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アトラクターズ・ラボ「住み心地ランキング」調査に思う

 不動産マーケティングのアトラクターズ・ラボが、同社が運営する分譲マンション購入者向けサイト「住まいサーフィン」で、マンション既購入者を対象にした住み心地、企画に関する満足度調査を実施して、売主ランキングとして発表した。

 結果は同社やマスコミが報じた通り。トップは野村不動産で、以下、住友不動産、三井不動産レジデンシャル、三菱地所 、丸紅、東京建物、オリックス不動産、藤和不動産、大京、東急不動産、コスモスイニシアの順でベスト11社に入った。

 結果についてとやかく言う立場に記者はないが、この種のアンケートについて危険なものも感じるので、以下にいくつか問題提起する。

 問題提起1  サンプル数は755件だ。ランキング上位11社のサンプル総計は394件だ。総計に占める割合は52%だ。ランキング対象としたのはサンプル数が15件以上の会社だから、15件以下の会社は除外されている。供給が少なくても評価が高い中堅は欄外となる。

 問題提起2  サンプル数がもっとも多いのは三井不動産レジデンシャルの91件で、野村不動産は48件。全国でもっとも供給が多い大京は27件。住友不動産は41件。供給が多い穴吹工務店や大和ハウス工業などはランク外だ。供給量とサンプル数は比例していいはずなのに、どうしてこのような差が出るのか。

 記者が真っ先に考えたのは、ベッツィ・サンダースの「サービスが伝説になるとき」だ。三井不動産レジデンシャルは「売主推奨度」でも高い数値を示している。きっと「自慢したくなる」マンションが多いのだろうと勝手に理解した。

 問題提起3  「居住者から見た重要度」では、「住戸設計」が27%、「住戸環境」が29%、「立地」が28%で、「設備水準」が9%。「耐震性」は5%、「共用部」は1%に過ぎない。これは一見してユーザーの購入動機の反映かと思えるが、記者は全然そうではないと考える。そもそも全サンプル数に占める免震・制震マンションは圧倒的に少なく、共用部が充実したマンションも少数に過ぎないことの反映だと思う。

 そして、何よりも「購入価格」「居住面積」が設問項目に入っていないのが理解できない。極論かも知れないが、「設計」も「環境」も「立地」も全てお金で買えるからだ。そして、「居住面積」こそが「購入価格」に直結する。お金持ちを対象に供給する会社(このこと自体は悪いことではない。戦略としては正解だろう)が上位にランクされ、そうでないデベロッパーが欄外となるのは当然だ。これは公正さを欠く。

 問題提起4  これはこのようなアンケート全てにいえることだが、そもそも「顧客満足度」をこのように定量的に捉えることができるのかどうかという問題だ。ユーザーのマンション購入動機は千差万別だ。一般的には、「価格・交通便・環境」だろうが、このほか買い物の便、子育て、セキュリティなど様々な要素が入り込む。そして、総合的な判断で取捨選択をする。

 例えば「子育て」。子育てを重視する人にとっては子育て施設がマンション内にあり、幼稚園・保育園、学校に近い物件の満足度は高くなるが、単身者や熟年世帯にとって子育て施設はマイナス評価にもなりかねない。果たして「子育てマンション」を数値で評価すれば何点になるのか。

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 以上、つらつら問題点を挙げてみた。ひとつだけ、アンケート結果で興味を引いたのがオリックス不動産だ。マンション全体の評価は、住友不動産の「90.3」に次ぐ「86.9」という高い数値を示しながら、「売主推奨度」(売主を知り合いに薦めたいかどうか)は11社の中で最低の「53.9」しかないことだ。

 記者は、同社がマンション事業に参入したころから取材しているが、「この会社は間違いなく伸びる」と思った。理由は簡単だった。当時、もっともマンションの商品企画に力を入れていた野村不動産との連携に力を注いでいたからだ。その同社が「売主推奨度」で最低というのはなぜだろう。

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 参考までに、ベッツィ・サンダースの「サービスが伝説になるとき」の次の定説を紹介する。

 「不満を持つ顧客のうち苦情を言うのは4%に過ぎない。96%は怒って2度と来ない。苦情がひとつあれば、同様の不満を持つ人は平均26人いる。苦情を言った人の56〜70%は苦情が解決すればその企業と再び取引したいと考える。解決が迅速な場合、 96 %に跳ね上がる。そしてそのことを5〜6人に話す」

(牧田 司 記者 2010年11月22日)