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国交省 マンション「第三者管理」規約で認める方向へ

第5回「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」
 

 国土交通省は5月22日、第5回目の「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」(座長:福井秀夫政策研究大学教授)を開き、業務執行のチェック体制を整えることや利益相反取引の防止、区分所有者の財産毀損の防止措置を講じた上で、自主管理の継続が困難になったマンションなどについては「オプションの一つ」として「第三者管理方式」を採用し、マンション標準管理規約に盛り込む素案をまとめる方向を打ち出した。しかし、一部の専門委員からは「マンション管理会社など第三者が管理者(理事長)に就任することはありえない」とする意見もあり、どのようにまとまるかは流動的だ。

 「第三者管理」については、これまでの4回の検討会でもその是非をめぐって活発な論議が交わされてきたが、小規模の高経年マンションには役員のなり手がなく、管理費の滞納や修繕積立金の不足などから「機能不全」を起こしているものも少なくない事態を放置できないとして、専門家の活用は必要という意見にまとまった。

 しかし、 川田邦則専門委員(大京アステージ取締役 )は「理事会方式の代替策としていろいろなバリエーションがあっていいと思うが、管理会社が役員(管理者)に就任することはあってはならない」と反対した。また、 村辻義信委員(弁護士) も「専門家の活用は必要だが、きめ細かな対応をとるべきで、区分所有者の利益、財産を守れるかどうかがベースとなる。利益相反などをチェックする機能が必要」と、第三者管理の採用には厳しい条件をつけることを主張した。

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 現行の「マンション標準管理規約」では、理事長(=管理者)は区分所有者に限定されているが、区分所有法では「(選任及び解任) 第二十五条 区分所有者は、規約に別段の定めがない限り集会の決議によつて、管理者を選任し、又は解任することができる」とあるのみで、管理者は区分所有者に特定されていない。

 「検討会」専門委員の法務省民事局参事官室局付・遠藤啓佑氏も「区分所有法では管理者の資格要件は記載がないので、第三者が管理者に就任することは可能。ただし、論議されている利益相反などの問題をどうするかの課題はある」と話している。

 記者は、区分所有法の第三条では「区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる」としているので、当然、管理者とは区分所有者と理解するのが正しいと思うがどうだろう。管理者は総会の召集権のほか総会決議によって原告や被告となることができると定められており、絶大な権限が与えられている。

 仮定の話だが、場合によっては区分所有者と管理者が告訴合戦を展開することも十分ありうる。総会決議で解任などされれば、マンション管理士などの専門家は立場を失うから、逆告訴する事態になるのは目に見えている。また、いつ解任されるかも分からないような管理者のリスクを考えると、安い報酬で「機能不全」を起こしているようなマンションの管理者を引き受ける専門家などいないのではないか。さらに言えば、「機能不全」などのレッテルを貼られたマンションはまず流通しない。資産価値としては限りなくゼロに近づく。

 この点については、専門家の意見を聞く予定だ。

国交省 マンション管理検討会 的外れの安藤委員の主張(4/10)

(牧田 司記者 2012年5月23日)