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山万「コラボハウス南大沢」に見た同社の企業姿勢


「コラボハウス南大沢」完成予想図

 

自らの退路を断って住民と一緒に街づくり

 山万が分譲している「コラボハウス南大沢」を見学した。京王相模原線南大沢駅から徒歩17分、八王子市下柚木2丁目に位置する4階建て全28戸の規模で、専有面積は約74〜139平方メートル。設計・監理は山下設計、施工は多田建設。建物は昨年11月に完成済みで、現在の販売戸数は19戸。価格は3,390万 5,680万円(最多価格帯4400万円台)、坪単価は139万円。

 マンションの商品企画などに触れる前に、少し同社がどのような会社かについて触れてみたい。

 ご存知の方も多いだろうが、同社は千葉県・ユーカリが丘の開発会社として知られている。

 ユーカリが丘の開発面積は約245ヘクタール、計画戸数約8400戸、計画人口約3万人の大規模ニュータウンだ。昭和46年に開発着手して以来、今日まで継続してマンション分譲や戸建て分譲、その他商業施設運営、タウンセキュリティ、介護事業などを行っている。団地内を循環する山万ユーカリが丘線の鉄道事業を行っている会社でもある。

 同社が、他のデベロッパーと大きく異なっているのは、このユーカリが丘で徹底した地域密着型の街づくりを展開していることだ。テーマに「千年優都」を掲げているように、「住民・行政・デベロッパー」が三位一体となって未来永劫にわたって住み続けられる街づくりを進めている。早く手離れする≠アとを目指すマンションデベロッパーとは根本的に考え方が異なる。

「どこまでが仕事か、どこからがプライベートなのか分からない」

 その徹底ぶりを象徴する言葉を紹介しよう。記者は4年前、ある取材で1週間かけてユーカリが丘を取材する機会があった。仕事を終え、林新二郎専務(当時、常務)と一緒に酒を飲んでいるときだった。30分置きぐらいに、仕事の話なのかプライベートのことなのか、林氏に電話がかかってきた。林氏は「僕は、どこまでが仕事か、どこからがプライベートなのか分からない」と語った。

 頻繁に電話が掛かってくるのは、林氏がユーカリが丘の住民でもあるからなのだが、住民のためにすることは自分のためにすることでもあり、会社のためでもあると林氏は自覚していた。

 これは林氏に限ったことではない。115人の社員の過半数以上がユーカリが丘に住んでいることでも分かるように、住民の利益は会社の利益にも繋がっていることなのだ。言い換えれば、山万は自らの退路を断って、住民とともに街づくりを進めようという姿勢を貫いている。こんなデベロッパーは全国、どこを探してもないだろう。

 開発事業では、人口ピラミッドをチェックしながら進めている。住民の高齢化が進みそうだとすれば、若年層向けのマンションの供給比率を増やしたりして、バランスのよい人口構成にしようとしている。街の衰退は企業の衰退に直結するからだ。

設計・監理は山下設計 コミュニティ形成の願い込めるプラン


完成した「コラボハウス南大沢」

 さて、そんな山万が分譲している「南大沢」は、用地を東京都から取得した経緯もあって、商品企画には様々な制約が設けられている。平均面積が91平方メートル以上、4階建て以下、29戸未満などだ。そのため、市場性にマッチしない部分もあるが、いかにも同社らしいこだわりも見られる。

 26戸を戸建て感覚のメゾネットタイプにしたり、入居者同士のコミュニティを形成するためエントランスとは別のコモンプラザを設置したりしているのがそれだ。また、戸数が28戸の小規模なものでありながら、設計・監理には、数々の名だたる作品を手がけている大手の山下設計を起用しているのもそうだ。建物のデザイン、外構にその効果が現れている。

 駅からやや距離があるが、その分、単価も安い。今後分譲される南大沢や多摩センターの駅近物件は坪200万円をはるかに突破するといわれているだけに割安感もある。

(牧田 司記者 1月29日)

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