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業界とユーザーを冒涜するアトラクターズ・ラボ

「格安マンションの転売」ビジネスやめるべき


セミナーへの参加を呼びかける「住まいサーフィン」のホームページ

 マンション購入者向け情報サイト「住まいサ〜フィン」を運営しているアトラクターズ・ラボの沖有人社長が6月7日の「住まいサ〜フィン」で、「『住まいサーフィン会員限定 事業パートナー説明会』のご案内」なる文書を公開した。記者は、この文書を読んでびっくりした。マンション業界とユーザーを冒涜するものだと思った。

 どういうものか。ホームページから要約すと、「格安の新築マンションを安く買って、転売する」目的で会費1万円の会員約300人を募り、会員がマンションの抽選に当たれば、報奨金として分譲価格の0.6%を支払うというものだ。抽選に当たらなくても足代として5,000円を支払うので、2回申し込めば「元が取れる」としている。

 「購入にかかるお金は一切不要」とのことだ。また、「抽選に通り易い方は、個人属性の良い(大手企業に勤める高年収な)方、もしくは、その奥方に向いています」とし、セミナー参加者には「当内容で知りえた情報については、決して第三者に口外しないよう」「守秘義務の徹底」をお願いしている。「このビジネスは、私がこれまでやってきたことの集大成でもあります」とも書いている。

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 記者は一度だけ批判的な記事を書いたことがあるが、このアトラクターズ・ラボも「住まいサーフィン」もよく知らない。ホームページには会員が15万人おり、同社が発する情報は多くのマスコミが取り上げている。仮に、実際の購入者が同社やあるいは沖社長個人であれば、継続して不動産売買をビジネスとして行うのだから宅建の免許が必要だとは考えるが、この文章だけでは法律を犯しているわけではないと思う。

 しかし、マンションの購入希望者が第三者を雇って契約できるとなどというのはありえない話だ。抽選に当たった人が分譲価格の0.6%の報奨金がもらえるなどというのは絵空事に過ぎない。同社は払うとしているので、払うのだろうか。

 この文書に仰天した記者は早速、大手デベロッパーに「マンション申込者と契約希望者が異なった場合どうするか」を問い合わせた。現段階では4社から回答があり、4社とも申込者と契約者が異なることはありえないとしている。

 ある広報担当者は「言語道断。業界とマンション需要者を愚弄するもの。われわれはお客様とマンツーマンでひざを付き合わせてしっかり話し合い、購入していただいている。こんなことがまかり通れば、当社も困るし、実際に購入したいお客さんにとっても迷惑な話」と怒りをあらわにした。

 同社の行おうとしていることを「代理申し込み」とすれば、マンション業界はバブル期に苦い経験をしている。「マンション転がし」という言葉が生まれたように、転売を意図した一部の不動産業者はホームレスを雇いマンションの申し込みをさせた。謝礼として5万円とか10万円を払ったところもあった。当時のマンション業界はダミーの申し込みを黙認していた。親戚や友人、知人を動員することを薦める雰囲気もあった。

 ところが、これが社会問題となり、マンション各社は申込者と契約者が異なる場合の契約をやめ、申し込み時に印鑑登録や所得証明書の提出を求めるようになった。前述したが、現在も申込者と実際の購入者が異なる場合は、大手でない普通のデベロッパーも契約を受けつけないはずだ。

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 同社がやろうとしている「ビジネス」は、まさにあのバブル期の愚行そのものだ。申込者と契約者が同一でないとマンションを購入できないことはマンション購入の情報を発信している同社なら分かるはずだが、「当内容で知りえた情報については、決して第三者に口外しないよう」「守秘義務の徹底」とあるように、できないことをできる裏技を同社は持っているのだろうか。

 もう一つ、いいたいことがある。「格安マンションが100棟に1棟程度の確率ででる」という文言だ。同社が「格安」と言っても問題はないのかもしれないが、首都圏不動産公正取引協議会(公取協)の規約では「格安」の文言は誇大広告として使用が禁止されている。会費を払った一部の会員に限定し「守秘義務」を課すのだろうが、15万人の会員を擁す同社が「格安」と断定し、情報を発信するのはマッチポンプ≠フようで醜い。

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 記者は本日(6月8日)、同社に真意をただし、このようなことをやめるよう取材を申し込んだが、「責任者(沖社長)は終日予定が入っており、日を改めてもこの問題について取材は受けない」としている。

 もう一度言う。健全なマンション市場をかく乱するバカなことはやめるべきだ。せっかく築いてきたこの種の情報サイトの信頼を根底から覆すことにもなりかねない。「住まいサーフィン」のホームページにはマンションの広告も掲載されていた。デベロッパーも痛くもない腹を探られるようで迷惑ではないだろうか。

アトラクターズ・ラボ「住み心地ランキング」調査に思う(2010/11/22)

(牧田 司記者 2012年6月8日)