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ブルースタジオ 築40年の木賃リノベーション賃貸4戸

すべて事前内覧会の1日で入居決まる


完成した「やよい荘」(左の隣家の梅は満開だった)

 ブルースタジオが10年間にわたって取り組んでいる昭和の木造軸組工法アパート再生計画「木賃アパート再生プロジェクト」第8弾の「やよい荘」が完成し、3月13日から月入居が始まる。現地を見学した。

 同プロジェクトは、木造密集地域が持つ「向こう三軒両隣」のコミュニティーに価値を見い出し、木造軸組工法建築ならではの木の温もりや古さゆえの味を生かしたデザインにこだわりながら「地域リノベーション」につなげる取り組み。

 今回の「やよい荘」は、東急池上線洗足池駅から徒歩8分の大田区上池台の閑静な住宅街の一角に位置する築40年の全4戸の賃貸住宅。専用面積は36.67u、月額家賃は96,000円〜99,000円。 “Kino-mama” をコンセプトに、従来の柱や梁、鴨居、長押などを残しながら、ウッドデッキ付きの坪庭、箒職人・吉田慎司氏の手づくりの箒を各部屋に配置するなど木≠竍気≠取り組んでいるのが特徴。

 改修に当たっては、既存の無筋コンクリート基礎の横に新たに鉄筋コンクリート基礎を打設し、補強筋交、補強金物などで耐震補強を行っているほか、外壁面、天井の大部分に断熱材グラスウールを充填。キッチン、洗面、ユニットバスは更新している。改修費は1坪当たり約40〜45万円。

 入居者は全戸とも決まっており、すべて20歳代後半から30歳代前半のカップル。

  
1階のリビング・キッチン                   2階のリビング・居室

◇    ◆    ◇

 まるでたこ部屋≠フような古民家のコンバージョン賃貸住宅を見学したことがあるので、今回の木賃アパートのリノベーション見学も気が進まなかった。家賃は相場並みなのだろうが、築40年もする古いアパートに誰が住むのかと思た。

 ところが、完成したアパートを見学して、「これなら若い人には受けるかも」に変わった。サッシ・鴨居の高さは1720ミリと低く、いたるところに段差があるが、間口が3間ぐらいあり、木のぬくもりが伝わってくるものだった。終の棲家にはならないが、これだったら若いカップルにも受け入れられるだろうと思った。耐震補強もしっかりなされているのは何よりの安心感につながる。

 床は無垢のナラ材、キッチンの面材はカラマツの集成材、カウンタートップはモザイクタイル、蛇口は真鍮、天井、長押などは黒というより濃紺か藍色で、壁はやや黄みがかった白、ドアノブは昔の丸い形のものが使用されていた。

 それでも、事前の内覧会の1日で入居者がすべて決まったというのには驚いた。賃料は駅近のRC賃貸より安く、周辺の木造賃貸よりは6割ぐらい高いというが、二人が均等に負担すれば約5万円で済むというのが人気の要因だという。周辺の住宅は、一般的な戸建てやプレハブのアパートなどで、まずまずの住環境にあるのも無視できない要因だろう。坪70〜80万円かけて新築しても、賃借人はすぐ埋まらないのではないか。造り手の思いが伝わってくるリノべーション賃貸だ。

  
木製ルーバー目隠し                        1階のウッドデッキ(サッシは1.5間ぐらいあった) 

(牧田 司記者 2012年3月12日)