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「マンション蹴飛ばしたい」前区長の暴言から5年

江東区が行き過ぎマンション規制廃止

 

 入居者の子どもを受け入れることが困難な地域のマンション建設を全面的に禁止する「受入困難地区」を設けている江東区の「マンション建設計画の調整に関する条例」が期限切れである今年12月末をもって廃止され、新たな条例が設けられることとなった。

 当然のことだ。この条例が施行される前、記者はこのような筋の通らない条例は許してはならないと一貫して主張してきた。その主張が正しかったことが裏づけられたようで嬉しい。感慨深いものがある。

 あれは条例が制定される2年前の02年のことだった。記者は、当時の室橋昭区長が東京都のある会合で「マンションなんか蹴飛ばしたい」と暴言を吐いたのを今でも覚えている。マンションが増えると、保育施設や学校などの公共施設整備が追いつかないことを語ったものだったが、室橋氏の発言は常軌を逸したものだった。完全にマンションを悪視していた。

 この発言の2年後、04年に条例が施行された。気の毒だったのはマンション建設を予定していたデベロッパーだった。中には、工業専用地域から準工業地域に用途変更された土地を東京都から取得していたデベロッパーもあった。工場しか建てられない工専から準工にわざわざ用途変更し、その土地を買わせてからマンション不可としたのだ。これは行政による一種の詐欺行為だと思った。

 行過ぎた条例の是正は、今年4月に山崎孝明氏が新区長に就任した時点で予測できたことだ。山崎区長は最近のホームページで「受入困難地区指定制度を継続することは、よほどの理由がないと難しい…人口は都市の力であり、人口が増加することは、地域の活性化などメリットは多い」と語っている。同感だ。これから都市間競争が激化する。人口が増えるような街づくりを行わないと勝てないだろう。

 そもそも、江東区でマンションが激増したのは、都心の中央区に隣接する好立地に加え、準工業用途と工業地域の比率が23区トップの5割ぐらいを占め、容積率もほとんど200%以上という他区に例を見ない何でもあり≠フ街づくりにあった。この用途地域規制を含め、総合的な街づくりの思想が欠如しているのが区の悲劇を招いた。23区で所得水準が16番目、高齢者人口比率がもっとも高いのが江東区だ。

 区は、条例を廃止する一方で新たな条例を設け、ワンルームマンション規制を強化するという。しかし何でもあり≠フ都市計画を改めない限り、問題の解決にはならないだろう。

 

(牧田 司記者 12月5日)

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