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マンション駐車場設置率

リーマン・ショック前の83.5%から61.6%へ激減

 リーマン・ショック後の景気の後退で分譲マンションの駐車場設置率が低下しているが、これに東日本大震災が追い討ちをかけるように設置比率は大幅に下落していることがわかった。別表は、リーマン・ショック前の企画と思われる物件と、現在分譲中の首都圏マンションの駐車場設置比率を比較したものだ。

 調査は、住宅情報誌「住宅情報」の2008年12月2日号(以下、リーマン前)と、「SUUMO」(前「住宅情報」)の2012年3月2日号(以下、現在)に掲載されている物件の総戸数と駐車場設置台数を集計して比較したものだ。駐車場には、来客用、身障者用、その他利用条件が付いているものもあるが、集計を急ぐためカウントしたりしなかったりしたものも含まれる。全体の数値に与える影響はごくわずかと判断した。

 調査によると、リーマン前は168物件37,877戸のうち駐車場が設置されているのは31,614戸で、設置比率は83.5%にのぼっている。都県別では23区が59.3%となっているほかは、都下が100%を超え、神奈川県、埼玉県、千葉県ともに90%を超えている。

 一方、現在は157物件28,096戸のうち駐車場が設置されているのは17,294戸で、設置比率は61.6%にとどまった。リーマン前と比べ実に21.9ポイントも下落している。23区が47.4%と50%を割っているほか、掲載物件が大規模物件(リーマン前に企画した可能性もあり)など3物件しかなかった千葉県が100%となっているが、神奈川県が83.3%、埼玉県が79.3%とリーマン前から10ポイント以上下回っている。

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 先日、三井不動産レジデンシャルの環境創造型大規模マンション「パークシティ南浦和」の記者見学会が行われた。物件説明を聞きジオラマを見て「おやっ」と思った。カーシェアリング用の駐車場はあるのだが、全211戸に対して駐車場設置台数は129台だった。設置比率は61.1%だ。うち120台が機械式だった。

 これは少ないと思った。いかにリーマン・ショック後の駐車場設置率が落ちていようと、郊外部でここまで低いのに驚いた。そこで、同じ駅圏の野村不動産の大規模マンション「プラウドシティ浦和」の設置率を調べた。全429戸に対して328台だから、設置率は76.5%だ。三井不動産レジデンシャルの物件は1棟で、野村不動産の物件は全6棟の配置だから差は出るのは当然だが、それでも少ないと思った。両社の広報によると、最近は設置率は抑制傾向にあるとのことだった。

 いかにこの設置率が低いか、三井不動産レジデンシャルの同じ「パークシティ」で比較してみよう。同社は2009年に高崎線宮原駅から6分の全1045戸の「パークシティさいたま北」を竣工しているが、駐車場は自走式で設置率は100%だ。「住宅情報」の記事広告には「自走式100%駐車」と謳っている。同社の物件のほかにも、当時の郊外型は「自走式100%設置率」が宣伝の謳い文句になっていた。マンションを購入すれば、抽選に外れる心配がないことをみんなアピールしていた。

 それから4年の今。別表で見たように設置率は激減している。23区で自走式100%設置率のマンションは、住友不動産の「シティテラス板橋蓮根」(350戸)しかない。しかも月額駐車料金は300円からだ。ごていねいに「SUUMO」には「ここなら車が持てるかもしれない」と書かれている。

 もう一つ、異変に驚いた。「分譲駐車場」が2物件あったことだ。最近の「SUUMO」はあまり見ないのでよくわからないが、リーマン・ショック前にはなかったことではないか。分譲駐車場は、3方をコンクリなどで囲い、もう1方はシャッターなどをつければ区分所有の対象になり、法的には問題がないが、かつて日本高層住宅協会(現不動産協会)が、平置き型を想定したものだが、駐車場は共用部分だから分譲するのは好ましくないとして会員には分譲しないよう通達を出した。現在も会員会社は区分所有の対象として駐車場を分譲しているところはないのではないか。

 さらにもう一つ、これは厳密に調べたわけではないが、駐車料金が上昇しているのではないかと思う。リーマン後はマンションの価格が下落しているのだから、駐車場料金も下落していいはずだが、そのような気配はない。設置率の低い江東区のマンションで3万円からという事例がある。

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 記者は、車が大嫌い(乗せてもらうのは大歓迎)だから、車を乗らない人が増え、マンションの駐車台数が減るのは、管理費や修繕積立金に影響を与えるだろうが、大歓迎だ。若年層の車離れは加速しそうだし、カーシェアリングも普及するはずだ。

 ただ、新たな問題も生じているようだ。マンションの駐車場の空き対策もさることながら、自転車通勤の増加だ。震災後のある朝だった。若い男性や女性が大群となってものすごいスピードで都心に向かっている光景を見た。頼もしさを感じた。涙が出るほどうれしかった。その半面、震災が与えた深刻な影響を考えざるを得なかった。車に乗らず、公共交通手段も使わない若者が何を考えているのかと恐怖さえ感じた。ドライバーやタクシーの運転手からは「怖い、危ない」という声をたくさん聞く。通勤のときぐらいは公共交通を利用してほしい。

 三井のリパークの駐輪事業は年々増加し、昨年10月末現在の時間貸駐輪場管理台数は前年度末比て21.1%増の2万台を突破したという。

(牧田 司記者 2012年3月8日)