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駐車場ゼロ 三菱地所「吉祥寺エコマンション」に拍手喝采

車を捨てればワンランク上の住宅に住める

 

 国土交通省「住宅・建築物 省CO2推進モデル事業」に認定された三菱地所の「吉祥寺エコマンション」の竣工内覧会が報道陣向けに行われることを業界誌の記者から聞いた。早速、三菱地所にお願いして見学させていただくことにした。

 記者は、このマンションのことを全く知らなかった。概要を見て、快哉を叫びたい気持ちになった。それは、外断熱、太陽熱利用や機能特化バルコニー、断熱木製サッシュ ( ポツ窓 ) の採用などもそうだが、駐車場を設置しないということに対してだ。

 同社のニスリリースには、駐車場を設置しないことについて「移動手段として自転車や武蔵野市の運営するコミュニティバス『ムーバス』、レンタカーの利用などを想定し、自家用車に頼らない、環境にやさしい新たなライフスタイルを提案します」とあった。

 記者の持論は「車はマンション(戸建てもそうだが)の敵。車を捨てれば健康で文化的な居住生活ができる」だ。

 だれも取り合ってくれないが、少なくとも大都市に住めばマイカーは必要ないと思っている。電車やバス、タクシーを利用すればいいし、買い物にも自転車で十分だと思っている。

 車はいらないという持論は若いときからのものだ。兄は自動車メーカーに勤務していたが、「危ないし、不器用な自分は車の免許は取れない」という理由から、記者は車の免許は絶対取らないと決意した。その実、高校へはいつも兄の勤務時間に合わせて車で送ってもらっており遅刻ばかりしていたし、兄弟、友人の車の助手席に乗っては眠りこけ「あんた、眠らないでよ。私も眠くなる」と怒られてばかりいたが…。

 不動産業界の記者になってその思いは一段と強まった。住宅ローンを払いながら、車を保持するのは家計に大変な負担をかけるからだ。車にかける経費をマンションなどの住宅に振り向ければ、もうワンランク上の住宅が取得できると思っている。

 車保有者はどれぐらいのお金を車にかけているか。ホームページで調べたら、新車価格の4割で車両を売却し、5 年ごとに新車に買い替えると仮定した場合、車のタイプによって相当の差があったが、年間の総経費は80万円前後というデータがあった。もちろんこの経費には、事故、あるいは死といつも背中合わせという恐怖はコストには入っていない。CO2を吐き出す地球環境への悪影響も考慮されていない。

 これら諸々のコストを考えると、おそらく100万円は下らないだろう。車を保有することによるリスク費用は数億円(統計的生命価値)にもなるという試算もあるほどだ。

 だから、三菱地所が駐車場を設けないマンションを建設するのは大賛成だ。「吉祥寺」のマンションはわずか9戸だからできたのかもしれないが、このような提案はどんどんやって欲しい。

 駐車場のないマンションは転売時に不利になるかもしれないが、車を必要としない人は必ずいるし、最近の若者は車に乗らないとも聞いている。既存マンションの駐車場の空きが問題になっているとも聞く。

 2年前、香川県高松丸亀町の定期借地権付きマンションは駐車場なしでも早期完売したことを聞いた。地方では「1人に1台」が一般化しているようだが、これが地方の疲弊に拍車をかけていると思えてならない。公共交通手段を充実させれば、家計の負担は激減するはずだ。この丸亀町のマンションはこれからのマンション供給に大きなヒントを与えていると思う。

 市各自治体はマンションへの駐車場の設置を義務づけているところも多いが、見直して欲しい。タクシー業界も、乗合タクシーの導入などどんどん進めて欲しい。

駐車場なしでも売れた高松丸亀町の定借マンション (2008/1/25)

(牧田 司 記者 2010年10月21日)