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大和ハウス 業界初 分譲並の遮音性能持つ賃貸仕様 標準化


「サイレントハイブリットスラブ 50」

 大和ハウス工業は10月22日、木造及び軽量鉄骨造の賃貸住宅では業界初となる遮音性能を実現した「サイレントハイブリットスラブ 50」を開発し、この仕様を搭載した屋外階段室型重層長屋タイプ賃貸住宅「セジュールウィット -KJ」「セジュールオッツ -KJ」、店舗併用型3階建賃貸住宅「アバンウェル ディッツォ -HV」を10月23日から発売すると発表した。販売エリアは当初は埼玉・神奈川県だが、2013年3月から全国展開する。

 「サイレントハイブリッドスラブ 50」は、軽量鉄骨造の躯体と高強度プレキャストコンクリートの床版を組み合わせた新たな高遮音床で、業界初となる遮音性能「LH-50」 (重量床衝撃音) 「LL-40」 (軽量床衝撃音) を実現した。

 記者発表会で挨拶した同社常務執行役員集合住宅事業推進部長・堀福次郎氏は「当社は2013年度を最終年度とする中期計画で売上高2兆円を掲げており、そのうち賃貸は約30%の6,100億円が目標。現段階で計画は順調に進捗しているが、更なる成長のためには市場が停滞気味なので他社との競合に勝ちシェアを伸ばすための新商品」と開発の経緯について語った。 

 従来商品は「LH65以上」「LL55以上」だった遮音等級はそれぞれ3ランクアップの分譲マンション仕様なみの「LH50以上」「LL40以上」に向上し、従来商品と比較して聞こえる音は3分の1程度に軽減されるとした。

 同社の賃貸住宅入居者アンケートでも、上下階の遮音性に対する「不満」「やや不満」を合わせると25%ぐらいに達しており、他の不満項目と比較してももっとも不満度が高いという。警視庁の平成23年度の統計でも、一般家庭・アパート・マンションなどのの苦情(110番通報)のうち約半数(16,426件中8,579件)が「人声音」であることも紹介した。

 「セジュールウィット -KJ」「セジュールオッツ -KJ」は業界で初めて屋外階段を採用した重層長屋タイプで、建基法や消防法の「避難通路の確保」「接道要件」が緩和されるのが特徴。坪単価は「セジュールウィット」が36万円から、「セジュールオッツ」が42万円から。販売目標は年間1,000棟。

 「アバンウェル ディッツォ -HV」は、これまで同社のメニューになかった30〜200uの小規模店舗に対応した商品で、1階がラーメン構造、2階、3階がパネル構造の賃貸住宅。一般的な重量鉄骨造と比較すると20%コストを削減できるという。坪単価は52万円から。販売目標は年間150棟。

  
「セジュールウィット -KJ」                        「セジュールオッツ -KJ」

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 堀常務は記者発表会の中で少なくとも6回は「業界初」と強調した。同社の従来商品はもちろん他社との比較でも遮音等級がはるかに高くなったことに対してだ。分譲仕様と比べあらゆる点で性能が劣る賃貸住宅の現状を記者は複雑な気持ちで聞いた。

 それでも質が向上するのはいいことだ。同社にはこれからも他の不満項目に対応した質の高い賃貸住宅を目指してほしいし、同業他社も負けないよう取り組んでほしい。分譲と肩を並べるのが理想だ。同社のアンケートの項目に基本的な住宅の質である「広さ」の項目はなかったのがやや気になった。


「アバンウェル ディッツォ -HV」

(牧田 司記者 2012年10月22日)