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三井不動産リアルティ「シングルの住まい意識調査」で考えたこと

 

 首都圏の賃貸マンションに住む未婚の6割が住宅購入を検討−三井不動産リアルティの「マンション住まいシングルの “ 住みかえ ” に関する意識調査」でこんな結果が出た。調査は31〜60歳までのシングル男女622名を対象に行ったもの。

 調査結果によると、新築・中古マンションを購入した「マンション購入派」(312名)の8割以上が「購入してよかった」と回答。現在の住環境・住まいに対しても、9割近くが「満足」と回答した。

 一方、「マンション賃貸派」(310名)の約3割が現在の住環境・住まいに「不満」と回答し、6割以上が「将来的に住まいを購入したい」と考えていることがわかった。

 マンション購入派の購入理由は、「家賃を払い続けるのがもったいない」「家賃並みの支払いで購入できるなら、買った方が得」が1位、2位となった。マンション賃貸派が購入していない理由は、「ライフスタイルの変化にあわせて、気軽に住みかえができる」が1位になり、「購入資金が足りない」「長期的なローンを組むことが不安」が2位、3位となった。

 月々の住居費は、新築マンション購入者が平均10.8万円、中古マンション購入者が平均8.2万円、賃貸マンション居住者が平均9.2万円。また、賃貸マンション居住者よりマンション購入者のほうがより広い住まいに住んでいる傾向にあることも分かった。

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 この種の調査はこれまでもたくさん行われており、今回の調査結果もこれまでのものとさほど変わらない。記者が感じたものについて以下に書く。

 まず、6割の賃貸マンション居住者が分譲を購入したいという意向 について。当然だし結構なことだ。 賃貸が分譲と比べあらゆる面で劣る状況が続く限り、この流れは続く。最近の若い人は 「車買わない」「家買わない」「結婚しない」「消費しない」人が増えていると 聞くが、後先はともかく、家は買って結婚はしてほしい。

 次に、住宅ローン控除について。ローン控除を受けているのは全体で約50%だが、ローン控除の面積要件を満たさない50u未満のマンションを購入した人は全体の約56%だから、当然の結果といえば当然だ。記者は、ローン控除の面積要件を引き下げるべきだと思う。

 ただ、利用状況を見ると興味深い結果が出ている。新築マンションを購入した男性の約67%がローン控除を利用しているのに対し、中古マンションを購入した女性の利用率は約38%にとどまっていることだ。また、女性より男性のほうが利用率は高く、中古より新築のほうが利用率は高い。この理由についてはよく分からないが、ローンを利用することに不安を感じる「即金派」が女性に多いからのような気がするがどうだろう。背伸び≠したがる男性と身の丈≠重視する女性の考え方にもよるのか。

 驚いたのは住宅の広さで、新築も中古も40u未満というのは約10%にしか過ぎず、新築購入の約32%の人が70u以上ということだ。中古でも50〜60u未満というのが層としてはもっとも多い。一方。賃貸派は20〜30u未満というのが約44%を占め、40u未満が全体の約72%に達している。

 この結果は信じがたい。サンプル数が少ないので鵜呑みにはできないが、「単身者はワンルーム か1LDK 」というこれまでの常識を覆す結果だ。 マンションの商品企画の参考になる結果だ。

 設問の仕方を考えたほうがいいと思ったのは、「購入した理由」と「購入しない理由」だ。購入した理由で上位を占めているのは「家賃がもったいない」「買ったほうが得」「老後の備え」など直截的なものだが、購入しない理由の1位は「ライフスタイルの変化(転勤や趣味の変化など)にあわせて、気軽に住み替えることができる」などと分かるような分からない情緒的な回答になっている。「転勤」と「趣味の変化」を「ライフスタイルの変化」というくくりで縛っていいのか。そもそもライフスタイルはそう変わらないのではないか。

 それより面白いと思ったのは。「婚活」に対する考えだ。購入派は「婚活に有利だと思った」人はわずか0.6%で、賃貸派も「独身時に住宅購入すると『婚活』の妨げになる」と考えている人が女性は12.9%に達し、全体で7.7%になっていることだ。

 この問題は、結婚意欲(願望)と一緒に考えるとなお興味深い。歳をとるごとに意欲(願望)が衰える(と言ったら失礼か)のは当然としても、「結婚の意欲」が「大いにある」の約28%、「少しある」の約37%をあわせると約64%の人が結婚に前向きだ。(設問が「大いにある」「少しある」「ほとんどない」「まったくない」と選択枝がわずか4項目しかないのも問題。恋愛は宅建試験と異なる。愛と憎しみは紙一重、年齢に関係なく100年の恋が一瞬にして憎悪に変わることもあるし、枯れ木に花が咲くこともある)

 いったいどうして住宅を購入することが「婚活」にマイナスに働くのか。理由がさっぱり分からない。記者はその逆だと思う。住宅購入をきっかけに結婚した単身女性が多いという話を記者は聞いている。「この先、結婚する可能性が低いと思ったから」と住宅を購入した人が約14%(特に女性は約19%)もいるが、この考え方は改めたほうがいい。自分のそして相手の必要条件、ハードルを下げると目からうろこのように展望は開けるものだ。

(牧田 司記者 2012年10月29日)