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埼玉県住まいづくり協議会

日本一の高齢化変化率迎える「埼玉」に立ち向かえ


「埼玉の未来を拓く住まいづくり」シンポジウム

 埼玉県には、住宅に関する公益法人からゼネコン・ハウスメーカー、建築材料メーカー、不動産業、金融機関、マスコミ、その他関連の産業を含めた約120社・団体からなる「埼玉県住まいづくり協議会」がある。

 設立から今年で17年目だが、このような行政、民間が一緒になって様々な住宅問題について協議する団体は全国的に珍しいという。今年就任した会長の山本拓己氏(OKUTA社長)は3代目だ。初代会長がポラスの創業社長だった故・中内俊三氏、2代目が宮沢俊哉氏(アキュラホーム社長)だ。

 同協議会が3週間前に「埼玉の未来を拓く住まいづくり」と題するシンポジウムを開催した。記者もシンポジウム前の山本会長との記者懇親会には出席させていただきお話もうかがったのだが、他の取材の関係で「日本一激しい高齢化に直面する埼玉での住まいづくりについて」(明大教授・園田眞理子氏)と「『固定価格買取制度』スタート」(日本再生可能エネルギー総合研究所代表・北村和也氏)とそれぞれ題する講演は聴けなかった。

 同協議会事務局から両氏の講演テープを送ってもらったので、まず園田氏の講演に関することについて紹介したい。北村氏の講演は機会を改めたい。


園田教授

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 園田氏は、「昨年の3月11日には福島県郡山市にいて、生まれて初めて震度6を経験した。それを機会に自分の思っていることを正直に話そうと思った」と、講演のテーマが過激≠ノなった理由から話し始め、これからの20年間であらゆる分野で右肩下がりの経済・社会現象が生じ、とくに埼玉県では高齢化人口比率の変化率が全国一高くなると指摘。急激に進む少子・高齢社会ではもはや 20 世紀型の常識は通用しないとし、劇的に変化する経済・社会構造にどう適応するのか、埼玉県の住宅マーケットの近未来はどうなるか、住宅産業から住生活産業へどう脱皮するのか、その出口戦略とは何かについて語った。

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 テープを聴き、その通りだと思った。間違いなく埼玉県を筆頭に千葉県、神奈川県、東京都などで郊外住宅地の空家率の増大、コミュニティ崩壊が社会問題化する(すでに始まっているのだが)と思う。東京都はまだ利便性の高いエリアが多いので何とかなりそうな気もするが、その他は絶望的ではないかとも考える。

 記者は昭和50年代から首都圏近郊の郊外住宅地についてかなり取材してきたし、デベロッパーが開発した住宅地を賞賛もした。バブル崩壊によって「住宅すごろく」なる言葉は死語と化し、地価が20年以上も下落することなど夢にも思わなかったが、無念さはおりのようにずっと抱え込んでいる。絶賛した郊外住宅地が廃れるのを目にし聞くにつれ痛みは増す。園田氏は、「言葉が悪いですが」と前置きし、「これまで民間は売り逃げ建て逃げ≠してきた」と指摘したときは、わがことのようにグサリと胸に錐が突き刺さった。お前は書き逃げ≠オてきたではないかと。

 園田氏は、埼玉県ではなく、東京都住宅供給公社が分譲した八王子市高尾の郊外住宅地を例示して、郊外住宅地の抱えている問題をわれわれに突きつけた。この団地は約2,100戸の規模だが、世帯主が60歳以上が約7割を占め、向こう15年間で空き家となる可能性は全団地で最大4割になる可能性を指摘した。

 この団地については分譲当初から再三紹介したし、賞賛もした。園田氏の話はさもありなんと納得もするのだが、記者には一向に再生・出口戦略なるものが見えてこない。

 同じような、あるいは昭和を代表するといってもいい埼玉県の「鳩山ニュータウン」に8年前に訪れて書いた記事があるので参照していただきたいし、今年もある都心から50キロ圏の郊外ミニ開発住宅地についても書いたので読んでいただきたい。

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 園田氏は「売り逃げ建て逃げ≠オてきた民間はなかなかその住宅地に声をかけるのは難しいかもしれないが、行政と連携してエリアマネジメント手法を駆使して団地再生に取り組んでほしい」と語った。そのヒントとして、マンション管理組合と同様の戸建て団地の管理組合を設置することを提案した。地域の中で循環する流通ビジネスや高齢者住宅の提案も行うべきだとした。「つくった箱は変えられれないが、箱の中身、コンテンツは替えられる」とも話した。

 この言葉がヒントになる。日本一高齢化人口の変化率が高くなるという埼玉県住まいづくり協議会の果たす役割は大きい。ややもするとこのような組織は行政の受け皿になりがちだが、そうではなく行政を動かし、行政と一緒になって難問に真正面から取り組んでほしい。

 記者懇親会で山本会長は「今年度は新築からリフォームまで安心・安全の住まいづくり提案を行政と一緒になって消費者に広めていきたい。県産材の活用などブランド化事業も行っていく」と話した。


山本会長

人口4割減 限りなく限界集落に近い郊外大型開発地(7/27)

「鳩山ニュータウン」に吹いた風に想う(2004/7/2)

(牧田 司記者 2012年11月5日)