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 大規模マンションに一石三鳥≠フ「乗合タクシー」はどうか

 以前からずっと考えていたのだが、大都市圏のサラリーマンの足として「乗合タクシー」を積極的に導入してはどうか。路線バスよりは料金は高くなるが、一般的なタクシーよりは割安で自宅から勤務先へ、また勤務先から自宅へドア・ツー・ドアでつくことが出来るうえ、交通渋滞を減らし、CO2削減にも効果がある。一石二鳥どころか一石三鳥≠フ妙案だと思うがどうだろう。

 「乗合タクシー」とは、 Wikipedia によれば「10人以下の人数を運ぶ営業用自動車を利用した乗合自動車。道路運送法の『特定旅客自動車運送事業』に該当する場合があり、営業する場合は国土交通省の許可が必要である。主に深夜の別の交通機関がない地域や、過疎地など路線バスの機能が充分に発揮できない場所などで運行されている」とのことだ。

 その種類(コース)はいろいろあり、国交省の資料によれば、路線バスの営業時間外に走る深夜・早朝の交通手段になる「団地型」、過疎対策として運行されている「過疎型」、深夜交通手段の「都市型」、空港と市街地を結ぶ「空港型」、観光地で利用される「観光型」、福祉施設への往復に利用される「福祉型」などがある。

 平成22年度末で、これらの乗合タクシーは全国で2,377コースあり、配置車両は9,250車両、事業者数は919事業所ある。このうち圧倒的に多いコースは「過疎型」で、全コースの65.5%に当たる1,557コースある。記者が推奨する「団地型」はわずか26コースだけで、「都市型」の79コースを合わせても全体の4.4%しかない。

 東京都で「団地型」を運行しているのは昭栄自動車の亀有駅から大谷田一丁目団地間(約2キロ)の1コースのみだ。早朝の6時30分から9時まで運行しており、料金は240円。同社によると1日130〜180人が利用しているという。

 また、日立自動車交通は綾瀬駅を基点に小菅駅やスーパー、医院など約3.56キロを循環する「都市型」を運行している。料金は大人200円、子ども100円で、毎日百数十人が利用しているという。このほか、多摩地区で病院と大学などを結ぶ乗合タクシーが運行されている。

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 乗合タクシーは、記者が住む多摩市でも平成16年11月から17年2月にかけて多摩市と都市再生機構が主導して運行実験が行われている。多摩センター駅と各団地間を午前8時から午後6時まで30分おきに運行され、予約制で料金は300円だった。

 利用者は378人で、利用可能席の約5%しか利用されなかったと報告されている。記者も試しに利用しようかと思ったが、運行時間からして通勤に利用するのは不可能だったので利用しなかった。利用者からは、予約が面倒、運行時間が適切でないなどの不満も多かったという。記者は、官主導に問題があったと見ており、実施に当たっては、町内会や団地管理組合などの意見をくみ上げれば間違いなく成功したと思っている。

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 乗合タクシーが伸びないのは、事業者にとって許認可のハードルが高いのが主な理由のようだ。しかし、記者は最寄り駅から距離がある大都市圏の大規模マンションなどでは、乗合タクシーは需要は必ずあると見ている。ネットや携帯を利用すれば簡単に運行状況が把握できるはずだし、出勤・帰宅の送迎、保育園の送迎、買いものの送迎など、マンションの管理会社などが窓口になってコントロールすれば利用ロスも少なくできるはずだ。こうした公共交通網を充実させれば、 CO2 削減にもつながるはずだ。

(牧田 司 記者 2011年7月21日)