RBA HOME> RBAタイムズHOME >2011年 > 住民目線で多摩ニュータウンの再生を考える 多摩NT・まちづくり専門家会議(まちせん)「会議」に期待
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街づくりの専門家集団として、地域の具体的・実践的な事業プログラムを提案し、継続的・持続的に街づくり事業の実現を支援する建築士やマンション管理士などで組織する NPO法人「多摩ニュータウン・まちづくり専門家会議(まちせん)」は9月15日、第 1回「多摩ニュータウン再生マニュアル作成会議」を開き、住民目線で多摩ニュータウンの再生・街づくりを進めていくことを確認しあった。約20人が参加した。「会議」は月1回程度開催し、3年後に具体的な提案としてまとめる。 会議の冒頭、会議の呼びかけ人である秋元建築研究所・秋元孝夫代表が「東京都やUR などの公的機関も再生などの取り組みを行っているが、民間のことは十分キャッチしているとは言いがたい。われわれが知恵を出し合い、再生のノウハウなどをマニュアル化して街づくりの指針を提案していきたい」と語った。以下、主な参加者の声を紹介する。 「タウンハウスの建て替えは棟ごとの賛成要件が厳しく、建て替えではなく延命の方向で再生を図るほうに傾いている」 「当初入居したときは建て替えを希望していたが、現在は保存して住み続けられる方策を考えている。その際、重要なのは近隣関係で、とくにスーパーの存在は大きい。街の価値が下がらないようスーパーを支援していくことが大事」 「街づくりのハードもソフトも機能不全に陥っている。陳腐化が進んでいる」 「多摩ニュータウンがすたれていくという ニュースを聞くと悲しい。これまでの経験で、行政はいい街を作らないと確信するようになった」 「諏訪2丁目の建て替えは特殊事例といわれるが、そうではない。法律を変え、補助金などを引き出すパワーがわれわれにはある。選択肢も建て替えか保存かの二者択一ではなく、もっと多様な処方箋はあるはず」 「住民の自治意識が高いのに依拠し、ハード、ソフトともコミュニティを高めていく視点が重要」 「建て替えで増床できても、そのカードは1回しか切れない。別の再生方法があるのではないか」 「URは最近、建て替えを言わなくなった。将来の人口減少を考えると(住宅は)必要なくなる」 「われわれは(意見を言う)野党ではなく(政策を実行する)与党むにならなければならない。増築より減築の考えもある」 「これまで街づくりは(経済の)上り坂でやってきた。今は下り坂。考え方を変えないといけない」 「公的賃貸住宅の姿勢が後退している。住民が商店街を支えている」 「(オールドタウンなどといった)マスコミ報道にいらいらする。われわれがいい街にしていく情報を発信していかなければならない」 「『再生』という言葉に違和感を覚える。団地の再生という言葉はきれいなイメージだが、高齢者が多い高経年マンションの現状はシビア。適当な言葉はないか」 「このような活動を行っているということがカウンターパートナーとして行政を動かす力になる」 「再生マニュアル化もいいが、具体的な成功事例を発信していくのもいい」 ◇ ◆ ◇ 記者は、多摩ニュータウン居住者でもあり、マンションの建て替えやコミュニティ再生に興味があり、取材もしているので専門家ではなく取材する立場として参加した。参加することを決めたのは次の秋元氏の文章だった。 秋元氏は論文「多摩ニュータウン再生マニュアル」の中で次のように述べている。「これまでの多摩市や東京都、国の取り組み結果を積極的に評価できないと考えている。イベントとしてのパフォーマンスはあっても実利に乏しい実効性のない計画で終わることが常であり、実際的に市街地の再生を事業化することに及ばないからである。ビジョンは誰だって言える。実際に事業化に向けたロードマップを引き、実施する段階まで持っていくことが必要なのだ。それが出来なければ予算の無駄と言うしかない」と。 同感だ。これまで再三、多摩ニュータウンの活性化が国や東京都などが主導して論じられてきた。しかし、どれもが立ち消えになり、あるいは具体的に見える形で活性化は図られてこなかったように思う。官主導の街づくりは完全に破綻したと考えている。 今回の「会議」がどのようなマニュアル、処方箋を提案するか注視したいし、素晴らしい提案をされることを期待したい。 |
(牧田 司 記者 2011年9月20日) |