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住宅金融支援機構 久々の記者懇親会で思ったこと

 住宅金融支援機構は11月15日、プレスセミナー・記者懇親会を開いた。記者懇親会は19年以降行なわれておらず、4年ぶりの開催だ。

 セミナーでは冒頭に宍戸信哉理事長が挨拶に立ち、プレスセミナー・懇親会の主旨について「一つは震災復興の現状と対応について、二つ目はフラット35Sについて、三つ目は欧州、アメリカの金融・住宅ローンの現状についてグローバルな視点で知っていただくこと」と述べた。フラット35については、「民間の住宅ローンと競合するのではといった誤解が一部にあるが、フラット35の長期固定と民間の短期変動の商品をお客さんに提供して選んでいただくことが大切で、機構のフラット35は民間では対象にならない階層のニーズに応えるのが機構の使命」などと語った。

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 記者も久しぶりに懇親会に出席した。こんなことを言っては失礼だが、懇親会に出されたお酒やつまみ・オードブルが現在の機構の現状を端的に物語っていたと思った。記者の記憶している懇親会にはビールだけでなく日本酒、ワインなども出され、豪華な料理・つまみが用意されていた。しかし、今回はよく冷えていないビールと、安い焼酎の水割り・ロックしかなく、つまみ類もサンドイッチ、から揚げ、その他コンビで売っているようなものばかりだった。

 毎年、国から多額の補給金を受けており、既往債権のデフォルトが少なくない現状からすれば質素なのはよく分かるが、優良債権ともいえる住宅ローンの買取債権残高が約32兆円もある機構の懇親会としては、なにもここまでつましくしないでもという率直な印象を受けた。

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 しかし、メディアももちろん酒を飲んだりおいしい料理を食べるのが目的ではない。理事長ほか理事などと歓談するのが目的だ。記者もビールと焼酎を少し飲んだが、つまみは小籠包のようなものを1個食べた(これは美味しかった)。

 もっとも聞きたかったのは、やはりリスク管理債権と、全額繰上償還請求件数、任意売却、選別融資に関することだった。

 リスク管理債権は、その額がバブル崩壊によって巨額化し、公庫の廃止にもつながっただけに気になる問題だ。平成22年度末のリスク管理債権比率は既往債権が10.66%で、その他の債権も含めた全体が8.48%だ。優良≠ネ債権が民間への借り換えなどで年々少なくなっており、分母が小さくなる分だけ不良″ツ権比率が高まるのは当然だが、やはり10%を越えてくるとなると注意は必要だろう。ただ、中小企業向けなどの政府系機関のリスク管理債権比率は10%をはるかに超えているはずだ。

 リスク管理債権と密接に関連する全額繰上償還請求件数は、ここのところ減少気味だが、それでも残高ベースで22年度末では41,459件に上る。せっかく購入したマンションを手放さなければならない人のことを考えると胸が痛む。さらに、この全額繰上償還請求と関連することだが、任意売却はどのような状況になっているのかも気になる。これについては、機構に改めて取材し、関係の仲介業者にも取材してレポートしたい。

 選別融資については、宍戸理事長は「当機構は選別融資は絶対やっていない」と強調したが、民間では年収はもちろん勤続年数、企業規模、職業、過去の事故の有無などで融資を断られるケースが多いというのは常識だ。うっかりミスなどで住宅ローンやその他の返済がストップしても審査が通らないという。これはあまりにも厳しすぎないか。

 そもそも、都内で年収が400〜500万円台の一般的なサラリーマンがマンションを購入するのは、土地代がただでもきわめて難しいのが現状だ。坪単価はどんな山奥だろうと最低でも100万円はする。20坪で2,000万円だ。「年収の5倍」が無理なく取得できる価格とすれば、こうした層は山奥のマンションがやっとということになる。中・低所得層がマイホームの夢を持てるよう融資条件の緩和や支援策もあっていい。

 融資条件を緩和して破たんが増えるのも困ったものだが、賃貸も含め文化的な生活ができるレベルの住宅に住めるようにすべきだ。そのために機構もがんばってほしい。

(牧田 司記者 2011年11月16日)