話した。

 見学会に参加した、夫婦と小さな女の子2人の4人家族の30歳代女性は「男の子だったら(購入するかどうか)考えますが、女の子ですから結婚して家を出るはず。定借でも構わない」と話していた。

 価格は未定だが、一般サラリーマンでも取得できる価格になるはずで、高い申し込み倍率も予想される。販売代理は野村不動産アーバンネット。公的機関の定借戸建てでは、東京都が4年前に分譲した期間70年の「むさしのiタウン・四季の街」(全280区画)が人気になっている。


十日市場駅前(中央の道路を通り、橋を渡ったところが現地)

(牧田 司 記者 2011年9月26日)