RBA HOME> RBAタイムズHOME >2011年 > 「坪単価を超えたマンション」 東京建物・東武鉄道「ブリリア有明スカイタワー」竣工
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物件は、りんかい線国際展示場駅から徒歩9分、またはゆりかもめ有明テニスの森駅から徒歩7分、江東区有明一丁目に位置する33階建て全1,089戸の規模。専有面積は39.48〜168.64u。坪単価は255万円。入居予定は3月18日。設計・監理・施工は三井住友建設。共用部分内装設計はグラマラス。 冒頭に挨拶した矢内氏は「隣の『ブリリアマーレ有明』と合わせ2,200戸というアートと自然と暮らしを融合させた感動的なマンションを実現した」と語った。 同マンションは、リーマンショック後のおおよそ 1 年ぐらい前から分譲開始され、これまで供給した約800戸のうち9割が契約済み・申込済みで、矢内氏は「月80戸ぐらいがコンスタントに売れており、何もないところに巨大な街を創り、エリアのしがらみがない方々に非常にアピールした」と述べた。 森田氏は、「期待した以上の出来栄え。日常にアートがある優しい環境が誕生した。東京で一番美しい」と自負した。 中山氏は、「昔は日本にも海外にも生活の中にアートがあった。私はそのような環境で育った。私の作品を見て育つ子どもたちが、将来、何かを思い出してくれるよう願いを込めた」と制作の意図を語った。
この物件に限ったことではないが、「俺は何てつまらない記事を書いているのだろう」とつくづく思い知らされた。 記者は、どの物件でもすぐに坪単価をはじく。坪単価でしかマンションの価値を計れなくなっている。単棟型のマンションはそれでも通用する。しかし、このような大規模となると共用部分やデザイン、そして今回のマンションの特徴でもある「アート」の「価値」をしっかり評価しなければならないが、森田氏や中山氏などの話を聞き、実際にアートを見学して、上っ面の取材しかしていないことを恥じるほかなかった。 これからは、このような施設やデザイン、アートなどをきちんと評価して記事に反映させようと思うし、デベロッパーもまた新しい視点で物件をアピールする手法を考えてほしい。 ◇ ◆ ◇ さて、そのアートの素晴らしさについて。 例えば33階のエレベータホール前に採用されている桐島ローランド氏の写真。縦2m、横1mぐらいの滝と森を映したモノクロ写真が6枚、屏風のように飾られている。記者はカメラの技法については素人だが、一見して写真はコンマ何秒かの世界を切り取ったようにも見えるが、そうではなく星空や車の流れを撮るように長時間露光や絞り、シャッタースピードの技術を駆使して、悠久の自然を写し取ったように見える。雪舟の水墨画を見るようでもある。 森田恭通氏がデザインしたゲストルームやオールデイズラウンジのアートにも見ほれてしまった。約170uで 1泊一万円のゲストルームの壁にはモザイクミラーが一面に貼られている。4種類の大小様々なミラーが幾何学的に貼られているのだが、周辺の家具や光を映しこむことによって、あるいは見る角度によってえもいわれぬ表情を見せる。森田氏は「構造の壁なので仕方がないが、逆にしめたと思った」と語った。 オールデイズラウンジのエントランスには、横4m、縦2.7mのアートがエントランスの左右にそれぞれ飾られている。森田氏の会社「グラマラス」に所属する藤井昭宏氏による作品で、40p四方の黒御影石にレーザー加工を施し、書棚のように仕上げたものだ。描かれているのはほとんどが洋書だが、一文字一文字がしっかり読めるほど細部まで描かれている。 中山ダイスケ氏の一連の作品には、中山氏の「想い」が込められている。エントランスに飾られている黒御影石の額フレームも含め横5m 、縦8mの作品は、白のボードにアクリルで描いた点描画のようだが、よく見ると細かな洋数字を大きさや色彩を変えて描かれている。中山氏が約1週間かけて現場で描いたものだという。 オールデイズラウンジにある約8mのロングバーカウンターの折り上げ天井にも中山氏のアートが描かれている。これはコンピュータ処理してプリントしたものだ。 ◇ ◆ ◇ 森田氏に、「僕は坪単価でしかマンションの価値を計れない。どうしたらいいですか」と聞いた。森田氏からは「坪単価を超えるマンションとすればいいではないですか」と至極明快な答えが返ってきた。記事見出しは森田氏の言葉そのままにした。 |
(牧田 司 記者 2011年3月9日) |