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 アットホーム調査 私立小学校に通わせる母親の本音

 不動産総合情報サービスのアットホームが「私立小学校の通学時間」に関する面白いアンケート調査結果をまとめ公表した。

 1都3県に居住する子どもを私立小学校に通わせている母親330人を対象にしたもので、調査によると@私立小学生の通学時間の平均36分。1時間以上も19.4%A子どもの通学のために「引越した経験がある」4人に1人(20.3%)B今後、子どもの通学のために「引越しをしたいと思っている」5人に1人(26.1%)C今後、引越しをするなら、「夫の通勤」より、「子どもの通学」を優先的に考える64.0%D80.3%の私立小学生が習い事に通う。その費用は月額平均32,206円−−などが分かった。

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 このアンケート調査は面白い。箸にも棒にもかからないアンケートが多い中、出色ものだ。子どもにかける親の期待、本音が率直に表れている。 経済的に恵まれていても、子どもの教育に対するストレスは相当なものであることもアンケートは教えてくれる。

 まず、調査した母親の属性だが、専業主婦が58%で、その他が42%。世帯の平均年収は1,252万円だ。これだけで、子どもを私立小学校に通わせることができる世帯は高年収ということがわかる。居住形態別では持家が76%、賃貸が21%、その他が2%。

 通学時間は平均36分。同社によると通学手段(複数回答)は、@徒歩64%A電車54%Bバス19%Cスクールバス12%D自動車10%−−など。通学時間が60分を超えると「長い」と感じている母親の比率が飛躍的に高まる。

 「夫の通勤」よりも「子どもの通学」を優先する人が64%というのはよく分かる。母親のほうが子どもとの紐帯が父親より強いのは当たり前だ。

 子どもの教育上、最適の地域が「横浜」「国立」「吉祥寺」「二子玉川」「御茶ノ水」という順で並び、その理由が「優良な学校が近くにある」「治安がよい」「自然が多いから」「優良な塾があるから」「公園がたくさんあるから」「高級住宅街だから」が上位を占めた。

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 マンションデベロッパーも、すでに分かっているだろうが、このアンケート結果は参考になる。子育てマンションで最優先すべきなのは「子どもの通学校」だ。善し悪しはともかく「横浜」「国立」「吉祥寺」「二子玉川」「御茶ノ水」アドレスだったら、坪300万円だろうが間違いなく売れる。

 しかし、このアンケート結果を読んで、記者は複雑な思いもした。いったい、このアンケートの母親はどのような教育を受けてきたのだろうか。やはり有名私立小学校に通っていたのだろうか。有名私立小学校に通うと「頭がいい子」に育つのだろうか。

 通学手段は、徒歩のみより電車やバス利用のほうが上回った。予想した通りだが、子どもの負担、ストレスは相当なものではないか。母親はそれをどう思っているのだろう。 夫の通勤時間はどれぐらい以上が「長い」と感じているかも聞きたいものだ。自動車が10%というのはこんなものだろうか。

 ちなみに、記者の兄は低学年のころ、「学校に行きたくない」と泣き、いつも母親に20分ぐらい背負われて学校に通った。記者は、風邪で高熱を出し動けなくなったときだけ背負われて、これまた20分ぐらいかけて町医者に連れられたのを記憶している。恥ずかしかったが、母親には感謝した。今の子どもは母親に背負われるということはないはずだ。

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 デベロッパーにとっても大変な時代になってきた。世帯年収が1,000万円を超える世帯向けマンションを供給できるのはごく限られたデベロッパーだ。全納税者の94%が課税標準額550万円以下で、就学援助対象児童・生徒が全児童・生徒の37%、約12,000人にも達している足立区などでマンションを分譲するデベロッパーは何を最優先すべきか、記者にも分からない。年収の5倍が比較的返済が楽なマンション価格と考えれば、ほとんどの足立区民の取得限界価格は2,500万円だ。20坪は必要だろうから、坪単価は125万円だ。足立区とはいえ坪125万円で供給できる用地は皆無だろう。

 アンケートは、私立小学校に子どもを通わせることができる世帯と、そうした世界とは無縁の人たちの格差を浮き彫りにし、それはまたデベロッパー間の格差も表面化させた。先日も書いたが、マンション供給40年の歴史がある三菱地所レジデンスは足立区で過去1棟しか供給していない。

(牧田 司記者 2012年2月14日)