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セカンドライフは田舎暮らしより都会 三井不販のアンケート

 セカンドライフは田舎暮らしより都会暮らし−−「三井のリハウス」の三井不動産販売が9月19日(月)の「敬老の日」を前にこんなアンケート調査結果をまとめ発表した。アンケートは、首都圏(1都3県)に自宅を持ち、住みかえを検討している50〜80歳の既婚男女516名を対象に行ったもの。「理想の住み替え先のイメージに近いのはどちら? 」の問いに対して「都会」と答えた人は75.6%で、「田舎」と答えた人は24.4%だった。リタイア後はフットワーク軽く生活をエンジョイするアクティブシニアを目指す人が多いことがうかがえるという。

 また、現在の住まいのエリアと、検討中の住み替えエリアを聞いたところ、57.6%の人が現在と同じエリアに住み替えたいと答えた。

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 アンケート結果は当然だろう。田舎暮らしがいいと騒いでいるのは、田舎の不動産業者と一部のマスコミだけだ。記者は田舎生まれの田舎育ちだが、もう田舎に帰ろうとは全然思わない。車に乗れない記者は田舎では暮らせないことが分かってきたし、よしんば車に乗れたとしても田舎暮らしは都会育ちの人が思うほど楽ではない。以前は里山があり、散策も出来たし、ヤマモモもアケビも食べられた。しかし、今は里山はサル、イノシシ、シカなどに占領されてしまった。里山に分け入ってイノシシに襲われて死んだら、「あの馬鹿が」と笑われるのが落ちだ。

 それより怖いのは山ヒルだ。尺取虫のようにどこからともなく忍び寄り、やわらかい皮膚に食らいつく。血を吸われても気がつかないから始末が悪い。無理に引っぱがすと、皮膚ごとはがれ、なかなか血が止まらない。山ヒルは山道が獣道に変わって出現するようになった。全国どこでもそうだという。

 日本の山ヒルはまだたいしたことがないが、古山高麗雄が戦記小説に書いているように、中国とビルマの国境あたりのジャングルのヒルは強暴だ。人間を察知すると、葉裏に隠れている無数のヒルが「ザザザザッ」と葉を揺るがし、頭の上から襲いかかる。そして、知らないうちに陰部などに食らいつき真っ赤に膨れ上がる。無理に引き剥がすと出血多量で卒倒するのだという。仕方がないから、食らいつかれたまま下半身をさらし、石などでつぶすしかないのだという。

 田舎に帰省するとこの小説が頭に浮かび、田んぼのあぜ道すら怖くなる。

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 田舎暮らしがいかにつらいかは、私の好きな作家の一人、丸山健二が「田舎暮らしに殺されない法」(朝日文庫)で詳しく書いているので、ぜひ読んでほしい。芥川賞を受賞した丸山が出身地の長野に引っ越して40年。酒も煙草も絶ち(もともと丸山は酒も煙草もやらないようだが)、俗世界との関係も一切断ち切った氏ならではの警告がこれでもかと書かれている。抱腹絶倒のエッセーだ。

 もうずいぶん昔。今は亡き父に「歳取ったら田舎に帰る」としゃべったことがあるが、「フン、お前なんか田舎で暮らせるわけがない」と一蹴された。「故郷は遠くにありて想う」からいいのだ。「うさぎ おいしかのやま」の故郷の歌を「私ね、この歌を歌いながら、『うさぎってそんなにおいしいのかしら』と本当に思ってた」と記者に語ったノー天気な田舎育ちもいるが、今は故郷なんて学校でも歌わなくなったのだろう。

(牧田 司 記者 2011年9月8日)