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 国交省 マンション管理の新たなルールづくりへ検討会

 国土交通省は1月10日、マンションの新たな管理ルールのあり方について検討し、一定の方向性を示す「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」を設置し、第1回検討会を開いた。

 第1回目は、座長に福井秀夫・政策研究大学院大学教授を選出したあと、国交省からマンション管理の現状と課題、検討の方向性などについて説明があり、各委員が意見交換した。会合は6月までに5回程度開かれ、7月以降に標準管理規約などへ反映することを検討する。

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 以下、各委員の意見を紹介する。

 村辻義信委員(弁護士)  管理組合に対する法的位置づけが理解されていない。自治会と混同されている場合も多い。混同を避けるために区分所有法を改正するのかどうかを検討する必要があるのかないのか。第三者管理については利益相反の問題もあり、ルール作りが必要。管理費滞納については、費用対効果を考えると事前の予防策も考えられる

 安藤至大委員(日本大学大学院総合科学研究科准教授)  1戸のマンションの管理が悪いと1棟、団地全体、さらにはその地域の価値の低下につながる。良質な管理によって価値を向上させることは社会的にも意義のあること。第三者管理は、そのような支援するシステムの一つとして選択肢もあるということで、基本は自らが管理するという姿勢が大事。きちんと情報を開示することだ

 樫谷隆夫委員(公認会計士) プロに任せるのは正しい方向だが、厳しくチェックすることも必要でそのルール作りが前提となる。組合が業務を丸投げすることはありえない。日常的に管理に対する関心を高めるようにすることも必要

 浅見泰司委員(東京大学空間情報科学研究センター教授) 財産の維持管理だけでなくストックとして価値をあげていくような取り組みが必要。管理の専門性を要求されるとできなくなるとか合意形成に苦労する問題もある。第三者管理も必要だが、フィーの問題もあり指針を示す必要がある

 吉田修平委員(弁護士) 反社会的勢力を排除するため規約で明確にすべき。監理は専門家に依頼するとかアドバイスを得ることも考えられる。滞納対策については、賃貸の敷金のように預かり金として徴収する方法もある

 親泊哲専門委員(日本マンション管理士会連合会会長) マンション管理士は最善の処理を求められるが、お金が関わることは他と比較が難しく、組合から厳しくみられることもある

 東要専門委員(よこすかマンション管理組合ネットワーク監事)  3大不公平として、駐車場の固定利用、組合業務を負担しない非居住者組合員、理事のボランティア論がある。第三者管理は、組合員が管理に関心を持つようにすることが前提

 川田邦則専門委員(大京アステージ取締役) 最近は管理に対する認識が高まっている。これからは建物の老朽化と入居者の高齢化という二つの老い≠ェ課題となる

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 記者はこれまでも述べてきたが、現行の区分所有法や標準管理規約では諸問題を解決できないと思う。検討会では第三者管理について一定の方向性が示されると思うが、リスクヘッジをどうするか、フィーをどうするかという難問も抱えている。入居者がマンション管理に無関心のままでは、最低の維持管理はできるかもしれないが、マンションの価値を上げるところまでは無理だと思う。

 維持管理はいわばハードの部分だ。維持管理に心を込めるソフトの部分が欠落していては、これから激化する団地間競争にまず勝てないだろう。ソフトとは、煎じ詰めれば入居者同士のコミュニティだし、最近の流行語で言えば「絆」だと思う。車の両輪のように、維持管理と良好なコミュニティが形成されてこそマンションの価値を向上させる道だと考えるが、村辻委員が語ったように「管理組合と自治会が混同されている」現状では何一つ前進しないのではないか。

 町内会費の徴収は管理組合の目的外であり、死後1年間近く経過しても発見されない孤独死があり、エントランスを歩く音がうるさい、排気口から料理のにおいがするという苦情が出る、ベランダで煙草を吸うことも禁止の方向にある。ペット飼育は現在はほとんどが可能だが、これも入居者の人権を考慮したものではなく、もともとは販促手段として導入されたものだ。マンションだけでなく、最近は子どもに「知らない人から声をかけられても応えない」しつけがされているという。記者は全てがコミュニティ、絆の欠如から来ると見ている。

 こんなことで果していいのか。検討会はこうした問題に踏み込んで、円滑に車が回転する仕組みを提示してほしい。

(牧田 司記者 2012年1月10日)