「狂った世の中を変えるには人づくりしかない」 CLE総合研究所・佐野雅幸社長(63) 熱く語る 佐野社長 |
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既報の通り、日本最大のホームビルダーネットワークの「ジャーブネット」(主宰:宮沢俊哉アキュラホーム社長)は3月25日、全国の会員工務店約200名を集め「ジャーブネット販売促進実践実例共有会」を都内で開き、長期優良住宅の普及促進に貢献した会員の表彰式を行った。 表彰されたのは補助金交付決定件数が会員会社の中でもっとも多かった 10位までの11社で、株式会社CLE総合研究所もグループ4位として表彰された。CLE総合研究所・佐野雅幸社長(63)にインタビューした。 ◇ ◆ ◇ 同社の設立は昭和55年。流山市を地盤に半径50キロを営業エリアとし、昨年の完工棟数は38棟。年商は6億円。長期優良住宅受理件数は千葉県トップの13件。佐野社長は新潟県十日町市出身の一級建築士。お父さんは大工で、息子さんの佐野要太氏(30)も建築士。3代続く建築士だ。 佐野社長は、住宅建設に取り組む姿勢、建築行政のあり方、環境問題、人づくりなどについて熱く語った。 「流山を中心に半径50キロが営業範囲。千葉産の資材、例えば材木、紙、竹、織物、焼き物、石などコストも考えて入手しやすい素材を吟味し、各地域の人口密度、産業、所得、コミュニティなどを豊かな住空間にするような設計手法をとっています。基本的には無垢材を採用しています」 「安かろう、悪かろうという価格の安さをエサにした住宅をつくることには反対です。住宅は優良な資産として新しい世代に引き継がなきゃいけない」 「東葛地域では、居住者の高齢化が進んでおり4軒に1軒の割合で空き家になっているところがあります。狭小敷地をどうするかの問題もあります。これらのエリアを地域の豊かな共有空間にどう再構築していくか、次世代にどう継承していくかが重要な課題です。そのためには技術的な問題はいうまでもなく、民法、税法、建基法、金融などあらゆる面から解決法を考えていく必要があります」 「残念ながら現在国が推進しているエコ住宅を始めとする景気浮揚のアメ玉政策は、過剰なものを求めすぎて逆にコスト高になるものばかりです。惨めな末路をたどるような気がしてならない。私は、むしろ加工度の低い資材を用い、自然との共生を図る住環境にしていかないといけないと考えています。都市と地方の格差、蜂の巣状態になっている中心市街地の問題なども、国民が真剣に考える時期に来ています」 「狂った社会を直すためには、人を育てるしかない。とはいえ、狂った社会にしてしまったのは、われわれ団塊の世代にもその責任の一端はあります。私のやるべきことはある。機は熟した。ジャーブネットのツールを使って全国に発信していきます」 「私は、建築家でいえば安藤(忠雄)さんみたいに闘う建築家としてクライアントに向かいたい。政治的には河村(たかし=名古屋市長)さんみたいに市民民主主義を貫く信条に共鳴できます。リーダーとしては、宮沢(俊哉=ジャーブネット主催)さんに期待しています」 ◇ ◆ ◇ アキュラホームから事前に渡された同社のプロフィールには「地域密着」「構造・空間はどこのメーカーでもやるようなものではない独創的なもの」「住環境住宅」「年商6億円」とあった。 この特色に沿って質問しようと思ったが、話し出して数分もするうちに軌道修正した。住宅設計、人づくり、コミュニティなどについて理詰めで語る佐野社長は只者でないと思ったからだ。佐野社長が語るままに任せようと考えた。細々としたことは瑣末なことのように思えてきた。 その結果、このような記事になった。千葉県下でも、ジャーブネットでも優秀な成績を残せるのは、住宅に取り組む理念、哲学がしっかりしているからだ。 社名の「CLE」とは「Communication Life Environment」の略だ。環境を抜きに生活も地域との共生も考えられないという意味に記者は理解した。環境問題に30年も前から取り組んでいるデベロッパーや工務店などほとんどいないだろうと思う。 佐野社長が「世の中が狂っている」と話したことに対して、佐野社長を挑発≠キる意味もあって、「このような世の中にしてしまったのは、われわれ団塊世代の責任はないか」と聞いた。 この質問に佐野社長はすぐ反応した。真顔になって「自分の子どもや孫に引き継ぐことが大事。私はあと 10 年は頑張れるだろうが、やらなきゃいけないことはある」ときっぱり語った。 佐野社長は、平成7年から11年まで流山市議を務め、平成6年の市長選挙にも立候補したことを明かした。 佐野社長が見据えているのは世直し、人づくりへの挑戦だろう。市長選への再チャレンジもあるとみた。 ◇ ◆ ◇ 先日、当欄で「建基法検討会は国家ビジョンがない」と語った建築士について紹介したが、佐野社長も小手先の改正では問題は解決しないと語った。問題点を洗いざらい出し、徹底した論議を着たいしたい。 |
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(牧田 司 記者 2010年4月1日) |