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中古マンション情報に分譲会社や施工会社がないのはなぜ

 

 年末に弊社の他部署の不動産仲介チラシ制作業務を手伝った。チラシに盛り込む物件名、価格、交通便、面積、用途地域、設備、道路状況などの概要を入力する作業だ。

 作業をしながらあることに気がついた。一つひとつの物件の広告枠は数センチ四方ぐらいだから、当然、概要全てを盛り込むのは不可能で、取捨選択をしなければならないのは当然だし、もちろん公取協の規制もある。そのような事情を考慮しても、ユーザーが知りたいと思われる概要が省かれていることだった。

 中古マンションを例に取ると、ユーザーは価格や間取り、交通便、面積、築年数、構造、管理・修繕積立金などはもっとも重要な情報で、当然のことながら仲介各社はこれらを全て盛り込んでいる。

 ところが、仲介会社によってまちまちなのが分譲当初の売主や施工会社、設計・監理会社の情報だ。分譲会社や施工会社を掲載するチラシは少なく、設計・監理会社までチラシに盛り込む会社は皆無といってよい。

 記者は長く業界記者をやっているから物件名で売主がどこかはおおよそ分かるし、質も見当がつくが、一般の方はチラシ情報ではほとんど分からないだろう。しかし、売主や施工会社がどこかは物件選択の重要なポイントであるはずだ。

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 チラシに分譲会社や施工会社が載っていないのは、限られたスペースでは掲載できないのかと思い、数社のネットで確認した。ネットではきちんと掲載されているところもあるが、それは少数派だった。三井不動産販売の「三井のリハウス」は売主が「三井不動産」や「三井不動産レジデンシャル」で、三菱地所リアルエステートサービスは「パークハウス」で、住友不動産販売は「住友不動産」で、野村不動産アーバンネットは「プラウド」でもそれぞれ検索できるのは当然というべきか、さすがというべきか。

 「施工がスーパーゼネコン」「設計・監理会社で選ぶ」などの検索項目はどこも採用していないようだ。

 一方、財団法人マンション管理センターが実施しているマンション履歴システム「マンションみらいネット」に登録されている既存マンションは400件ぐらいしかなく、分譲デベロッパーが登録する新築マンションは大和ハウス工業など3社しかない。

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 中古マンションの売主や施工会社、マンション管理の履歴などの情報が軽んじられているわけではないだろうが、これが現状なのだろう。限られたスペースの中古マンション情報に何を優先して盛り込むかは各社の自由だし、「マンションみらいネット」に登録するのは管理組合の判断に委ねられている。

 しかし、新規分譲で売主や施工会社の記載がなければ、まず売れない。ユーザーにしてみれば、どこが分譲するのか、どこが施工するのかが分からなければ怖くて買えない。中古は建物があるのだからいいようなものの、それでも分譲会社や施工会社が分からないのは不安だ。

 レベルの高いマンションや管理が行き届いたマンションがきちんと評価されるためにも、売主や、設計、施工会社、管理履歴情報が盛り込まれることに期待したい。

 

(牧田 司 記者 2011年1月5日)