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「エコ」と「エゴ」は紙一重 近江八幡の「エコ村」の取り組み

プレハブ協会シンポジウム 仁連・滋賀県立大副学長が講演


プレ協のシンポで講演する仁連・滋賀県立大副学長

 プレハブ建築協会と日本HOA推進協議会は3月5日、「エコ・スマート社会における住宅地マネジメント」と題するシンポジウムを行った。NPOエコ村ネットワーキング理事長で滋賀県立大学副学長の仁連孝昭氏による「近江八幡市のエコ村づくり」と、筑波大学芸術系環境デザイン准教授・渡和由氏による「ビレッジホーム」に関する基調講演が行われたほか、明海大学不動産学部教授・齊藤広子氏をコーディネーターとするパネルディスカッションが行われた。約150人が参加した。

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 近江八幡市のエコ村は、約20年前に農村地域工業導入促進法に基づき市の卸売り団地が計画されたが、バブル崩壊で計画が挫折し、そのまま白地で放置されていた約14.9ヘクタールの土地を産官学民が連携してエコ村を建設したもの。2000年にエコ村ネットワーキングを設立、行政との協議に時間をとられながらワークショップを重ね、2006年に開発許可を取得。2008年から分譲開始している約370区画の団地だ。現在、約280世帯が入居済み。

 平均敷地面積約72坪の区画は、ロットを千鳥状に配し、南側は間口を広くし、北側は奥行きを深くしているのが特徴で、全区画に10坪以上の菜園を設置することを義務付けている。生ごみからの堆肥づくり、雨水利用、カーボン・ニュートラル宅地の開発なども取り組んでいる。 

 仁連氏によると、エコ村は@生活の質を優先した社会A地域(場)の自然との共生B普通のまちづくり手法のモデル−−つまり「自考自策」を目標にし、@生命あるものに感動し、愛情を持つ生命倫理を育むA未来への希望を育むことを最高の喜びとする−−など7項目からなる「エコ村憲章」を掲げ、サスティナブルコミュニティの実現を目指している。

 仁連氏は、エコ村の課題にも触れ、行政の規制、コストの問題などから電柱の地中化を断念せざるを得ず、街路樹、複合施設、ビオトープなども設置できなかったと報告。入居者の中心が30歳代の子育て世代であることから保育園の建設も計画したが、「外から車が頻繁に団地内に入ってくる」「子どもの声がうるさい」などの反対運動によって中止せざるを得なくなった。仁連氏は「住民の(環境への)意識が高い半面、エゴも強い」と悔しさもにじませた。

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 記者は、関西圏の住宅市場はよくわからないが、人口約82,000人の近江八幡市で約370区画のうち約280世帯が4年間の間に入居したというのはすごいスピードだと思う。宅地が広いことからおそらく住宅は3,000万円はくだらないはずだ。エコ村の建設に携わった方々は胸を張っていい。

 ただ、保育園の建設中止には胸が痛む。「エコ」と「エゴ」は、愛と憎しみと同様、紙一重、隣りあわせだ。良好なコミュニティはことが起きると、一瞬にして崩壊する危うさも内包している。被災地の廃棄物処理、沖縄の基地問題も同じだ。同情はするけれども、いざ自分の問題になるとエゴをむき出しにして知らん顔を決め込む。これが現実だ。

 街路樹の問題もしかり。緑の環境は大切だとみんながそう思う。しかし、行政は樹木の管理にお金がかかることから渋る。財政的に厳しい行政はコストがかかる街路樹は極力減らそうとするのではないか。

 街路樹の近隣に住む居住者もまた、落葉高木は日陰となることや落ち葉の処理に困ることなどから望まない。これもまた「エコ」と「エゴ」のせめぎあいだ。

(牧田 司記者 2012年3月6日)