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三井不動産レジデンシャル サステナブル・コミュニティ研究会発足

 三井不動産レジデンシャルは3月28日、昨年7月に発足させた「サステナブル・コミュニティ研究会」の研究成果の発表をかねたセミナー「コミュニティの力で未来を拓く〜集合住宅からのサステナブル。コミュニティづくり〜」を開いた。約140名が参加した。

 「サステナブル・コミュニティ研究会」は、時間の経過とともに建物や緑、コミュニティがその価値を高め優化していくという同社の「経年優化」の事業理念をさらに発展させるには、共助、互助、地域住民との連携など持続可能な地域をつっていく「サステナブル・コミュニティ」がより重要なテーマと考え発足させたもの。プロジェクトメンバーには同社と三井不動産住宅サービスのほか、杉浦環境プロジェクト、プレック研究所、博報堂、博報堂 DY メディアパートナーズの外部団体と、7名からなるアドバイザリーボードで構成している。

 アドバイザリーボードは、秋山弘子・東大 高齢社会総合研究機構教授、浅見泰司・東大 空間情報科学研究センター教授、大和田順子・ロハス・ビジネス・アライアンス共同代表、齊藤広子・明海大地域環境学部教授、濱野周泰・東京農大地域環境科学部教授、広井良典・千葉大法経学部教授。

 セミナーでは一部しか公表されなかったが、コミュニティにとって重要と思われる「36の要素」と「143項目」の指標が示された。

 今後、指標はさらにブラッシュアップし、新築マンションの商品企画に生かしたり、入居挨拶会(仮称)などを実施していくほか、既存マンションに対しても管理支援策などを提案していくとしている。

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 セミナーでは、真野洋介・東京工大大学院社会理工学研究科准教授が阪神淡路や東日本大震災での具体的事例を紹介しながら「いざというときを支える助け合いコミュニティ=vと題する基調講演を行ったほか、川路武・三井不動産レジデンシャル開発事業本部 商品企画室商品企画グループ兼総務部環境推進グループ主査と、嶋田俊平・プレック研究所持続可能研究センター主査が、サステナブル・コミュニティ研究会の活動を報告した。

 また、杉浦正吾・杉浦環境プロジェクト代表取締役をモデレータに、真野氏、齊藤氏、秋山氏、大和田氏、博報堂DYメディアパートナーズ ビジネス開発推進局 環境コミュニケーション部部長をパネリストとするパネルディスカッションを行った。

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 記者はマンションに30年以上住んでいる。達した結論は、財産管理をする管理とコミュニティ(自治会)が車の両輪のように機能して初めて快適な共同生活ができるというものだ。

 しかし、デベロッパーも管理会社もコミュニティ形成にはほとんど無関心、無頓着だったし、はっきりいえばその逆だ。早く売って「事業離れ」することを最優先に考えてきた。クレームの多発を恐れるあまり、「ペット不可」をはじめ、共用部分には事細かな禁止条項を盛り込んだ。デベロッパーだけの責任ではないが、個人情報保護に過剰に反応し「近所づきあい」を遮断してきた。

 今でこそ「ペット可」は当たり前になったが、これもバブル崩壊でマンションが売れなくなったため販促の手段として採用しだしたのが実態だ。川路氏は自ら住むマンションの例として、子どもがボール投げをしていて駐車場の車に傷をつけたことから駐車場付近の遊びを禁止し、さらには共用部分での子どもの遊びを禁止したことを報告した。「窓を開けるとうるさい」「料理の臭いがする」「エントランスを歩く音がうるさい」などと同じだ。こんなことをしていれば、誰もマンションなどに住まなくなる。記者は、マンションのクレームは、そのほとんどがコミュニティの欠如によるものだと思っている。

 その意味で、今回の同社の取り組みは遅きに失したといえなくもないが、これがマンションデベロッパーの現状ということからすれば「よくぞやった」とも思う。

 残念なのは、せっかくの「146項目」の指標は同社だけの指標で、指標をオープン化して同業他社と歩調をあわせる動きにはないことだ。基本性能や設備仕様と異なり、コミュニティは歩調が合わせられると思うがどうだろう。

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 セミナーでは、指標は供給する側と入居者側ではとらえ方が異なり、場合によっては対立することもあるのではないかという声もあがった。

 確かに「ほっといてくれ」「隣同士でかかわりたくない」「理事会の活動などやりたくない」などの声はマンション居住者には少なくない。しかし、今回の震災は、否応なく隣近所や地域とかかわらないと生きていけないことを教えてくれた。そもそも供給サイドに偏った指標など長続きするはずがない。仮に間違っていたら修正すればよい。必ず一致点は見つかるはずだ。

 パネルディスカッションでは、女性陣が存在感をアピールした。まず秋山氏。秋山氏は「仮設住宅はみんな同じ方向に向いて建てられるが、それじゃ隣近所づきあいが難しい。そこで玄関が向かい合うように建て、通路にウッドデッキを敷いたら子ともも含めみんな集まるようになった」と話した。なるほどとも思ったが、仮の住まいの仮設だからできることで、マンションで玄関が向き合うよう配棟したらどうなるかと思い、本人に聞いた。秋山氏は60歳になってマンションに住むようになったそうで、「陽が当たりすぎたりして、みんな南向きは嫌でしょ。だから私は東向きを買った」と語った。 「……」 

 指標があるかどうかは分からないが、玄関が向き合うマンションのコミュニティの指標は高いのか低いのか。あっても三井不動産レジデンシャルはそんなマンションを建てる勇気はないはずだ。

 また、「ロハス」を日本で最初に紹介したという大和田氏は淡いモスグリーンの和服で登壇して会場を沸かし、齊藤氏は「私は浦安に住んでいるが、マンションは強かったということが建物が強かったという意味だけではなく、現場にすぐ駆けつけるオンサイトサポートが機能し、みんなで合意形成を図るという意味でも強かった」と、極めて簡潔、的確に震災に強いマンションの特性を述べた。

(牧田 司記者 2012年3月29日)