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東京都住宅供給公社(JKK)の建て替え賃貸「久我山」

3日間で来場1000組超 申し込みは2倍


「コーシャハイム久我山」

 東京都住宅供給公社(JKK)が5月11日から募集開始した建て替え賃貸住宅「コーシャハイム久我山」を見学した。オープンルームを公開して3日間で1,010組の来場があり、募集149戸に対して約2倍の申し込みが入った。さすがJKKというべきか、信じられない人気だ。

 物件は、 京王井の頭線久我山駅から徒歩11分、世田谷区北烏山二丁目に位置する敷地面積約15,000uの大規模団地。今回募集する4〜10階建て3棟全263戸のうち149戸で、募集対象外の住戸は従前の入居者が入居する予定。専用面積は34.91u(1DK)〜71.39u(3LDK) 、月額家賃は93,500円〜174,600円、 1坪当たり家賃は平均9,000円弱。募集期間は平成24年5月11日〜20日、入居予定は平成24年6月下旬。戻り入居が完了した後、隣接する住宅を取り壊し、2期として96戸の賃貸住宅を建設することになっている。

 案内してもらった同公社募集課課長・多田徹氏と同公社住宅計画課課長・赤塚慎一氏の話を聞いて驚いた。オープンルームを公開してまだ3日間しかないが、来場者は1,010組に達し、申し込み倍率は2倍に上っているという。5倍の子育て世帯倍率優遇を含めるとほとんどのタイプが1倍以上で、10倍を突破しているタイプもある。

 両氏によると、応募倍率は一昨年に募集した板橋区の「コーシャハイム向原」(全293戸のうち募集戸数は95戸)の平均約13倍というのが最近ではもっとも高いという。今回は募集戸数が多く「向原」の倍率を超えるのは微妙だが、「平均で6〜7倍にはなるのではないか」(多田氏)とのことだった。

 また、赤塚氏は「建具・面材はともかく、基本性能などは次世代省エネ基準を満たしており、超節水型トイレ、エネルックリモコン、複層ガラス、防犯ガラスなどを装備している。億ションにも負けない」と胸を張った。「今年度はもう新規供給はないが、来年度はいよいよサービス付き高齢者住宅向け住宅を含め複数の新規物件を供給する」とも語った。

 オープンルームを見学したという大泉学園に住む30歳代の子育てサラリーマン夫婦は、「今住んでいる賃貸がそろそろ更新期に入るし、2人目の子どもも11月に生まれる予定。53uの住戸を申し込む予定だか、家賃(13万〜17万円)は民間と比べ安いし、設備もいい。マンションの購入? 実家が近くにあるので所有するメリットはない」と話していた。

   
布団も楽に収納できる押入れ             車椅子でも利用できるキッチン  

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 赤塚氏の「億ションに負けない」というのはともかく、いかにも公社らいし商品企画であるのは確かだ。共用部分、専用部分はバリアフリー仕様になっており、エントランス・エレベータホールには誘導点字ブロックが設置されていたし、住戸の玄関・トイレなどのドアや廊下の幅も民間のそれより広い。車椅子でも利用可能の引き戸を採用したトイレが付いている住戸や、1階には車椅子利用に配慮した住戸も1戸だが用意されていた。布団が楽に収納できる押入れもあった。

     
   2期工事が予定されている賃貸住棟                     建替え後の今回募集住棟

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 バブル崩壊後、公的機関はほとんどすべてが分譲事業から撤退し、賃貸住宅事業も新規に用地を取得して建設するところは少なく、建て替え事業などに特化している。多大な借金から経営が破綻した公社も少なくないのが現状だ。都公社も10年前に多摩ニュータウンで7割引≠フ分譲マンションを分譲したのを最後に分譲事業から撤退してしまった。現在、継続して分譲事業を行っているのは横浜市や川崎市の公社ぐらいだ。

 事業を行うにも重い足かせが課されている。例えば「地方住宅供給公社法施行規則」第十六条には「賃貸住宅を新たに賃借する者の家賃は、近傍同種の住宅の家賃と均衡を失しないよう、地方公社が定める。2  地方公社は、賃貸住宅の家賃を変更しようとする場合においては、近傍同種の住宅の家賃、変更前の家賃、経済事情の変動等を総合的に勘案して定めるものとする。この場合において、変更後の家賃は、近傍同種の住宅の家賃を上回らないように定めるものとする」とある。

 つまり、民間家賃を上回ってはいけないが、なるべく民間家賃に近づけるようにしなさいという規定だ。

 果たして、そこまで規制する必要があるのか。東京都公社は約62,000戸の賃貸住宅を管理しているという。その入居者のニーズは分譲にも賃貸にも生かせる。公社の自由裁量に任せ、また、民間と組めばすばらしい住宅が供給できるはずだ。今回の「久我山」を見学してつくづくそう思った。  

(牧田 司記者 2012年5月15日)