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第23回RBA野球大会 

ミスターRBA 東急リバブル岡住へ 枯れ木になるまで戦え


引退を表明した東急リバブル岡住

 拝啓 ミスターRBA、東急リバブル岡住殿 ご結婚おめでとうございます。心からお祝い申し上げます。過去形で記さざるを得ないのはとても残念ですが、貴殿がいかに類まれな選手であったかは貴殿はいざ知らず、関係者がみな認めるところです。容貌は十人並とはいえ、力があり、身長も190センチ近くありながら、どうして結婚できないのか心を痛めておりました。実家が食堂のため1日5食も食事を取ったそうで、「それでは家計が持たない」と女性に敬遠されたのかもしれませんが、「卵かけご飯だろうと納豆だろうと何でも食べる」そうだから、それほど食事代がかかるわけではなく、そのほかに何の理由があるのか不思議に思っておりました。

 而立どころか不惑を過ぎての結婚生活がどのようなものになるか、不惑を過ぎたあたりから人生の深淵を経験した私には想像しかねますが、きっと奥様が素晴らしい方だろうと推察いたします。

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 さて、前書きが長くなってしまった。以下、敬称は略す。野球の記事にわざわざ「様」だとか「殿」ではさま≠ノならない。言いたいのはこれからだ。

 岡住が「体力を理由に現役を引退する」と表明したのには驚いた。引退の理由が「結婚」であれば、それはそれで分からないではない。女性というものは、答えようがない無理難題を押し付けるものだ。曰く「私を取るか野球を取るか」 

 ここは面従腹背の手もある。許しが出るまで機を待てばいい。

 そうでなくて、本当に体力の衰えを理由に引退するのであれば「それは間違い」といわざるを得ない。かっこよすぎるではないか。長島でも王でもない。小学生並の返球しか出来ない金本だって自分から現役引退を言わないではないか。記者は、次々と球団を渡り歩いたかすみそう≠フ野村さんが好きだし、現役継続にこだわった元西武の工藤のプロ根性を称えたい。「ジプシー後藤」と呼ばれた後藤修氏は8球団を渡り歩いた。これこそプロ根性だ。

 プロですらこうだ。職業野球人たるものは監督から見放されようがナインから馬鹿にされようが他チームから嘲笑されようが、枯れ木のようになるまで続けるべきだと思う。ミサワの鉄人大野やリハウスの怪物平賀を見てほしい。ともに2〜3年すれば50歳だ。それでも大野の投球は20歳代のように若々しいし、平賀の守備は絶品だ。

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 岡住を知らない関係者のために少し紹介する。記者は岡住がデビューして20年間見てきた。あの放物線を描くホームランは田淵かおかわり君のように美しかった。通算本塁打の数は同年代のナイス芦沢に譲るかもしれないが、三冠王の記録は燦然と輝く。旭化成ホームズが強くなりだしたころ、リバブルに勝てばドームという試合で、その旭化成ホームズの野望を打ち砕く本塁打を放ったのをよく覚えている。当時の旭化成ホームズの堀井監督は、いまでもその話を持ち出す。

 あれは何年前か。10年ぐらい前だったろうか。「俺、初めて見逃し三振した」と語ったことがある。デビューして10年間も見逃し三振をしないほど岡住は選球眼もよかったということだ。足も速かった。2盗、3盗して失敗したのを見たことがない。

 岡住ほどの選手はもう出ないかもしれない。現役では旭化成ホームズの北寒寺が同じレベルだと思うが、彼は1番打者だ。打点を稼ぐのは難しいし、もともとホームランバッターではない。

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 岡住は確かに衰えた。歳には勝てないということか。昨年などはさっぱり打てず打率1割ぐらいまで落ち込んだ。今年は4番の座も奪われた。しかし、1番に定着したとたん、前半戦では13打数7安打、打率 .538の高率を残した。他の選手と比較してもまだまだやれる。住友林業の近藤や鈴木のように歳を重ねるごとにバッティングがうまくなる可能性もある。

 「自分のバッティングが出来ない」もどかしさはよく理解できるし、「打てなくなったら終わり」という美学≠熾ェかる。10年ぐらい前か、自らも登板し、三井リハウスに7〜8点差を覆され逆転サヨナラ負けしたシーンだった。岡住は試合後「申し訳ない」とナインの中で泣き崩れた。記者は20年のRBAの取材の中で、誰はばかることなく号泣した選手は岡住以外に見たことがない。「僕は野球に人生をかけている」と語ったほど夢中になれるからこその涙だ。人はその純粋さに感動する。

 しかし、打てなくなろうが走れなくなろうがチームの勝利に貢献する方法はいくらでもある気がする。いい例が旭化成ホームズのかつての主砲の最年長杉本だ。40の半ばだろうと思うが、毎試合のように登録選手に名を連ねている。出番はほとんどなくなった。それでも鈴木監督は大量点を奪ったときなどは、代打に杉本を起用する。旭化成ホームズの強さはこんなところにもあると記者は見ている。

 長くやればいいこともある見本を紹介しよう。菱重エステートの藤井だ。歳は分からないが40歳を超えたのではないか。藤井は今年、6連続四死球のおそらく大会記録と思われる記録を残した。かつての星陵の松井ではない。身長が低く、打てない守れない打者だ。藤井が安打を放ったのはほとんど記憶にない。最近はせいぜい9番で、先発から外れることも多い。その藤井がとてつもない記録を残した。だから野球は面白い。

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 勤務シフトが変わり、水曜が定休でなくなったのも引退の理由の一つだろう。こればっかりはなんともいえない。サラリーマンである以上、勤務が変わるのは仕方がないことだ。しかし、それでも岡住は現役を引退してはならない。仕事で立派な結果を残せば、会社も「有休」を認めてくれるのではないか。それも無理なら日曜の東急不動産への移籍はどうか。RBAのルールでは可能なはずだ。

 ナインは署名を集めて留意するそうだが、来シーズンもユニフォーム姿で登場する岡住の姿をきっと見られると信じている。

 かくいう記者も枯れ木になるまでRBA野球を取材することにしている。久米信廣・大会委員長も「死ぬまでやれ」といってくれている。記者の夢は、RBAの選手が本業でも結果を残し一人でも多くリーダーになってくれるのを見届けることだ。


ユニフォームを脱いで古屋主将に返す岡住

(牧田 司 記者2011年9月27日)