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日本綜合地所 会社更生手続き終結 今後の商品企画に期待


「ヴェレーナ上野入谷」完成予想図


  10月31日付で会社更生手続きが終結し、11月から新たなスタートを切った日本綜合地所(下村俊二社長)の「ヴェレーナ上野入谷」を見学した。12階建て31戸という小規模物件ながら、いかにも同社のマンションらしいヨーロピアンスタイルの外観とオープンエアスペースを採用しており、販売も好調だ。

 物件は、東京メトロ日比谷線入谷駅から徒歩2分、JR山手線上野駅から徒歩13分、台東区入谷一丁目に位置する12階建て全31戸の規模。専有面積は58.68〜70.55u、価格は3,648〜5,398万円、坪単価は219万円。竣工予定は平成25年11月下旬。施工は風越建設。

 11月から販売を開始しており、現在、第1期19戸のうち15戸に申し込みが入っている。同業他社の競合物件が多い中で好調なスタートを切った。

 専有面積圧縮型ではあるが、駅近で昭和通から一歩入った立地条件、7.2m以上のワイドスパン、1畳大あるかないかの廊下スペースなどが特徴だ。ほとんど廊下スペースをなくすことで3LDKを実現した。。異論もあるだろうが、これも一つの提案だ。

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 同社のマンションは平成5年の会社設立以来ずっと取材してきた。同社の成長の原動力となった商品企画力を生かし販売力をつけ、その他大勢のマンション販売会社とは一線を画していた。

 その商品企画力・販売力を最大の武器にし、業界を震撼させた「レイディアントシティ横濱」(1805戸)がその筆頭だ。駅からやや距離があるために分譲単価を130万円台に抑えかつ30坪のマンションを4,000万円以下に抑えられることに着目し、全1,805戸の平均面積が100uという常識破りのマンションとした。用地を取得したころ同社は「絶対、売れる」と自信を持っていたのをまざまざと思い出す。概要が明らかになったとき、業界は「正気の沙汰ではない」と一蹴した。結果はご存知の通り、大方の予想を覆し見事に早期完売した。

 全開口サッシを採用することで高層階の住戸より1階住戸のほうが値段を高く設定しても売れるという値付けの常識を覆し、実用新案を取得した奥行き4メートルの「オープンエアリビングバルコニー」も世に送り出した。湾岸マンションブームの火付け役も同社だったし、インターネット環境もどこよりも早く整えた。ヨーロピアンスタイルの外観もそうだったが、浴室に猫足つき浴槽を採用したマンションを見たときは度肝を抜かされた。

 ところが、リーマン・ショックが絶頂期にあった同社を直撃した。株価は直前の3600円から1500円に急落。売上高1,189億円の2倍近くの借入金2,124億円(平成20年3月期)負担は大きく、ついに平成21年2月5日付で会社更生法を申請するに至った。その後、大和地所の支援の下で再生を図り、平成24年10月31日付で会社更生手続きを終結した。

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 リーマン・ショックによってマンション業界地図は大きく塗り替えられた。量的拡大は望めず、少子・高齢化による世帯構成の変化、大手デベロッパーの積極展開、金融機関の中小への融資抑制などにより、中小デベロッパーは極めて厳しい事業環境下にある。大手が手がけない遠隔地や狭小敷地などの隙間≠ノ活路を見いださざるを得ないのが現状だ。

 日本綜合地所が再び供給大手の一角を占めるのは難しい。そもそも数を追う経営などもはや何の価値もない。幸い、同社は社員の数は半減したというが、全盛時に商品企画に携わっていた若手・中堅のスタッフは残っており、最近、商品企画委員会の編成も行ったという。業界に再び新しい風を吹き込んで欲しい。

 新しく社長に就任した下村俊二氏の略歴は次の通り。

 平成元年4月 リクルートコスモス(現コスモスイニシア)入社/同5年2月 長銀総合研究所入社/同10年11月 ゴールドクレスト入社、同12年6月 同社取締役企画開発部長/同15年6月 ゴールド不動産販売 代表取締役社長/同15年10月 大和地所 東京支店長、同21年1月 同社常務執行役員東京支店長/同22年1月 日本綜合地所管財人代理、同22年3月 同社代表取締役、同24年10月 同社代表取締役社長(現在)

(牧田 司記者 2012年11月22日)