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「かんぽの宿」売却問題について考える


 「かんぽの宿」売却問題が意外な展開を見せてきた。鳩山邦夫総務相が年明けの1月、オリックスの宮内義彦会長が郵政民営化に関わっていた∞売却価格は安すぎる≠ネどとクレームを付けた。これに対して、日本郵政の 西川善文社長は「契約手続きに問題はない」としていたが、1月 29日になって契約を実質的に白紙に戻すと語った。

 日本郵政は昨年12月26日、全国の「かんぽの宿」70施設と社宅9物件を109億円でオリックス不動産に一括売却する契約を結んだと発表した。

 売却価格については、鳩山 総務相の指摘を受けて公表したものだが、 確かに売却価格については、記者も109億円という価格が公表されて安いとは思った。

 同じような施設の売却という点では、独立行政法人 年金・健康保険福祉施設整理機構( RFO)がこれまで年金福祉施設の個別施設の売却をすすめている。同機構によると、19年度末まで2年半で164施設の譲渡を完了している。売却額合計は809億円となり、売却原価対比+391億円の実績をあげている。1施設当たりの売却価格はかんぽの宿は約1億4000万円なのに対して、年金福祉施設は約4億9000万円だ。

 売却方式も施設の状況も異なるのだろうし、単純比較はできないにしろ、かんぽの宿の売却価格が安すぎるというのは分からないでもない。

 もともと、日本郵政もオリックスも契約公表時には、価格を公表しなかった。契約発表が行われた当日、記者はオリックスに聞いているが、このときは「多額でもなく少額でもない」という答えだった。

 年間40〜50億円の赤字を出している施設で、従業員約3200人の雇用を引き継ぐという条件を考慮すれば、数百億円ぐらいだと記者は推測した。そもそも、かんぽの宿は採算を度外視してきた施設であり、宿泊施設の生命線とも言うべきホスピタリティが欠如していたというのも容易に想像がついた。オリックス不動産が、事業を再生するに当たってこの従業員の再教育に相当のエネルギーと資金を注がなければならないだろうと考えた。

 価格が公表されて驚きもしたが、契約手続きに瑕疵がないとすれば、単に価格が安すぎるということでどうして契約が白紙撤回になるのかも理解できない。オリックス不動産もいい迷惑だ。成り行きを注目したい。

 これほどまでに問題がこじれるのは、売却に際して日本郵政が情報の開示をきちんとやってこなかったことにも問題がありそうだし、大臣が変わって対応が異なるというのも「継続性」からいって問題がありそうだ。麻生首相が、記者団にかんぽの宿について質問され、「その問題は鳩山さんに聞いて」と答えたのにもあきれてしまった。

(牧田 司 記者 2月2日)