RBA HOME> RBAタイムズHOME >2008年 >

対照的なデベロッパーの定性的情報の開示

 

明確で格調高いプロパストの決算短信 

 ジャスダックに上場しているプロパストが1月15日、平成20年5月期中間決算を発表した。大幅増収増益を達成した。このところの同社のマンションの商品企画や販売動向からして当然の結果だ。喜ばしい限りだ。

 決算数字以上に記者が嬉しかったのは、いわゆる「企業の定性的情報」が極めて明確で、格調高いものだからだ。

 少し長いが、決算短信から引用する。

 「事業を順次に安定して開始することで、中長期に渡り『豊かな空間』を社会に提供し続ける体制を整えました。資産活性化事業では、不動産を取り巻く環境を敏感に察知し、収益不動産再生案件及び土地再開発案件ともに、取捨選択の判断を俊敏に行いました。事業用地の取得に関しては…強みである『分析力』『企画力』を活かし、慎重且つ着実に活動を行いました。また、デザイン性と機能性の追求に加え、高い品質性とアフターサービスの充実を実現する体制作りを行い、顧客に真の満足感を提供できるディベロッパーとして、企業価値の拡大を図るべく活動を行ってまいりました」

 東証であれジャスダックであれ、上場企業の定性的情報の開示については重要視しており、東証では「財務諸表によって表示される数値情報だけでは読み取ることが困難な上場会社各社の経営実態について、上場会社自身がその分析・判断に基づいて説明を加え、その内容を文章情報(以下『定性的情報』という)として『決算短信』等に記載するよう要請しています。…定性的情報の開示の重要性は、極めて高いものと考えらます」としている。

 記者も、決算短信を読む場合、数値情報よりも定性的情報を重視する。数値情報は遅行指標であり、その企業の1、2年前の分譲マンションなどの売れ行きをみればおおよそ見当がつくものだ。それよりも、その企業が今後どのように動くのか、事業進捗率はどうなのかなどを定性的情報で得る。

 その意味で、プロパストの定性的情報の質の高さに驚いたのだ。マンションのレベルが高いのは言うまでもない。

投資家を欺くある中堅デベロッパーの業績見通し

 一方で、失望というより怒りを覚える情報開示もある。ジャスダックに上場しているある中堅デベロッパーの第3四半期財務・業績の開示情報だ。

 今年度の業績予想に関する文章は次のように記載されていた。「連結業績予想につきましては、下期販売予定●戸に対して、●月末現在の引渡し済件数●戸、契約済件数●戸で合計●戸となり、進捗率は●%と見込まれ概ね順調に推移しています」

 もちろん、●には具体的な数字が書かれている。進捗率は極めて高い数値になっている。しかし、「販売戸数」「引渡し済件数」「契約済件数」は、それぞれ言葉の意味が異なり、文章としては何を言っているのか全く分からない。販売が順調とも、引渡しが順調とも、契約が順調ともとれるが、進捗率から逆算すると販売が順調に進んでいると理解できる。

 ところが、財務諸表に盛り込まれる数値は販売戸数に対応する数値ではなく、引渡済み件数に対応する数値であるのは常識だ。この文章を書いた同社の担当者がこのことを知らないはずはない。知っていて書いたのであれば、投資家を欺く行為だ。

 このような開示情報が許されるのであれば、同社はもちろんだが、ジャスダックそのものの信頼性が問われる。

 株価が暴落しているこんな時に、こんな記事など書きたくなかったが、このデベロッパーは「顧客主義」を貫くと標榜している。顧客とはマンション購入者だけでなく、その他の取引先、投資家も含まれるはずだ。このような情報開示は「顧客主義」とは相容れないものだ。

 

(牧田 司記者 1月17日)

ページトップへ戻る