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頑張れ マンションコミュニティ研究会


「マンションコミュニティ研究会」の勉強会(中央が武藤さん)


 先週の木曜日(1月20日)に行われたマンションコミュニティ研究会の勉強会に初めて参加させていただいた。同研究会の存在は、「もう一つの住まい方推進協議会(AHLA)」の代表幹事を務める千葉大教授の小林秀樹氏から聞いたものだが、同研究会は昨年4月、マンション管理士の廣田信子さんらが中心になって設立された。

 研究会の設立に当たって、廣田さんは「近年、都市の人間関係の希薄さ、孤立、孤独死といった無縁社会が大きな問題となっています。一方、マンションは多くの人が住まいを共有し共同で生活するが故の合意形成の難しさ、人間関係のトラブルといった課題も抱えています。(中略)しかし、多様な価値観を持つ人が集って住むマンションで、昔のような濃い人間関係に戻ろうというのは無理があります。 ( 中略 ) そして、できることから行動を起こそうと決意しました。(中略)私たちは、マンションが、人の気持ちを察し、心を配りながら、誰かのために今自分が出きることをする喜びを学ぶ学校として機能し、マンションという集住のスタイルが本当に価値あるものになるための実践的研究、活動を、この『心を伝えるカード』を送る運動からはじめようと思います」と会の紹介文で述べている。

 「心を伝えるカード」とは、年に1回ぐらいはカードで挨拶し、近況などを知らせる「切手のいらない年賀状」として隣近所に送ろうという活動だ。この活動はNHKで報じられたこともあり、大きな反響を呼んだという。

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 記者は、自ら住むマンションの管理組合活動でコミュニティの大切さを痛感させられているし、マンション業界が抱える老朽マンションの増加と入居者の高齢化という「2つの老い」の問題を解決する糸口になるのはコミュニティではないかとずっと考えてきた。建替えなどの合意形成は区分所有法などの法律に基づいて決定されるのだが、どのように合意形成を図ればいいのかを法律は全然教えてくれない。そもそも「コミュニティ」は、もっとも法律になじまない言葉なのだろう。

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 勉強会は月に1回開催されているようで、参加者にはマンション管理士のほか、大学院生など若い人の姿も見られた。今回のテーマは、「仲介の現場から見た大規模マンションの現状と課題」で、講師は「すまいる情報光が丘」の代表取締役社長の武藤正子さんだった。武藤さんは地域に根を張り、この23年間に1,800件を超える売買仲介実績をあげてきた人で、「管理組合と関わりたくない人が多い」「理事を経験し疲弊した人や、相隣関係でトラブルを起こすなどした人が結局、退去するケースが多い」などコミュニティの難しさを率直に語った。

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 勉強会の後はいつも二次会をやるのだそうで、図々しくも記者も参加させていただいた。その二次会の席で廣田さんが「この種の勉強会は肩が凝るものが多い。もうあれやこれや論議する段階ではない。実践あるのみ。できることからはじめようと会を立ち上げた」と語ったのが印象に残った。

 確かに、この種の問題を大上段に構えると袋小路に迷い込み、結局は疲れきって実を結ばなくなる。会の中心メンバーは廣田さんら女性だ。女性のしたたかさと柔軟さを改めて思い知らされた。

 女性ばかりの会に入会するのはためらわれるが(会員は100名を突破し、圧倒的に男性が多いそうだが)、「頑張れ! コミ研」とエールを送りたい。

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 マンションのコミュニティについては、廣田さんが地域マネジメント学会誌に書かれている「マンションコミュニティに関する一考察 コミュニティのセーフティネットを」( http://www.mckhug.com/notes/hirota101105.pdf )と題する論文を是非読んでいただきたい。国交省の「マンションの適正な維持管理におけるコミュニティ形成に関する研究」( http://www.mlit.go.jp/pri/shiryou/press/pdf/shiryou100630_2.pdf )も参考になる。

 また、「AERA」(11/1/31号)には、「もう東京には住めなくなる」と題する記事に廣田さんのコメントが紹介されている。

(牧田 司 記者 2011年1月28日)