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東急不動産 「BRANZ(ブランズ)」リブランディング戦略

第一弾「ブランズ四番町」モデルオープン


「ブランズ四番町」完成予想図

 東急不動産は12月20日、同社の住宅ブランド「BRANZ (ブランズ)」リブランディング戦略と来年2月に分譲する「ブランズ四番町」のモデルルーム発表会を行った。リブランディング戦略は、同業他社と比べマンション認知度・知名度で大きく遅れを取っていることから新しいブランドコンセプトとして「人生を極める住まい」を立ち上げ巻き返しを狙うもの。「ブランズ四番町」はそのブランドリニューアルを具現化した第一号物件。

 物件は、 東京メトロ有楽町線市ヶ谷駅 から徒歩3分、またはJR市ヶ谷駅 から徒歩4分、千代田区四番町に位置する15階建て全165戸(事業協力者取得住戸32戸含む)の規模。専有面積は60.60〜107.29u、価格は未定だが坪単価は460万円台になる模様。竣工予定は2014年2月下旬。施工は清水建設。販売代理は東急リバブル。売主は同社と京阪電鉄不動産。モデルルームオープンは年明け。

 特徴は、同社として3物件目の「長期優良住宅」認定を取得しているほか、免震工法、非常時用発電機による共用部・専有部への電力供給、既存樹木の保存などによる環境への配慮を施していることなど。都の「マンション環境性能表示」制度で満点の星15個に1個少ない14個(設備の省エネ性が星2個)を取得している。

 モデルルームタイプは107uで、建具・面材にアメリカンチェリーの突き板を用い、オプションだが自然石のライムレマンをリビングなどに採用している。


エントランス(完成予想図)

◇     ◆     ◇

 この際だから、言いたいことをすべて書く。まず、同社のブランド力の現状について考えてみる。発表会で同社住宅事業本部 BRANZ 企画部統括部長・亀島成幸氏も明らかにしたように、マンションの知名度・認知度については大京の「ライオンズ」、野村不動産の「プラウド」、三井不動産レジデンシャルの「パーク・ホームズ」、東京建物の「Brillia (ブリリア)」、三菱地所レジデンスの「ザ・パークハウス」、住友不動産の「シティハウス」に負けており、これら同業の中では最下位だ。ブランドイメージでもトップの「プラウド」などに大きく水をあけられている。

 これが「ブランズ」の現状だ。業種が異なるので単純な比較はできないが、「東急不動産」のブランドで言えば「東急ハンズ」に圧倒的な差をつけられているはずだし、流通事業の「リバブル」にも負けているのではないか。

 同社がこれまでマンションや戸建てなどの住宅事業に力を入れてこなかったのなら理解できるが、決してそうではない。その逆だ。 

 まず、戸建て事業。現在、同社が供給している戸建ては年間せいぜい二百数十戸だ。三井不動産レジデンシャルの800〜900戸、野村不動産の500〜600戸(近い将来三井を抜くはずだ)に大きく引き離されている。しかし、街づくりの東急≠ニ呼ばれたように、同社は東急線や埼玉、千葉などで素晴らしい団地開発を行ってきた。街づくりではトップブランドだと確信している。バブル崩壊によって事業環境は一変したとはいえ、三井や野村はそれでも都市型戸建てに新しい道を切り開いてきた。同社も一時期、都市型戸建ての供給を行っていたが、いつのまにかやらなくなった。これが理解できない。

 マンション事業でいえば、かつての「アルス」はレベルの高いマンションを供給してきたし、高額シリーズの「プレステージ」もどこにも負けない好立地の物件を供給してきた。今回の「四番町」はこの「プレステージ」に匹敵する物件だが、記者の記憶では昔の物件のほうが優れていると思う。モデルルームは柱・梁型がかなり目立つ。全体的なグレード感も競合物件に勝るとは言いがたい。負けないのは「千代田区四番町」というアドレスだけだろう。

 ついでながら、コンパクトマンションシリーズの「QUALIA (クオリア)」にも触れておく。この分野でも同社は他社に先駆けて事業展開した。ところが、他社がどっと参入したことで価格競争に巻き込まれてしまった。先駆者利益を手放してしまったと記者は考えている。「高品質のクオリア」を堅持していれば違った展開になっていたはずだ。

 「東急沿線の東急の家やマンションに住む」のがサラリーマンの夢だったはずだ。それがいまや他のデベロッパーの草刈場になっている。この体たらくを五島慶太や五島昇は草葉の陰で泣いているのではないか。

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 かなり辛らつなことを書いた。しかし、記者は新たなブランド構築は可能だと思う。その地盤・素地があるからだ。同社が新たな「ブランズ」再構築するには過去の遺産をしっかり引継ぎ、東急電鉄も加えたトータルな「東急」ブランドを立ち上げるべきだと考える。

 電鉄は毎日、数百万人の通勤者や通学者の利便を図っているではないか。バスやタクシーなども含めればその数は計り知れないほどだ。「ゆりかごから墓場まで」(福祉政策を言っているのではない) の住生活総合事業こそ電鉄グループしかできない事業だ。一般の人は「東急不動産」と「東急電鉄」を同じブランドとして理解しているはずだ。

 「プラウド」も「ブリリア」もその前はごく普通のマンションだった。「パーク・ホームズ」も昭和50年代から60年代の初めにかけてはマンションのトップブランドだったが、今では「プラウド」に負ける。だからこそ三井不動産レジデンシャルは必死で巻き返しを図っている。

 同業他社に大きく引き離されたブランド力を再構築するのは容易ではないが、5年、10年かかろうとも徹底してやるべきだと思う。かつて昭和50年代、記者は通勤電車の中で「私もライオンズマンションに住みたい」と語っていた2人組の女性をみてびっくりしたことがある。「私もブランズマンションに住みたい」と考える人をどう同社が増やすか。潜在的な「東急ファン」はたくさんいるはずだ。

 新しいCMは「オーガスコック(熱帯睡蓮)」の花弁をモチーフにした「BRANZ ブルー」を背景に女性のシルエットが「B:Bloom(ブルーム)」(感性を花開くデザイン)−「R:Revolute(レボルート)」(革新を志す品質)−「A:Achieve(アチーブ)」(個性と共生を輝かせるサポート)−「N:Neologize(ネオロジャイズ)」(比類なき住まいへの挑戦)−「Z:Z」(究極への証)の順にマンションの専有部の中で展開する構成になっている。


新「BRANZ」のビジュアル

(牧田 司記者 2012年12月20日)