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「不動産業界の良心」 安芸哲郎氏逝く

 

 前東急不動産社長で現同社相談役・現東急リバブル会長の安芸哲郎氏(あき・てつろう)氏の訃報を聞いた。

 訃報によると、17日午前6時22分、敗血症のため東京都新宿区の病院で死去、75歳。徳島県出身。葬儀・告別式は近親者で済ませた。後日お別れの会を開く予定だという。

 安芸氏は、記者にとってもっとも印象に残る業界人の1人だ。

 主にマンションや建売住宅を取材してきた記者は、マンションや建売住宅は一度見たらほとんど忘れないが、会った人はすぐ忘れしてしまう。ところが、安芸氏は今でも初めてお会いしたときのことを鮮明に覚えている。

 あれは、同社の代表的な団地の一つ「柏ビレジ」の事業着手の記者発表のときだったから、安芸氏は確か常務をされている頃だろう。安芸氏は、熱っぽく街づくりについて語った。そのときの印象は「こんなに真剣に街づくりを考えるデベロッパーってあるのか」というもので、「安芸さんって素晴らしい。こういう人が社長になるのだろう」と思った。

 「柏ビレジ」は、故・宮脇壇氏が担当、シンボルツリーやグリーンゾーンを設け、アイビーとレンガで街並みを統一した当時としては画期的な街だった。同社の代表的な団地であるとともに、昭和を代表する街でもある。その後、この団地を参考にした街づくりが広がっていった。

 その後、昭和60年、安芸氏は東急不動産社長に就任したから、その通りになった。社長になられてからも、何度もインタビューに応じていただいた。「不動産業界の良心」を代表する方だった。

 一つだけ、申し訳にない記事を書いたことがある。平成7、8年のころだった。バブルが崩壊して業界にとっては最悪のときだった。安芸氏は、地価が下がり、デフレが進行し、住宅が売れない現状をありのままに話された。

 記者は、安芸氏のその言葉を「安芸社長ぼやく」と見出しにとり、同社広報に大目玉を食らったのだ。

 その後お会いした安芸社長に謝り、「気にしなくていい」と仰っていただいたが、今でも勇み足≠思い出す。

 心からご冥福をお祈りいたします。合掌

 

(牧田 司記者 1月24日)