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 大京 マンションの販売手法を劇的に変える情報提供システム


情報提供システム デジタルサイネージ

 大京は2月15日、マンションの販売手法を劇的に変える可能性を秘めた「情報提供システムお披露会」を近く分譲する「ライオンズ蔵前レジデンス」の販売事務所で行なった。

 「デジタルサイネージ」とは、駅や商業施設、観光地など人の集まる場所にディスプレイを設置し、ネットワークを通じて情報を配信するサービスだが、今回導入するデジタルサイネージは、従来の一方的な情報発信機能だけでなく、利用者がディスプレイにタッチするだけで、地図や周辺情報、マンション情報など必要な情報をスマートフォン感覚で自由に取得でき、相互にコミュニケーションできるのが特徴。同社は、今後、供給するマンションに順次採用していく。

 挨拶した同社執行役員首都圏第一支店長・世利幸仁氏は、「当社は昨年50周年を向かえ、第2次創業期として新たな『イノベーション 2020 』を策定し、10を超える新しいプロジェクトに取り組んでいる。これもその一つ。顧客満足度を向上させる取り組みから生まれたものだ。プロジェクトの中には、それをパッケージにしてビジネスにしているものもある。今回のシステムも含めプロジェクトは発展系のもので、環境の変化に対応して第2弾、第3弾などを発表していく」と話した。

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 内覧会の案内が届いたとき、記者はすでに一部の同業が採用しているものと大差ないと判断した。2番煎じでは取材する価値などないとも思った。デモンストレーションでも、これまで見たものとたいした違いはないと判断した。コンテンツにある沿線施設とかアクセス情報、グーグルマップ、ウォークスルー、構造躯体などがいろいろな角度から見えることなどは体験もしている。記者のようなアナログ人間には無用の長物だと理解もした。

 ところが、質疑応答に移って、この認識が間違っていることが分かった。「ユーザーが一番知りたいのは購入した住戸からどのような風景が見えるのか、どれだけ陽が当たるかだ」と聞いたところ、担当者は「すでにラジコンやクレーンを使って映像は映している。居室からどのような眺望が広がるのかはコンテンツに含めたい。日影図をコンテンツに含めることも検討中」と答えた。

 これらが実現したら、マンション販売現場を劇的に変えるのは間違いない。都心部では一つの建物による日影だけでなく、複合日影は当たり前だ。これらのコンテンツによって購入希望の住戸にどれだけ日照が確保されるのか、あるいは日陰となるのか、眺望はどうなるのかが分かれば、決断も早まるし、「説明と違った」などというクレームも劇的に減るはずだ。顧客満足度は飛躍的に高まる。

 情報はうそをつかない。ありきたりの営業マンの説明を聞くよりはるかにいい。パンフレットに盛り込まれている以上のことを話せない営業マンは職をなくすかもしれない。その意味で、今後のコンテンツ次第では、マンション現場に革命を起こすといっても言いすぎでない。

 機器そのものはリースで月額15万円というからそれほどコストもかからない。課題は、コンテンツを充実させることとそのコストをどう抑えるかだろう。

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 今回のお披露目会で、驚いたことがもう一つある。世利氏の話の内容についてだ。世利氏は会社経営の根幹に関わるビジョンを堂々と語った。世利氏には失礼かもしれないが、支店長クラスの人が話すレベルをはるかに超えていた。「イノベーション2020」なる文言は初めて聞いたし、「10を超えるプロジェクト」の数の多さに驚いた。もう少しゆっくり一語一語をはっきり話せば完璧だ。

 後で聞いたのだが、「イノベーション 2020」は同社が公式に発表しているものではないとのことだった。これには驚いたが、会社を代表して話しているのだから、これぐらい話してもいい。世利氏は「パンフレットをなくしたい」「管理を商品にしたい」とも語った。世利氏の話はリッツ・カールトンの「クレド」にもつながると思った。「よかれ」と思ってやったことが、多少、会社のルールから外れていてもとがめられないことだ。世利氏もお咎めはないと思うが …。

 話は横道にそれるが、昨日、「愛の讃歌」などで知られるフランスの国民的歌手エデッィト・ピアフを主人公にした伝記的映画を観た。ピアフを代に送り込んだ人だったと思うが、ピアフに「言葉に心を込めろ。身体で表現しろ」と徹底して叩き込んでいたシーンがあった。

 どのような発表会であれ、デベロッパー幹部はおざなりな挨拶で済まさず、しっかりと言葉に心を込めて話すべきだ。商品に中身がないのは論外だが、はっきり話さないと商品の特性を伝えられないばかりか、その会社のありようも疑われる。 

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 「ライオンズ蔵前レジデンス」は現地を見ていないので何ともいえないが、坪単価は250万円前後になる模様だ。坪250万円前後の物件は、コンパクト・ファミリーマンションを含め100物件はくだらない供給物件があるはずだが、設備仕様の高さで言えば同社の物件はトップクラスだろう。

 商品企画部担当部長・川合幸晴氏は「最近の供給物件は総じて好調。モデルルームへの来場前と来場後の評価が大きく変わるのが特徴。こられた方からはすごく評価していただいている」と語った。大京は間違いなく変わる。

     
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(牧田 司記者 2012年2月15日)