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“震災を教訓に” 住生活月間シンポ 埼玉県住まいづくり協議会


「住生活月間シンポジウム」

 埼玉県住まいづくり協議会は10月21日、住生活月間シンポジウム「東日本大震災を教訓としてこれからの住まいを考える」を埼玉県浦和市の浦和コルソ7階コルソホールで開催した。県民や住宅産業関係者を中心に233名が参加した。

 同会場では「埼玉住み心地の良いまち大賞」入賞作品や、「第3回埼玉県環境住宅建築賞」応募作品の展示も行われた。

 同協議会会長の宮沢俊哉氏(アキュラホーム代表取締役社長)は、冒頭の挨拶で「東日本大震災を機に、改めて住まいと生活、そしてエネルギーについて深く考えられるようになった。私たちはこの震災から学び、多くの方々とともにこれからの住まいを考え、その思いを共有していくことができれば」と述べた。

 シンポジウムの第一部では、日本建築防災協会専務理事・杉山義孝氏が「東日本大震災後の住まいづくり 〜耐震改修のすすめ〜」と題して講義を行った。

 東日本大震災では津波の被害が表立っているが 、地 震による建築物の倒壊も多く、今後も大地震が起きれば多くの建物が倒壊すると考えられる。阪神・淡路大震災では死者のうち約88%が15分以内に圧死していることから、地震に耐えられない建物内から逃げ出すことは不可能だといわれている。しかし費用や手間がかかるためか、なかなか耐震工事に踏み切れない家庭が多い。そこで同氏はリフォームとセットで行うことを提案。住宅全体のバランスを考慮した計画を立てることで、安く、無駄のない工事ができるという。

 同氏は講義の最後に「業者はきちんとした契約を交わしていただきたい。今リフォームによるトラブルが多い。見積書や計画書、耐震診断書などを契約書と一緒に取り交わし、打ち合わせのシートをお互いに交換する。予想外のトラブルについても、しっかり説明して進めてほしい」と訴えた。

 第二部では、光と風の研究所常務取締役・鈴木孝雄氏が、住まいに活用できる様々な創エネ・省エネ・蓄エネの取り組みの一部を紹介した。創エネとしては、太陽光はエネルギー効率がよく、自然採光、温風利用、空調、給湯、発電、など幅広く利用できる。また、地中熱も安定しており、まだまだ使っていかないともったいないという。

 住まいにおける省エネの一番のポイントは「一に断熱、二に断熱、三に断熱」と述べ、断熱材の素材をはじめ、遮断財、断熱サッシ、遮熱フィルム、遮熱塗料などを簡単に解説した。今年多く採用された“緑のカーテン”は非常に効果があるそうだ。

 蓄電池は、住宅にうまく組み合わせて再生可能エネルギーを使う動きが、これからますます出てくるという。

 同氏はこれからの取り組みについて、「住宅の再生エネルギーのランニングコストの評価基準を、10年20年30年使うことまで含めて出していくことが大切」「新聞でスーパーが連携して太陽エネルギーの利用に取り組んでいる記事が載っていた。住民が安心してエネルギーを利用できるよう施工基準を定めるなど、企業同士の連携が重要」と述べた。


挨拶する宮沢氏

◇    ◆    ◇

 最近、突然家のチャイムを鳴らして「この家は今すぐに耐震工事をしなければ地震のときに壊れます」と見知らぬ業者が来る。耐震工事を済ませたばかりでもお構いなしだ。お年寄りの住まいでは、「診るだけ」と上がりこんで、勝手に工事を始めて代金を請求されたという話も聞いた。近所の専門家によると「余計な工事をすることで建物が逆に危険になる場合もある」そうだ。信用できる業者がわからずリフォームや耐震工事に踏み切れないところもあるのだとしたら残念だと思う。消費者側も杉山氏の言うような見積もりや診断書をしっかり提出し、説明義務を怠らない会社に頼むようにする必要があると思う。

(横山 裕美 記者 2011年10月31日)