RBA HOME> RBAタイムズHOME >2012年 >

三井ホームの “ 木造耐火4階建住宅 ” を見学


「MULTIS-4( マルティス フォー )」外観

 三井ホームのツーバイフォー工法による “ 木造耐火4階建住宅 ” 「MULTIS-4( マルティス フォー )」モデルハウスを見学した。

 同社が昨年9月、練馬区の「練馬ICハウジングギャラリー」にオープンしたものだ。延べ床面積は約374u。店舗併用の2世帯住宅を想定したもので、1階は店舗(ケーキ屋)とSOHOスペース、2階と3階が子世帯ゾーン、4階が平屋として使える親世帯ゾーンだ。もちろん1〜4階までは階段室・ホームエレベータが完備されており、2階と3階は螺旋階段が付いている。階段の幅は1.5mぐらいあり、かなり豪華な住宅だ。

◇    ◆    ◇

 見学の目的はこれからの取材に生かすためだ。森林・林業再生は待ったなしだ。三井不動産の菰田正信社長は今年の年頭所感で「国内の農林漁業の再生など、これまで先送りにされてきた構造的な問題にも取り組むことが求められる」と語った。

 住宅・不動産業界の社長が年頭所感で農林漁業の再生に触れたのは、記者は今回の菰田社長しか知らない。画期的なことだと思う。都市問題は農林漁業問題と不可分だ。業界は、わが国の木材自給率を現在の20%台から2020年までに50%に引き上げようという国の再生プランの実現に向けて取り組まなければならない。

 木造の4階建てを実際に見ることが不可欠だと思うし、今後の取材にも生きるはずだ。

◇    ◆    ◇

 モデルハウスを見学して、最初に思ったのは外観が鉄骨造やRC造とあまり変わりなく、「これが木造か」だった。外観を見た限りでは、切妻屋根が採用されていることぐらいで、外壁はサイディングや吹き付けだった。内装も他の工法とそれほど変わらないと思った。

 外観も内装も他の工法とあまり変わらないのは、やはり規制が厳しいということのようだ。

 同社のモデルハウスは大都市の商業地域などの防火地域での建設を想定しており、当然ながら「高さが13メートル又は軒の高さが9メートルを超える建築物」は主要構造部を耐火構造にしなければならないと定めた建築基準法21条や、「防火地域内においては、階数が三以上であり、又は延べ面積が百平方メートルを超える建築物は耐火建築物」としなければならない同法61条などの規制をクリアしなければならないからだ。

◇    ◆    ◇

 この規制はよく分かる。わが国の木と紙と土でできていた。火災にはひとたまりもない。都市の不燃化は避けられない。

 東京都の火災について調べた。平成22年度の火災件数は5,088件、自損を除いた死者の数は89人で、平成13年度の火災件数6,933件、死者の数109人と比べ、それぞれ26.6%、18.3%減少した。火災による焼損床面積は、平成21年度で見ると30,679uで、火災1件当たりにすると約5.5uだ。火災原因は放火やタバコが多い。

 交通事故と比較すると、平成23年度の東京都は51,669件、死者の数は215人だから、件数は10分の1以下、死者の数は半分以下だ。また、統計のとり方が異なるので単純比較はできないが、ロンドンやニューヨークなどと比べると火災件数は10分の1以下だという。

 火災が多いのか少ないのか、その判断材料はないが、1件当たりの焼損面積はわずか約1.7坪だ。不燃化規制は効果を上げ、消防力も向上していると見ることができるのではないか。

 こうした数値を見ると、大規模事務所ビルやマンションなどの防火対策は必要だが、住宅に関しては規制を緩和してもいいのではないかと思う。東日本大震災で世界最強といわれた防潮堤が破壊されたことを受けて、識者は「防災」から「減災」に方向転換した。火災についても同じような考えはできないのか。火災そのものは木造だろうが鉄骨だろうが RC だろうが防げない。コストを抑え、被害を最小限に抑えることのほうが大事ではないか。

 三井ホームのモデルハウスには何と 1 フロアに防火戸が3カ所設置されていた。外壁に面した開口部には防火戸を設置しなければならない規制があるからだが、設置費用は資材だけで数十万円はかかるはずだ。

◇    ◆    ◇

 林野庁は、平成24年度予算要求に「日本を森林で元気にする国民運動総合対策事業」として1億2,000万円を盛り込んだ。森林整備の推進や地域材などの森林資源の利用を拡大するための国民運動を展開するためだ。森林づくり活動への年間延べ参加者数を120万人(平成21年度末)から平成24年度末までに170万人に増やし、「木づかい運動」への参加団体数を277団体(平成22年度末)から平成27年度末までに400団体に増やすという。

 わずか1億円強の予算で何ができるのかという疑問もわくが、記者も昨年以上に森林・林業再生の取材を行なっていきたい。

   
2〜3階吹き抜け部分(左)と2階リビング

(牧田 司記者 2012年1月17日)