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不動産流通研究所「R.E.port(アールイーポート)」記事を読んで

「マンションの概念変えた『グランフロント大阪オーナーズタワー』」

 不動産流通研究所の不動産ニュースサイト「R.E.port(アールイーポート)」の「ホテルから発想した住まい マンションの概念変えた『グランフロント大阪オーナーズタワー』」と題する現地・モデルルームレポート記事を興味深く読んだ。

 物件は、事業者の積水ハウスなどがニュースリリースを発表しているし、この記事を読んでいただきたい。再開発が進む大阪駅前の48階建て525戸のマンションだが、「ホテルライクなマンション」というより「ホテルをマンションにした」物件のようだ。

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 記者は2年前、大阪に取材に出かけたとき、現地を見て「どんなマンションなら売れるだろう」と考えたことがある。関西圏のマンション市場については全く分からないが、東京なら東京駅や大手町、丸の内、日本橋に建つマンションだろうと考え、相場は東京の半値とはじき、坪単価300〜400万円と想定した(今回のマンションもこれぐらいだろう)。

 まず、子育てファミリーは無理と判断した。しかし、大阪にビジネスの拠点があり、京都、奈良、芦屋あたりの郊外の高級住宅街に住む富裕層・経営者がマルハビ的な生活する拠点としてのニーズはあると思ったし、大阪に出張が多い東京や地方に住む経営者の食指をそそるとも考えた。少数派だろうが、単身者・DINKSのニーズもあると考えた。

 賃貸として貸すことも考えたが、ニーズはあっても利回りはそれほど高くなりそうもないので難しいと考えた。しかし、賃料を坪15,000円(そんなにしないか)と設定すれば、5%ぐらいで回るとはじいた。

 富裕層や経営者のニーズを満たすには、ホテルにはない居住空間と設備仕様、 SOHO 、サービスアパートメント機能を盛り込んだサービスを提供すべきだろうと考えた。それがホテルライクなサービスだった。 

 ホテルの難点は、当然のことだが、自由に使えそうで使えないことだ。チェックイン、チェックアウトがあるし、第三者を勝手に部屋に入れられない。約款に違反すれば違約金を徴収される。

 もう一つは、セキュリティ、プライバシーの問題だ。ホテルの出入りはまったくといっていいほどチェックがない。防犯カメラはあるだろうが、廊下は道路と同じだし、周囲の部屋にどのような人が宿泊しているかまったく分からない。

 遮音性能も、ホテルによって異なるので一概には言えないが、総じてマンションと比べて劣る。廊下を歩く音はドアの隙間から筒抜けだし、浴室のパイプスペースや隣り合う住戸の壁から音が聞こえてくる。

 少人数の会議も難しい。部屋に呼ぶにしては狭すぎるし、ベッドがデンと据えられている部屋に女性秘書など呼べない。セクハラで訴えられかねない。会議室は利用できるが、これも申し込まなければならないし面倒だ。

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 不動産流通研究所の記事は、その意味でも納得だ。「ホテルライク」どころかホテルをそのままマンションにした企画は受け入れられるのではないか。先に完成した「THE ROPPONGI TOKYO」もコンセプトはそれに近い。

 ただ、戸数が多いから完売までは時間がかかるのではないか。大阪府が大阪都になったところで、ポテンシャルが劇的にアップするとは思えない。

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 玄関ドアもホテルそのものの内開きというのも面白い。玄関ドアは消防法その他の規制で通常は外開きとなるが、例外的に内開きも認められる。東京でもリクルートコスモス(現コスモスイニシア)だったと思うが、千代田区のマンションで採用したのを記憶している。

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 一方で、よく分からない問題もある。管理組合だ。セキュリティは3重4重にガードされるだろうが、自分が区分所有者であることを知られたくない人、あるいは組合活動にかかわりたくないという人ばかりだろうから、理事はどうして選出するのか、果たして組合運営は円滑に進められるのかという疑問も沸く。

 入居者同士で異業種交流が行われ、思わぬビジネスチャンスをつかむことも考えられないではないが、まずありえないことだろう。組合員・入居者の名簿が外部に流失しないよう管理できるのか、貧乏人の余計なお世話かもしれないが、気になる。

不動産流通研究所「R.E.port(アールイーポート)」 「ホテルから発想した住まい」

(牧田 司記者 2011年12月2日)