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 「人に立脚した不動産会社」 旭化成不動産レジデンス


渡辺衛男・旭化成不動産レジデンス社長

 旭化成ホームズは9月27日、同社の開発営業本部の行う開発事業を、平成23年10月1日付けで子会社の賃貸事業及び不動産流通事業を行う旭化成不動産(渡辺衛男社長)へ統合し、同時に旭化成不動産は30億円の増資を実施するとともに、商号を旭化成不動産レジデンスへと改称すると発表した。

 同社は、今年度新たに策定した中期経営計画で同社グループの事業を新築請負事業・不動産関連事業・リフォーム事業の3つの事業領域に区分し、不動産関連事業については開発事業と賃貸事業・仲介事業等不動産流通事業の合計で売上高 1,000億円を目指すことを打ち出しており、この計画に沿って検討を重ねてきたもの。

 これまで旭化成ホームズと旭化成不動産に分散していた不動産関連情報の一元化を図ることで、旭化成不動産レジデンスを都市に特化したオンリーワンの会社を目指す。今回の事業再編に伴い、旭化成不動産の渡辺社長が旭化成不動産レジデンス代表取締役社長に就任し、旭化成ホームズ開発営業本部長・進政裕氏は旭化成不動産レジデンスの副社長兼開発営業本部長に就任する。また、マンションの管理会社、旭化成不動産コミュニティを設立する。

 旭化成ホームズの不動産関連事業の売上高は237億円(平成23年3月期)で、旭化成不動産の売上高は404億円(同)。

 旭化成不動産レジデンスは本社:東京都新宿区西新宿 2-3-1 、資本金:32億円(平成23年10月1日付で30億円の増資)。平成27年度売上高1,000億円を計画。

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 事業再編について、旭化成ホームズ・平居正仁社長は「不動産関連事業を3本柱の一つにするのが目的。しかし、土地や立地に依拠した他のデベロッパーとは一線を画す。当社はこれまでのノウハウを生かしひと≠ノ立脚した不動産会社を目指す」と語った。また、渡辺社長も「旭化成不動産は大会社というイメージがあり、荷が重かった。身の丈にあった会社にした。増資したのは再開発コンペなどで資本金は重要だからだ。レジデンスは流行り言葉のようだ。平成15年度まで全体で1,000億円、マンションは400億円ぐらいに伸ばしたい」と話した。

 この方向性は間違っていないだろう。これまでずっとマンション業界を取材してきたが、この業界はどちらかといえば狩猟型≠フ営業を行なってきた。どのような野獣(リスク)が待ち受けようともみんなで渡れば怖くない≠ニ土地を買いあさり、高値で売って、売り逃げる手法だ。しかし、この手法はバブル崩壊で破たんした。多くのデベロッパーが退場を余儀なくされた。生き残ったのは一握りの大手デベロッパーだけだ。

 旭化成ホームズは、他のデベロッパーとは異なるマンション事業を展開してきた。従来型の手法ではなく、建て替えとか等価交換、法定再開発に特化したいわば農耕型≠セ。これまで同社の「同潤会江戸川」「国領」「日暮里」「北千住」「中目黒」「茗荷谷」「向ケ丘遊園」「小石川」などの代表物件を取材してきたが、どれもがウィン ウィン≠フ関係を築けた物件だと思う。「江戸川」は平成の時代を代表する記念碑的マンションだ。

 関係者が強調した「私たちは土地を買わないデベロッパーです」という言葉にうそはないと思うし、だからこそ競争が激しいマンション業界でしっかりした地歩を築いてこれたのだと思う。

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 争っても勝てないとは思うが、間違っても高値入札競争に巻き込まれないことだ。記者は入札には勝ったが、事業に失敗したプロジェクトをたくさん見てきた。開発事業は極めてリスキーな事業でもある。

 Slow and Steady Wins the Race=|しっかり種をまき水を撒いて確実に果実を収穫するオンリーワンの事業を継続すれば、マンション事業で400億円という数値目標は決して高くない。着実に実績を積み上げ、歴史に残る物件を供給し続けてほしい。一つだけ言わせてもらえば、「旭化成不動産レジデンス」の社名は長い。渡辺氏が言うように「レジデンシャル」「レジデンス」は流行り言葉かもしれないが、記者にとって社名や物件名が長いのは困るのだ。


左から進氏、渡辺氏、挨拶する平居・旭化成ホームズ社長

(牧田 司 記者 2011年9月27日)