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埼玉県「子育て応援制度」 もっと中身のある制度に改善を

 

 

 埼玉県が全国に先駆けて「埼玉県子育て応援マンション認定制度」に引き続き「埼玉県子育て応援分譲住宅認定制度」を設けた。その第1号物件にポラスグループの戸建て団地が選定されたことは先に書いた。

 結構な制度だと思う。ただ、これまでマンションは2物件、戸建ては1物件しか認定されていない。その理由は、認定基準のハードルが高すぎるのか、あるいは認定のお墨付きをもらっても販売促進にそれほど結びつかないと判断したデベロッパーが申請しないからか。行政もこの制度を強力にPRし、デベロッパーは積極的に取組むべきだと思う。

 認定基準は、@子育てに資する一定の取組を実施していることA団地環境について、子育てに資する工夫及び整備を実施していることB構成する全ての住宅における工夫が子育てに資するものであることC子育てに適している立地にあること−の4項目がある。

 @は、延床面積や敷地面積の最低面積が定められ、土間スペースや子どもの様子が確認しやすい間取り、ホルムアルデヒド対策を施していることなどを求めている。Aは、地域コミュニティを育む取り組みや子ども参加型のイベント開催、子どもの見守り活動などの実施を求めている。Bは、子どもの成長にあわせ間取りが変更できること、建具による指の挟み込み防止、子どもの学習に活用できるブロードバンドに対応できる設備などを設けることを求めている。

 この@〜Bの基準のうち@とBについてはほとんどのデベロッパーが対応しているといえる。基準そのもののハードルは決して高くない。子育てや家族の絆をテーマにしないと売れない今の市場もある。

 Aのハードルが高いと考えるデベロッパーは論外だ。いじめの問題が社会問題化しているが、その背景には家族どうしのコミュニケーションの欠如があり、学校も教育委員会もいじめを根絶できないことが分かってきた。唯一、望みを託すことができるのは地域ではないか。家庭−学校−警察−町内会−商店街などが連携して濃密な地域のコミュニティを形成するのがいま求められているような気がする。デベロッパーはそのようなコミュニティ活動を支援すべきだと思うし、行政もそうした取り組みを顕彰することに価値がある。「子育て応援制度」の要諦はここにあると思う。住宅を購入する側もこのことを理解して欲しい。

 「認定制度」の基準で残念なのは、Cの子育て立地だ。団地から小学校への距離、教育施設の有無、公園・緑地の有無、病院・商店街、コンビにへの距離などそれぞれ6項目を1点から3点にランク付けし、合計12点以上を獲得することが基準となっている。例えば、団地から小学校への距離では400m未満が3点で、800m以上1,200m未満は1点。商店街から400m未満が3点で、800m以上1,200m未満は1点だ。

 確かに、学校や生活利便施設が団地の近くにあるのは便利ではあるが、これらの施設の有無、遠近だけで子育て立地環境を評価するのはいかがなものか。記者は自分が育った田舎の小学時代を採点したらわずか4〜5点にしかならなかった。雨が降ろうが雪が降ろうが、1時間以上かけて学校に通う同級生がたくさんいた。自然のままの山や川、田んぼや畑を「公園・緑地」として評価するならば、3の2乗、3乗の価値が十分あると考えられるのではないか。特に埼玉県には豊かな自然や歴史のある街並み、地域が数多く残されている。これらは貴重な財産であり、県のポテンシャルの高さを表している。

 教育施設や生活利便施設が乏しい、あるいは駅から遠いなどの立地条件の地域については各地域の特性にあった別の評価方法を導入することも検討して欲しい。行政、デベロッパー、地域、団地住民が一体となって良好なコミュニティを構築し、埼玉県が子育てしやすい都道府県の代表格となることを期待したい。

ポラス 「埼玉県子育て応援分譲住宅」認定1号 浦和で分譲(9/7)

(牧田 司記者 2012年9月11日)