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屋敷跡の歴史を継承する 野村不動産「プラウド中野本町」


「プラウド中野本町」完成予想図

 野村不動産「プラウド中野本町」を見学した。若い人は知らないだろうが、われわれの世代の人なら「あぁ、あの人か」と思い出す人の屋敷跡に建つ中層マンションで、既存樹のシダレザクラの老木やケヤキやクスなどの高木、庭石、石積みを残すなど、歴史を継承する優れたマンションだ。

 物件は、丸ノ内線中野坂上駅から徒歩6分、中野区本町二丁目の第一種中高層住居専用地域に位置する5階建て全78戸の規模。専有面積は57.93〜125.58u、坪単価は300万円台の前半。竣工予定は平成25年6月中旬。設計・施工は竹中工務店。デザイン監修は住空間研究所。

 現地は、青梅街道から一歩入った高級マンション・邸宅・屋敷などが点在する住宅地の一角。敷地面積は約1,000坪。工事中の仮囲いがあるが、既存樹の巨木が何本も植わっている。近くにも誰も住んでいないような石積みの屋敷が残っている。現地を見れば、誰もが住みたくなるような立地だ。

 モデルルームは同社のマンションギャラリー所長・梅原健吾氏の説明を聞きながら見たのだが、「この立地にふさわしい、いいものがほしい人に売ろう」という意思が込められていることがひしひしと伝わってきた。

 まず中庭に残されるシダレザクラの古木。樹齢は分からないが、施工する竹中が一度移植し、また中庭に戻したのだそうだが、今年の春には花を咲かせたという。7〜8mあるそうだ。中庭には水庭・竹林も設置される。

 建物はこの中庭を囲むように配されたロの字型で、2方道路の外周は生垣で囲われ、1階の専用庭には屋敷にあった影石を配置するという。庭園を造ろうということのようだ。

 こだわりは他にもまだある。エレベータがロの次の角にそれぞれ1基、つまり4基も設置されていることだ。これによって共用廊下は2〜3戸しか利用せず、あるいはまた専用のバルコニーにもなっている。先に91戸の傾斜地マンションに7基のエレベータが付いている末長組のマンションの記事を書いたが、こちらのマンションもまたすごい。

 外観・内装にもこだわりは見られる。外観の4層、5層のバルコニー天井裏には木調ルーバーが張り巡らされている。住戸のエントランスはタイル張りで壁は櫛引き仕上げ、天井は木調仕上げだ。住戸内でも水周りの床はバンブー調仕上げで、ドア・ドア枠も突き板に近い仕上げだ。キッチンはイタリア製で天板は御影石、巾木はドアと同じ木調仕上げだ。オプションだが、トイレの壁も木調仕上げだった。

 梅原氏は「一般の方は『中野坂上』は知るひとぞ知る街かもしれないが、われわれはこの屋敷跡を生かすためよい商品をつくった。この坪単価では都心の億ションのような仕様にするのは難しいが、平均居住面積を75uにして、サラリーマンの方なら手が届く商品にした。高さ規制が15メートルなので階高は3mだが、しっかりスラブ厚を25cm確保し、サッシ高も2000ミリ確保した。8月上旬に1期43戸の販売を行い、販売は好調という。

 こうしたこだわりが「プラウド」の価値を高めていくのだろう。サクラの移植は難しいことはよく聞く。水上勉の小説「櫻守」を思い出した。

(牧田 司記者 2012年8月27日)