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東京建物 働く女性の「Bloomoi /ブルーモワ」に期待


「Bloomoi /ブルーモワ」のメンバー

 東京建物が10月18日から始動した働く女性による商品開発プロジェクト「Bloomoi /ブルーモワ」について、そのプロジェクトリーダーを務める同社住宅商品企画部課長代理・野口真利子さんに話を聞いた。

 同プロジェクトは、分譲マンションの開発に当たって同社女性社員を中心に構成されたメンバーが Facebook を活用した「働く女性」とのコミュニケーションを通じ、ニーズを収集・開発プロセスを公開しながらマンションの専有部とサービス等を具体化させる対話型商品開発だ。「Bloomoi」 は、Bloom(咲く)とmoi (フランス語の「私に」)の造語で、「『暮らし創り』において働く女性たちの咲き誇る幸せな生き方を描き続けること」をビジョンとしているという。このプロジェクトの声を反映した分譲マンションを来年東京都内で供給する予定だ。

 取材の目的は、ニュースリリースにも記載されているように、同社は従来から「東京未来建物会議 LISTEN」を通じてユーザーの声を商品企画に反映してきたが、「一方で、女性の社会進出増加に伴い多様化する生活スタイルや商品ニーズに必ずしも全てを応えきれていない」という認識に至ったのはなぜか、そして、具体的なニーズの変化を例示している@自分のこだわりや幸せを叶えるインテリア等のカスタマイズA家事の時間を短縮出来る効率を重視した住宅設備B近居の増加に伴う、親世帯による子育てサポートを支援するサービス−などはどのようなものかを聞くことにあった。

 まず、いまのマンションが「多様化する生活スタイルや商品ニーズに必ずしも全てを応えきれていない」ことについて、野口さんは「ライフスタイルやニーズの変化は販売現場サイドからも多く聞かれました」とし、自らも「私自身も昨年出産しまして1歳2か月の子どもを保育園に預けながら働いています。仕事を終え、子どもを迎えにいった帰りにスーパーで重い買い物もしなければなりません。

 働く女性はとにかく時間がありません。睡眠不足になるとすぐ肌に表れる。仕事に対してきちんと評価してほしいという願いと、もっと楽しく女性らしくありたいという表裏一体、二律背反を自問し続けているのが女性です。仕事と家庭をどう両立させるか、みんながハッピーになれるためにどうすればいいかなどについて共に考え、さらに、何らかの社会貢献をしたいという意欲が相対的に高い働く女性の生の声を生かして、ハードからソフトまで住まいづくりに反映していきたい」と話した。

 また、具体的な商品企画については、「例えば壁紙。好きな色や柄などを自分の好みで選べる、納得の上で決められることで愛着が持てるはずです。子育てサポートでいえば、保育園の送り迎えを経験すると分かるのですが、とても祖父母の方々が多いのに気づきます。両親との近居が多いせいでしょうが、そうした祖父母と孫が憩える共用部があってもいいですよね。また、宅配サービスで購入した冷蔵食品のボックスを玄関まで運んでもらえるようなサービスができればいい」と語った。

 同社ホームページ内 URL http://sumai.tatemono.com/brillia/bloomoi/

 FacebookURL https://www.facebook.com/BrilliaBloomoi

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 記者は約10年間、主夫をやったので働く女性の苦労は他の男性よりはるかによく分かる。もっと働く女性が仕事に集中できるようにし、きちんと評価しなければならないと思うし、家庭での負担を軽減すべきだと思う。

 働く女性の評価については、先日、世界135カ国を対象とした「男女平等度」調査で、わが国は101位と前年(98位)からさらに後退し、主要8カ国(G8)では最下位というなさけないニュースが流れた。東洋経済新報社の調査によると、全上場企業3,595社、全役員40,493名中、女性役員は585名で、わずか1.4%しないないという。わが不動産業界でも同社を含む大手上場会社でこれまで女性の役員は一人もいないはずだ。女性を重用することで知られているフージャースコーポレーションは全役員7人のうち2人が女性だが、うち1人は社外役員(監査役)だ。

 役員になる資質がないのであればやむを得ないが、決してそうではない。野口さんの名刺をみたら「一級建築士」の肩書きもついていた。野口さんは建築系の出身で、7年前、「気合と根性」で取得したのだという。同じプロジェクトのマネージャーを務める田所照代さんに数年前インタビューしたが、記者は「間違いなく東建の幹部になれる逸材」だと思った。田所さんは東京出身だが、大学は関西で、1年生のとき阪神大震災で被災した経験から、東建に入社後、どこよりも早く「防災グッズ」を標準装備化した人だ。「一緒に飲みましょう」という約束が果たせないままになっている。

 同社の女性のレベルの高いのに驚いたことがまだある。取材の窓口になってもらった同社広報IR室主任の鈴木清由里さんは「不動産鑑定士」の資格を持っていた。「クライアントプレッシャー」などという意味不明の言葉がまかり通る不動産鑑定士業界については記者は言いたいこともあるのだが、資格取得の難しさについては言うまでもない。同社にはこのように綺羅星のごとく優秀な女性社員がいるのだろう。歴史の古さは追い抜かれることがないが、東建はどうがんばっても売り上げでは大手3社にかなわない。女性の役員を登用することで「男女平等ナンバー一デベロッパー」になる資格は十分ある。

 もう一つ付け加えるなら、同社こそ「コンパクトマンション」の草分けだ。もう20年も昔だが、他社に先駆けて、確か文京区のマンションだったと思うが、女性の視線でマンションを企画してヒットしたのを覚えている。その後もコンパクトマンション市場で一定の地位を築いてはいるが、「ナンバー一」と呼ぶにはいささか抵抗がある。その意味で今回の「Bloomoi」がどのような商品を打ち出すのか興味深い。

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 テレビCMで「マンションはBrillia」とで呼びかけているが、記者はユーザーからの「マンションはBrillia」という声が圧倒的多数を占めることを期待したい。


写真中央が野口さん

(牧田 司記者 2012年11月5日)