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 悪質なマンション勧誘を規制−国交省が省令改正案

 悪質な投資用マンションの勧誘に規制−国土交通省は7月22日、「社会資本整備審議会産業分科会(第3回)及び社会資本整備審議会産業分科会不動産部会(第26回)」を開き、電話などによる悪質なマンションの勧誘に対して宅地建物取引業法で規制を強化することなどを話しあった。

 部会では、委員長に中田裕康・東京大学大学院法学政治学科研究科教授を選出し、「悪質な勧誘行為について」国交省から報告があり、同省としては8月にも省令を公布し、10月上旬をめどに省令改正を実施したい意向を示した。以下、部会での各委員の声を拾った。(発言順)

 升田純・中央大学法科大学院教授 このような勧誘によって投資用マンションはどれぐらい成約するものか。規制を強化して、消費者に情報を提供しても届かない可能性もある。消費者にも「買いたい気持ち」があるからこのような勧誘も行われているのではないか(これに対して国交省は、成約率については把握していないが、100件に1件ぐらいはあるかもしれないなどと答えた=100件に1件成約できたら、これほど有効な勧誘手段はないはずだ。記者は成約率ははるかに低いと見ている)

 山野目章夫・早稲田大学大学院法務研究科教授 十分な知識のない方々が被害をこうむる。どこまで消費者保護を図るのかどこまでを許すのかは永遠のテーマだ

 川口有一郎・早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授 勧誘する側を講師に招いて「どうやったら売れるか」を聞いたことがある。最近はどうなっているのか分からないが、ターゲットになるのは景気に左右されない先生とか公務員だろう。電話での勧誘には4段階があって、電話でアポを取らないと仕事にならないので必死でアポを取るそうだ。面談まで持って行って、業界用語で「橋を渡らせる(契約)お手伝い」をするそうだ。投資用マンションは建て替えが出来ないとか、流通がしないなどとか投資リスクを説明しないのが問題

 土田あつ子・日本消費生活アドバイザリー・コンサルタント協会消費生活研究所主任研究員 規制に賛成。罰則を発令してほしい

 八木橋孝男・三菱地所レジデンス社長 勧誘の時間はお客さまサイドから要求する場合もある。省令改正も結構だが、消費者を教育・啓蒙することが必要。「浜の真砂は尽きるとも世に盗人の種は尽きまじ」という言葉もある

 熊谷則一・弁護士 規制強化に賛成。本来は現行法(宅建業法47条)でもカバーできるはずだ 

 浅見泰司・東京大学空間情報科学研究センター副センター長 再勧誘を禁ずるとしても、何をもって再勧誘とするのか難しい問題もある

 三好修・日本賃貸住宅管理協会会長 ワンルームマンションは特定の業者がやっていること。私の福岡では、新築は売れないが、中古マンションは500万円ぐらいでよく売れている現実もある

 井出多加子・成蹊大学経済学部教授 ファーストコンタクトをどうやってとるのか。もっと詳しいデータがほしい(個人情報は筒抜け。勧誘は、食事とトイレ以外は電話の受話器をガムテープで耳に縛り付けて行うということも聞いたことがある=記者注)

◇    ◆    ◇

 国交省が示した宅建業法47条の2第3項の国土交通省令改正案は次の通り。

 イ 現行どおり(省略)

 ロ 現行どおり(省略)

 ハ 当該勧誘に先立って、宅地建物取引業者等の氏名又は名称及び当該契約の締結について勧誘をする目的である旨を告げることなく勧誘すること。

 ニ その者が当該契約をしない旨の意志(当該勧誘を引き続き受けることを希望しない旨の意志を含む)を表示したにもかかわらず、勧誘を継続すること。

 ホ 迷惑を覚えさせるような時間に電話又は訪問をすること。

 ヘ 深夜又は長時間の勧誘その他の私生活又は業務の平穏を害するような方法によりその者を困惑させること。

◇    ◆    ◇

 電話によるマンションの勧誘問題は古くて新しい問題だ。記者自身も何度か電話でのマンション勧誘を受けたことがある。あまりにも営業マンのレベルが低く、でたらめなことを話されたので、相手の会社名と本人の名前をメモし、逆に取材しようと思ったこともある。

 このような自らの体験からしても、国民生活センターが発表したような悪質な勧誘は絶対やってはならないと思うし、ある程度の規制強化はやむをえないとも考える。

 しかし、規制強化は電話による勧誘そのものに対する抑制プレッシャーにもなりかねないと懸念する。マンションにとどまらず、どのような商品であれ電話による勧誘は有効な販促手段だ。一度断られても2度3度ぐらいまでは勧誘することは一般的に許されるのではないかとも考える。迷惑を覚えさせる時間もまた人それぞれだし、長時間とはいったいどれぐらいの時間なのかもあいまいだ。

 基本的には「被害を受けた」と感じる側の声を優先すべきだとは思うが、規制強化は匿名によって一般的に許される商行為が告発され、犯罪者扱いされる危険性はないのか。「公」や「個」より「我」が優先される、とんでもない世の中になってきたような気がする。

(牧田 司 記者 2011年7月22日)