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旭化成不動産レジデンス

マンション建替え「池尻団地」と「レジデンス丸平」着工


「池尻団地」完成予想図

「それぞれ1冊の書籍、小説が書けるドラマがある」進副社長

 旭化成不動産レジデンスは10月29日、同社マンション建替え事業の14件目の「池尻団地」と15件目の「レジデンス丸平」の着工に関する事業説明会を行った。

 「池尻団地」は、昭和38年に首都圏不燃建築公社が分譲した地上5階建て3棟、住宅125戸、店舗・事務所各1区画・倉庫8区画の団地で、借地権分譲された店舗・事務所・倉庫と所有権分譲された住宅が混在する複雑な権利関係を調整し、マンション建替え円滑化法による組合施行の手法により行うもの。平成27年春の竣工を予定している。

 「レジデンス丸平」は、借地権マンションで、その底地権者が所有する隣接の3階建て丸平ビルおよび2軒の借地権付き戸建住宅2棟を合わせて等価交換方式により建替えるもので、平成27年の竣工を予定している。

 説明会の冒頭に挨拶した同社・進政裕副社長は「今回の2件のほか調布市富士見町で従前の戸数170戸が370戸、事業費にして100億円の案件が建替え組合の事業認可を取得した。このほか10プロジェクトが進行中で、事業の大きな柱になってきた。案件ごとに1冊の書籍、小説が書けるぐらいのドラマがある。社会的にも意義のある仕事」と話した。

 「池尻団地」は、世田谷区池尻3丁目に位置する敷地面積5,978.8u、既存建物は5階建て3棟(昭和38年竣工)、延床面積11,286.13uの住宅125戸、店舗・事務所各1区画、倉庫8区画、権利者数120名。建替え後は11階建て延床面積20,211.36uの全205戸、店舗1区画(分譲戸数は約130戸)、専有面積約31〜94uとなる。設計・監理はネクストアーキテクトアンドアソシエイツ。施工は大成建設。

 「レジデンス丸平」は、三鷹市下連雀3丁目に位置する敷地面積1,524.24u、既存建物は6階建て延床面積3,050uの住宅27戸、店舗4区画、権利者数22名。建替え後は13階建て延床面積9,383uの全95戸、1〜2階店舗4区画(分譲予定住戸数66戸)、専有面積約36〜80uとなる。設計・施工は竹中工務店。

◇     ◆     ◇

 「1冊の小説が書けるぐらいのドラマがある」という進副社長の話を聞き、マンション建替えの困難さを改めて感じさせられた。とくに今回の案件は借地権付きであり、円滑法が想定していない権利変換の問題、所有権付きへの変更問題、複合用途の評価の問題などが山積していた。このほか、敷地と建物の所有名義が異なるケース、共用部に過去の権利者の名義が残っていたり、住戸の専有面積と土地持分が一致しないするケースも少なくなく、複雑な権利関係をクリアしなければならない苦労があるという。

 苦労はノウハウとなり財産となり、武器にもなるのだが、事業参画から合意形成にいたるコンサルティングフィーなどないのが現状だ。同社が建替えナンバー1企業として評価されるようになったのもこの苦労の積み重ねだ。15棟の実績のほかに実を結ばなかった案件が何件あるのだろうと気になったが、癒えつつある傷口を広げるようで聞く勇気がなかった。

 同業他社の追い上げもあり、マンション建替え競争は激化の一途だ。


「レジデンス丸平」完成予想図

(牧田 司記者 2012年10月29日)