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 三井不動産グループ 他社と差を広げる戦略

「三井のすまいモール」「三井のすまいLOOP」


「三井のすまいモール」が入居する目黒駅前ビル

 三井不動産は4月12日、「すまいとくらし」選びにワンストップで対応する「三井のすまいモール」と、様々なサービスを提供する「三井のすまい LOOP 」を開始した。2012年度〜2017年度の中長期経営計画「イノベーション 2017」を策定しスタートさせたが、その具体的取組の一つ。

 「三井のすまいモール」は、住まい探しのニーズが多様化していることを踏まえ、グループ各社が連携することで「新築・中古」「所有・賃貸」「建替え・リフォーム」などなど様々なニーズに総合的なソリューションをワンストップで提供しようというもの。同社グループの住宅会社5社(三井不動産レジデンシャル、三井不動産リアルティ、三井ホーム、三井不動産リフォーム、レジデントファースト)の営業拠点と「すまいとくらしの体感コーナー」などで構成されている。「総合デスク」は、住宅販売などで所長を経験しているベテランの営業マンが対応する。

 第1号店の「三井のすまいモール目黒」は、JR目黒駅前の「目黒ヒルトップウォーク」5階。店舗面積は約200坪。スタッフは三井不動産リアルティ(三井のリハウス)の約30人を中心に約70名。1号店に続き、「横浜」「武蔵小杉」など複数の店舗を開設していく予定。

 「三井のすまいLOOP」は、お客様との関係が輪のように繋がり拡がっていくプラットフォームになるという想いを込めてネーミングされたもので、家具、雑貨、家電からリフォーム、さらにはレストラン、ホテルなどの優待サービスなどが受けられる。グループが提供・管理するマンションと戸建のうち、グループが指定した物件に住んでいる首都圏約23万世帯が対象となる。

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 すごいサービスを始めた。新築だろうが中古だろうが、所有だろうが賃貸だろうが、建て替えだろうがリフォームだろうが、すべてを1カ所の店舗で対応するというのは業界初だ。同じようなサービスはナイスが一部行っているがスケールが違う。住友不動産は新規マンション販売の拠点を5カ所に設置したが、あくまでも新築の販売拠点だ。

 三井不動産レジデンシャルは昨年あたりから、転倒防止金具付きマンションやパークホームズのモデル一新、サステナブル・コミュニティ研究会の立ち上げなどを打ち出しており、三井不動産販売も4月から三井不動産リアルティに社名を変更するなど動きを活発化させている。同業他社に圧倒的な差をつけようという戦略だろう。

 「三井のすまいLOOP」もこれまたすごい。メンバー・シップサービスには「スペシャル・メニュー」が用意されており、帝国ホテルや三井ガーデンホテルなどのホテルの宿泊優待や、2名以上で利用した場合、何度でも1名が無料となるレストランサービスが受けられる。

 例えば、指定されたレストランのディナーを夫婦で注文した場合、2万円が1万円に、1万円が5,000円になる。一流レストランの半額サービスは富裕層向けの会員制ではあるようだが、一般化はしていないはずだ。現在、20店舗弱の半額サービスが受けられる。いくつか店舗名を聞いたが、ディナーであれば最低でも1万円、平均で2〜3万円のコースではないか。飲料の10%サービスもあるようだ。店舗名はこれから口コミや掲示板などで知られることになりそうで、三井のマンション、戸建てを買っとけばよかった …と思う人はたくさんでてくるはずだ。

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 一つ、注文するとすれば、せっかく「ワンストップ」「トータルソリューション」を掲げるのであれば、「1カ所」でのワンストップではなく、「一人での」ワンストップを目指してほしい。

 これまで住宅の販売現場や仲介の営業マンにたくさん取材してきた。もちろんすばらいし人もこの業界にはいる。しかし、どちらかといえば、新築担当の営業マンは中古のことに疎く、逆に仲介の営業マンは新築の市場を全然把握していない人もいる。

 これでは本物のプロとは言いがたい。新築はやがては中古市場に出回る。新築担当者は、その物件が中古市場でどのような評価を受けるのかを予測できなければだめだろうし、仲介の営業マンが新築を知らなければ、そのときどきのニーズを把握していないということになる。

 「三井のすまいモール」の担当者がプロ中のプロ≠ニして評価されることを願いたい。他社も負けないようにしてほしい。


「三井のすまいモール」エントランス

(牧田 司記者 2012年4月12日)